新たなはじまり
「ほんと、ヒカリはそそっかしいな」
呆れながらもショウは、声は嬉しそうに弾んでいる。
振り返るようにしてヒカリを見つめるショウに、ヒカリは──。
「あなた、誰……? あれ、会ったことあるよね……? 」
ううん、とうなるヒカリは頭を抱えていた。
目を閉じて、体を縮こませるようにショウの背で蹲る。
必死に思い出そうとしているようだったが、思い出せないとヒカリは焦った声を上げた。
「ヒカリ……」
ショウは少し悲しそうに眉をひそめ、そっとヒカリを背中から下ろした。
ヒカリは震える足で立つと、ショウを見上げた。
俺の名前は──、と悲しそうな声色でショウは名を名乗った。
「覚えてないのは、俺も一緒なんだ。本当は、君のことちゃんと覚えてない。だけど」
ぎゅっと胸を抑える手は、真っ白になるほど力が込められて痛みを耐えているかのようだと、トウタは思う。
それでもショウはヒカリから目を逸らさずに言葉をつむぎ続ける。
「大事だって、ヒカリを離しちゃいけないって心が叫ぶんだ。無くしたからこそ、俺は心に残っているものは大切にしたい」
きっぱりと告げられた言葉。
それは、ショウの決意そのものにトウタは思えた。
トウタの胸に真っ直ぐ届くショウの言葉は、ひヒカリにも届くだろうと、トウタは思った。
俯いて肩を震わせていたその顔がゆっくりとショウを見た。
「私も、ショウのこと大事だって思うよ。その理由は全然思い出せない……けど、あなたのこと知りたいと思うよ」
だめかな、とヒカリはショウに微笑みかけた。
「ダメなんてねぇよ」
ぐぐぐ、とヒカリに近寄られたことに照れたのか、ショウは顔が真っ赤になりながら顔を背けた。
ショウも可愛いところがあるんだな、とトウタは微笑ましくなる。
それはヒカリも思ったのか、トウタと目が合うと軽く肩を竦めて見せた。
「あなたも、私を助けに来てくれたんだよね。えーっと?」
「あっ、僕はトウタ。色々あってショウと一緒に君を助けに来たんだ」
今更だがトウタはヒカリにまだ名乗っていないことを思い出して慌てて名乗る。
「初め、ましてだよね。トウタとは、ショウと違って初めてって感じがする……」
「その感覚は間違ってないよ」
やっぱり、とヒカリは呟く。
「なんだろう、不思議なんだけど記憶がなくても感覚で分かるのかな」
「そうかもしれない」
何があっても心の中にはきっと、残り続けるとトウタは思いたかった。
誰が、何をしようとも。どれだけ改変を加えようとも。
想いの形は変われども、想う気持ちは変わらないのかもしれないとトウタは知った。
(だったら、この気持ちは……)
浮かんでくるのはサクラの顔だった。
初めて会った気はしない。むしろ、ずっと一緒にいたような気がする。
きっと、ヒカリも同じ体験をしたのだろう。
忘れても、忘れられない大事な宝物として。
(僕の宝物、失くしたもの)
いつか、取り返すそうトウタは胸に誓った。




