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知っていること、知らないこと

ショウが一人で背負えるほどヒカリの体は思った以上に軽く、羽のようだ。ふらつくことも無い。

あまりの頼りなさに、トウタは眉をひそめた。きっとショウも気づいていただろう。でも何も言わないショウは、唇を噛み締めるだけだった。


「ここは過去、店の集合体だったのかもしれないな」


辺りを警戒しながら後を付いてくるショウに、トウタはえ? と声を上げた。


「ここはデパートでしょ? 店の集合体って言ったら分かり易いけど……」


通り過ぎていく各フロアは、婦人、紳士、子供服を売るフロアや食料品を売っていたであろうショーケースが埃を被った状態で置かれていた。

辺りを警戒していたショウはふと足を止め、訝しげにトウタを見つめてくる。


「待て、でぱーと? とはなんだ」


「え、デパートだよ? 少し高いものが売ってるなにか贈り物とか買う場所」


僅かでも思い沈黙がトウタとショウに降りる。

トウタは気持ち悪いずれのようなものを感じた。それは見逃してしまいそうな違和感を呼び起こさせる。


気づかなければ何ともないような、棘のようなもので一度気づいてしまったらそれは拭い去れないものになる。


(デパートを知らない……?)


確かにデパートが潰れて久しいが、同い年に見えているショウが知らないはずはない。

トウタ自身デパートを訪れた記憶がある。買い物だってしたし、人で賑わっていた光景を思い出せるのだ。


なのに、ショウは知らないという。

からかっているのか、とトウタは思った。ショウが嘘を吐いている、のだろうか。


「ほら、欲しいものを選んでその対価としてお金を払うんだよ、ね?」


真顔で聞いているショウに、トウタは自分の記憶が正しくないのではと自信を無くしながら聞いた。

お金にも紙幣と硬貨、それもいくつかの種類があることを覚えている。


しかし、ショウは何を言っているか分からないようだった。

ピンと来ていないのかオカネ? オカネってなんだと呟いている。


「対価は物々交換だろう?」


その言葉を聞いた時、トウタはショウとの大きなズレがある事を知った。

その大きなズレはトウタとショウの生きてきた環境の違いをまざまざと突きつけられる。


「他に支払える方法なんてない。オカネなんて聞いたことがない」


「聞いたことがない…………?」


(なにかが決定的に違う)


それは、何なのだろう?


トウタとショウの常識には決定的な違いがある。お金の存在を知らず、物々交換が主流。

ここではお金の存在がない。むしろ、お金というものは滅んでいる?


そしてトウタはひとつの考えに至る。


トウタはお金が必要だった世界に生まれ、お金が必要のない世界でショウは生まれた…?

生きている時間が違うようなそんな感覚だった。


トウタとショウは別の時間軸を生きている可能性を思いつかせるほどに。




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