受け入れる運命
痛みにトウタは蹲る。体を丸め、ままならない息を整えようと肩で呼吸を吸う。
しかし、思うように行かずぜぇぜぇと頼りない声が漏れ出るだけだった。
とめどなく流れる出血を止める手だてもなく、トウタは涙の浮かぶ目でサクラを見つめた。
痛みに悶えながら思うのは、サクラとどこかで会ったような既視感だった。
だけど、その正体が思い出せない。
(消された記憶……かな……)
意識が朦朧と揺らぐトウタの目の前に、血の付いた刀を握りしめたサクラがゆっくりと近づく。
サクラの目にも涙が浮かんでいた。何か後悔するような、なにか怯えているような見ているトウタも悲しくなるような、そんな表情だった。
それでもサクラの刀を握る手は、緩まない。
「さよなら、トウタ……」
一言だけサクラは呟くと、トウタに向けて刀を振り上げた。
その煌めく一閃をトウタは目を閉じずに待った。
一瞬でもサクラから目を離したくなかった。
覚えていなくても、トウタにとって大事な人だと分かっていたからだ。
もし、ここで終わるとしても彼女から目を離したくなかったのだ。
刃がトウタに迫った瞬間、トウタの背後から別の煌めきが走った。
トウタの右耳に空気が焦げ付くような音と、小さな稲光。その光は迷わずにサクラの肩を掠める。
「うっ……!!!」
サクラの体に稲妻がまとわりつく。サクラの体は強い痙攣を起こし、ふらつきながら後退る。
だが、上手くバランスを取れずにもつれると、そのまま地面に倒れた。
「トウタ! しっかりしろ!」
「しょ、ショウ……?」
肩口を抑えていたトウタが振り返る。そこには荒い息をしたショウが短刀を握りしめて立っていた。
「馬鹿! 逃げずに受け入れようとするな!」
ショウは慌てたようにズボンのポケットからタオルを取り出した。タオルを押し付け止血し始めると、トウタの体を支えようとする。
でも、トウタの四肢にもはや力は入らなかった。
「ちきしょう、困ったな……」
どうやらここから逃げようとしていたらしいショウは、夜目が効くのか辺りを見回している。
「ちっ、あいつらが邪魔だな……」
前を見据えたショウがそう呟くと、暗がりに二人の人影が見える。
そう、今まで傍観していたケイとチカがそこに立っていたのだ。




