君は誰?
今まで誰にぶつけたらいいのか分からなかった、この感情をそのままにトウタはチカに向かって刀を振り上げた。
キン、という金属が弾ける音と火花が目の前で散る。刀から伝わる振動と重さが、相手の圧倒的な強さを物語っているようだった。
彼女もまた、青白く輝く刀を持つ者だった。
ぐ、と目を閉じたトウタの喉が鳴る。あまりの強さに力を緩めそうになるが、それは許されない。
一瞬でも気を抜いたら、トウタが斬られるのは火を見るよりも明らかだったからだ。
トウタは力を緩めないまま目を開く。
「……きみ、は……?」
トウタの渾身の一撃を受け止められた相手をしっかりと見据えた。トウタと同じくらいの少女だった。
肩くらいまで伸ばした色の抜けた茶髪。
少し幼さの残るその瞳は、トウタを見て揺れていた。
「……っあ……」
トウタも少女の顔を見て体が震えた。
記憶の中に、その少女はいない。会ったことも、ないはずだろう。
けれど、どこか懐かしい、切ない、会いたかった、会いたくなかった……そんな感情が渦巻く。
それでも、会いたかった思いが強くなる。
そっと刀から右手を離し、手を伸ばす。
血の気を失った少女の頬に触れようと思ったのだ。
「触るな……!」
「うぐっ……!!」
トウタの一瞬の隙を見逃さず、少女はトウタの腹に思いっきり蹴りを叩き込む。一撃で内臓が潰される感覚に襲われる。
その力は少女とは思えないほど強く、トウタの体はショウたちが眠る台座を制御しているであろう機械まで吹き飛ばされた。
トウタがぶつかった衝撃で機械はけたたましい警報音をたてる。
からん、と音を立てて刀が手から離れた。
耳をつんざくような音と共に、一切の電源が落ち、一瞬にして視界が奪われる。
「あー、もうサクラ何してるの……!」
さすがにこの状態にチカも焦った声を上げた。
「申し訳、ありません」
サクラ、と呼ばれた少女が頭を下げた。
暗闇の中動く気配だけを感じた。
トウタは手探りで刀を探すと、指先に柄が触れた。
「あった……!」
「そこに居るのね」
トウタが見つけた刀を握ると青白い光が再び放たれる。光は暗闇の中で目立ち、すぐに居場所がサクラに知られてしまう。
格好の標的になったトウタは、攻撃を避けられず青い太刀筋に斬られた。右の肩口をざっくりと袈裟懸けに斬られる。
息もできないほどの激痛にトウタは顔を顰めた。
容赦なく傷口からは血が流れ、あっという間に体を濡らす。
トウタの鼓動と呼応するように、命そのものの赤い血が流れていく




