心音が響く
ケイとチカは顔を見合せて頷き合った。
そして、チカが一歩前に出て、トウタたちに向かって両手をかざす。
「何するつもり? それになんで、僕の名前……!」
トウタは名乗ってもいないのに名を呼ばれたことに驚く。
何かしようとしているチカに警戒して、壁に持たれるショウの元に走る。
「大丈夫、少し眠ってもらうだけだよ。起きた時、全部終わってるから心配しないでね」
おやすみ、とチカが笑って言うと全身の力が抜けた激しい耳鳴りが頭の中に響く。世界が遠くなっていく。
それは世界がトウタを置き去りにして言っているようだった。
その目は楽しげに笑っていて、トウタの背中に冷や汗が流れる。
その顔が、瞼が閉じる最後までトウタの瞳に映っていた。
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「ん……うっ……」
不意に意識が浮上して、トウタは目を開いた。すぐに聞こえてきたのは、空気を循環する音。
そして、ぴっ、ぴっ、という規則的に刻まれる軽く高い音。
「なっ!? ショウ、どこっ!?」
慌ててトウタは床から飛び起きる。
暗がりの部屋の中、辺りを見回すがショウの姿はない。暗さに慣れていない目で必死に置かれている状況を確認しようとした。
薄暗い部屋は音が反響していた。どうやらとても広い空間が広がっているようだ。
窓はなく陽の光の自然光は望めない。ましてや、電力がないから電気での明かりは見込めないはず、だった。
なのに、点在する裸電球には明かりが灯る。
「なに、これ……」
立ち上がり一歩踏み出したその足が、何かを踏む。
「コード……? なんでこんなもの」
見ると床一面に、無数のコードが走っている。さながら蛇が這いずっているようだ。不気味な光景に、トウタは震えを覚える。
コードに触れると僅かに温かい。今もまだ稼働していることの証にほかならなかった。
(電力は無いはずなのに、使ってる……? どうやって……?)
その間もぴ、ぴ、という音は聞こえていた。
誘われるままトウタは音のする方へ歩いていく。
すると、その空間の真ん中に二つ台座のようなものが設置されていた。台座に向かってコードは集まっている。
壁には何やら大きな機械。
それぞれふたつのモニターと山なりに動く光。トウタの追ってきた音はここから聞こえていた、心音を示す音。
トウタはその歩みを早める。
嫌な予感がトウタの脳裏をよぎった。
ここにいて欲しいような、いて欲しくないような不思議な気持ちに苛まれながら。
「ショウ!!! しっかりして!」
しかし、予感はあたってしまった。台座のひとつに寝かされたショウの姿があった。




