制圧
「何を勘違いしているのか分からないが」
「そんなに人は簡単に死なないよ?」
トウタに刃を向けられた少年と少女はさも不思議そうに首を傾げた。
まるで死ぬことなんてなんとも思っていないといった様子だった。
「それに、ここでは人は死なないし。終わりなんて来ないようにしてるのに」
「チカ……」
「あ、ケイ、ごめんなさい……」
少女─チカがそう呟くと、少年─ケイが窘める。そこれ以上何かをいうな、という警告だった。
チカは肩を竦め押し黙る。少し頬を膨らませる姿は無邪気そのものだった。
イタズラを失敗した子供のようなチカを一瞥したケイは、改めてトウタたちに向き直る。
「これ以上はお前たちが知る権利はない」
「は? ……んだよ、はっきり言えよ! いいだしたのはそっちだろ!? それに死なないって、終わりは来ないようにしてるってどういうことだ……!? ヒカリはどこだ!」
ショウが声を荒らげる。
それは無理もないことだった。
今まさに黒服がいて、ヒカリの消息が分かりそうで。目の前で起こっていること全てを知り得る人物が手の届くところにいる。
「やはり、ヒカリを探すか。無理もないことだけどな」
「大丈夫、ヒカリはちゃんと返すよ。すぐ会えるって」
ふふふ、と屈託なくチカが笑う。
ケイもやや呆れたようにいう姿は、本当にヒカリが帰ってくる、と思わせられる。
けれど……。
「そんなもの、信じられるか!!」
ショウの叫び声が、響く。
拳を強く握り締め、ダン! と壁を強く殴りつけた。
拳からは血がすぅ、と流れるが、それも厭わずに短刀を持ちケイに立ち向かっていく。
「待って、ショウ!」
激情に任せて走り出したショウの背に手を伸ばすが、トウタの手は虚しく空を切った。
「やっぱり、血の気の多いやつだなぁ」
ケイは焦る訳でもなく、むしろ余裕そうに刀を抜き身を翻す。ケイもあの青白い刀を持っていた。ショウの動きは読まれる。
「こんのっ……!! ……っ!?」
悔しそうにショウはそのまま体を回転させて、短刀をケイに突き刺そうとした。
少しでも掠めさせられれば、電流が走るのを見越してだろう。
しかし、ケイの姿は一瞬消え、直ぐにショウの背後に現れる。
「少し、寝ててもらおうか」
「あがっ……!」
「ショウ!!!」
背後から容赦なくショウの胸に刀が突き刺さる。貫通した刀にショウの血がべったりと付いて、青と混じる。
ショウの口からうめき声と、一筋の血が流れた。
「にげ、ろ……!」
ショウが僅かにトウタを見た。
逃げろ、と小さな声で呟いたのを最後に、ぐったりと意識を失う。
一瞬の出来事に、トウタの体は……動かなかった。




