襲来
「なっ……」
トウタの返答を聞いて、老人はぶるぶると震え始めた。
顔面蒼白になり、トウタの顔を見る。恐怖に引き攣った顔は死人のようで、紫色の唇でいう。
「それは、そんなことをあやつらに知られたら……!!!」
老人が何かをいいかけた時、空気が震えた。
それはショウもトウタも……そして老婆でさえも察知する。
老婆は震え、あれだけ崩さなかった笑みが消え失せる。唇の血の気は無くなり、濁った目に涙が溜まる。
「あっ……あ……あの人たちが……くる」
直後、耳をつんざく爆風が襲いかかってくる。
砂埃が視界を覆い尽くし目を開けていられない。
強い衝撃にトウタもショウも体を丸めることしか出来なかった。
「ぐっ……!」
「あっ…………!!」
煙の中、悲鳴と何かが飛び散る音が聞こえた。
それは直ぐに静かになり、辺りは静寂に包まれる。
ごほごほと強い咳をしながら目を開ける。
治まりつつある砂埃の向こう、強い光がトウタたちを刺す。
まるで犯罪を犯した犯人の様だ。
「アイツら……黒服!!!」
「ショウ! 二人が!!」
強い光の逆行を受けて現れたのは、紛れもないトウタたちが追っていた黒服だった。
立ちはだかる黒服たちはみな同じ出で立ち、背格好。黒いコートはこの世界に似つかわしくない小綺麗な風貌だ。
顔はフルフェイスのヘルメットで表情を窺い知ることは出来ない。
その黒服の手には、あの青白く光る刀が握られていて、老人と老婆をで切り裂いていた。辺りには赤い血が飛び散っていた。
トウタとショウは狭い部屋の中直ぐに逃げ場はなくなり、壁際に追いやられる。
トウタの手は腰に差した刀の柄を握りしめる。やるしかないのだろうか。ショウを守るために。
ショウも懐に手を入れて、相手を睨みつけている。
黒服たちは微動だにせず、出入口をがっちりと囲う。
その動きに乱れはなく、機械的だった。
「余計なことを言わなければ、また手出しをする必要はなかったのに。お節介もここまで来ると病気かなにかか」
その鶴の一声で目の前の黒服が左右に割れ、敬礼を取る。
逆行を浴び、さらに現れたのは二人の男女。どちらも同じ黒服を着ている。
男の方は少しトウタより年上だろうか、精悍な顔つきをしていて口元にホクロを持つ。鋭い目は猫のように細められていた。
もう一人は女、というよりも少女という言葉が似つかわしい。
幼い顔つき、人懐っこそうな男が猫なら彼女は犬、子犬といった姿だ。服も少し大きいのかだぶついていて、ひよこのようでもある。
この惨状に幼い兄弟のような二人は平然と立っていた。




