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警告

覚えていない、大切な誰かを思い浮かべる。

どうして自分は失ってしまったのだろう。

どうして、自分の隣には誰もいないのだろう。


だからだ、ヒカリを忘れかけてもなんとしてでも助けたいと思うショウの力になりたいと思ったのは。


「言葉を一言も発さなくなっても……ですか」


トウタは老人に投げかける。

隣に座る、物言わぬ人形のようになってしまった老婆を見つめながら。


喋るのは老人ばかり、隣の老婆はにこにこと表情を崩さないことに疑問を持った。

これは誰かに何かをされたのではないか、と。


そしてそれはトウタたちに関わりを持つのではと。


「僕たちに話しかけてきたのは、何かを知らせるため? それともそちら側なのですか」


初めて会った時の違和感は、これだったのかとトウタは身構える。

背後の出入口にまで気配を探り、いつ逃げ出してもいいように気を配る。


ショウはぎゅっ、と拳を握りしめた。

ショウはショウでこの手がかりを逃すまい、と考えているのかもしれない。


三者三様の思惑を巡らせながら、老人は口を開いた。


「警告をしたかったんじゃよ。こやつのため、儂のため、何かに抗った記憶がある。だが……」


老人が目を見開くが、その目には光はない。

まるでショウの記憶が消えていく時みたいな、真黒い闇を見つめる目だ。


「この通り、記憶はなくなって……こやつも言葉を失った。だから、抗うことはせず、詮索もしない方が良い。この地で聞き回るのはよしなさい」


空虚な目がトウタたちを見る。

その目は何も映していない。目の前にいるトウタたちでさえも。


あぁ、とトウタは思う。


(この人には感情が残ってないんだ……だから、怖かったんだ)


初めて会った時の、逆らってはいけないそんな気持ちの正体がこれなのだと知る。

この人は、抗うことを止めた。自分の空っぽさを認めてしまったから。

大事と言っていながら、その大事なものを諦めてしまったのだ。


本当の、大事なものを捨ててしまったからこんなにも空虚なのだ。


だから、トウタもショウも引くつもりはなかった。

老人を否定するつもりは無い。これは、彼が彼らが決めた道だ。

だけど、その道にトウタもショウも行くつもりは無かった。


「警告ありがとうございます。だけど、僕はショウのヒカリを助ける。止めるつもりはありません」




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