記憶の果て、永遠の先へ
第七章:「記憶の果て、永遠の先へ」
季節は、夏から秋へと変わろうとしていた。
葉の色がほんのり紅に染まり、蝉の声が少しずつ聞こえなくなる。
羽衣は、少しずつ“今”の世界から離れ始めていた。
—
放課後の帰り道
風が吹くたび、羽衣の影が薄くなっていく。
それは、誰にも見えない“終わりのサイン”。
羽衣「遼くん……もう、私のこと、忘れてしまっても大丈夫だよ。」
遼「……なんで、そんなこと言うんだよ……!」
羽衣「あなたは、私のことを守るために、記憶を手放した。
本当は、もう全部思い出してはいけなかったのに。」
遼「だったら……俺は何のために戻ってきたんだよ!」
羽衣の表情が、優しく、悲しくゆがむ。
羽衣「あなたが覚えてくれたから、私はここに“いる”ことができた。
それだけで、十分なの。」
—
夢の中——風の祠
空のような空間で、羽衣と遼は再び向き合う。
そこに現れたのは、彼らの“本当の姿”。
——かつて、空を翔ける翼を持ち、
人を愛してはならなかった存在と、
その存在を信じて待ち続けた地上の少女。
風の声「さあ、決めよ。“存在”か、“記憶”か。」
羽衣「私は……遼くんの中から消えても、いい。
あなたが幸せであれば、それでいいの。」
遼「そんなの、許さない……!
だったら俺は、すべてを捨てても、君と生きる世界を選ぶ!」
空が震える。
風が巻き起こる。
ふたりの魂がぶつかり合うように、世界が揺れた。
羽衣「それは、永遠に“現世”へ戻れない選択になるかもしれない……」
遼「構わない。俺が選ぶのは、“君がいる世界”だ。」
—
現実——丘の上、最後の空
風が静かになった。
ふたりは手を繋ぎ、空を見上げていた。
何も言わず、ただ“これが終わりではない”ことを信じて。
羽衣の輪郭が、ゆっくりと光に包まれていく。
羽衣「遼くん……また、巡り会おうね。」
遼「約束する。次の空でも、君を見つける。」
—
——そして、風が吹いた。
ふたりの姿は、空の彼方へと消えていく。
でも、それは「終わり」ではなく、
「はじまり」だった。
エピローグ:「再会」
——数年後。
新しい町。新しい学校。
ひとりの青年が、校舎の屋上で空を見上げていた。
風が吹く。
鈴の音が、どこかで聞こえた気がする。
少女「ねえ、空を見るのが好きなの?」
青年が振り向く。
そこにいたのは、ひとりの少女。
白いワンピース。
どこか懐かしい笑顔。
青年「……君は……」
少女「はじめまして。風見 羽衣です。」
青年「……!」
風が、ふたりの間を包む。
——そして、物語はまた、始まる。
そして——エンディングテーマ「空の約束」(歌詞風)
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ねえ 空に願いをかけて
届くと思っていた
風に溶けた君の声
今でも胸に残ってる
何度も 何度も
君を呼んだ夜
すれ違っても 巡り合える
それが 僕らの運命
いつか ふたり
同じ空を見上げよう
手と手を繋ぎながら
消えない記憶とともに
また会える、その日まで