巡る空、繋がる手
第四章:「巡る空、繋がる手」
時は流れ、現代。
都会の片隅、夜空の見えづらいビルの谷間に、その少年はいた。
名前は天坂 遼。
高校生。どこか空を見ては立ち止まり、夢の中で誰かを追いかけていた。
遼「また、同じ夢だ……あの、白い翼の少女……」
夢の中で何度も見る少女。
自分の名前を呼び、空の中へ消えていく少女。
「遼くん、また会えたね。」
彼女はいつも、最後にそう言う。
でも、遼には誰なのか分からない。
ただ、涙がこぼれる。
放課後の公園、桜の木の下
風が吹いた。
ひらりと桜の花びらが舞い、ひとりの少女が振り返った。
「あ……ごめんなさい、ぶつかっちゃって……」
その声を聞いた瞬間、遼の胸が、強く、締めつけられた。
遼「……え?」
「私、風見 羽衣って言います。転校してきたばかりで、よろしくね。」
その名前。
その声。
その瞳。
——夢の中と同じだった。
遼「羽衣……?」
羽衣「……どうして、その名前を知ってるの?」
遼は言葉を失った。
心臓が強く鳴っていた。
記憶が、何かを思い出そうとしていた。
羽衣「……夢で、あなたに会った気がするの。」
その瞬間、風が吹いた。
ふたりの間に、桜の花びらが渦のように舞う。
夢の中、再び
夜。遼は夢を見る。
今度の夢は、はっきりとした光景だった。
——かつての空。
——あの丘の上。
——神社、風、そして白い翼。
羽衣「ずっと、待ってたんだよ……何度、生まれ変わっても……君を。」
遼「……思い出した。俺は……空だ。」
羽衣「やっと、巡り会えたね。」
遼「……今度こそ、離さない。」
ふたりは空に手を伸ばす。
この夢の中で、再び繋がれた手は、離れることはなかった。
翌朝
遼と羽衣は学校の屋上で再会した。
羽衣「……きっと、あの時の約束が、今になって叶ったんだね。」
遼「俺たちは……何度でも巡り会う。空の下で。」
ふたりは、手を繋ぐ。
そこにあるのは、失われていたはずの記憶と、繋がった心。
そして、遼はもう知っている。
この物語は終わらない。
空がある限り、風が吹く限り、ふたりは——
また、巡り会う。