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第四章


第四章


「っあ・・・」

「やめっ、うああ!!」

「ぐ・・ご、め・・・」


優の耳に響くのは、親友の呻き声だけだった。

その声が自分にとってとても心地よいものだということに気づくと、優は唾を吐き出した。

「優・・・、ごめ・・・」

「何で謝るの?」

優は貼り付けたような笑顔のまま言った。

「謝るくらいなら、最初からやらなきゃいいんじゃないのかな?」

その声は、恐ろしく聞く者を凍てつかせるような声だった。

「あ、あたし・・」

「ずっと彼のことが好きだった?」

そう聞くと、杏は口を閉ざした。

優はそれを見ると手につかんでいた杏の髪を思いっきり引っ張った。

「答えて?」

クスクス笑いながら答えを待つ優は、まるでいつものいじめられっ子とは違った。

「好き、だった・・・」

「なら、何で私の相談に乗ったの?」

笑顔のまま、杏の顔面を蹴り飛ばす。

「私が一人でかわいそうだったから?それとも、彼と喋れない私を見て嘲笑うか、優越感に浸っていた?」

「ち、違う・・・」

「嘘」

優は杏の腕を縛り上げていた、鉄で出来た鎖を更に締め上げる。

ここは学校の倉庫。

拷問用具になるものは、まだ幾らでもある。

「私への哀れみ?」

「あ、あたしなりの・・・」

そこまで言って、苦痛に顔を歪める。

優が優しく微笑みながら釘でや柔らかいわき腹を抉っているのだ。

「っつあ・・・」

「あなたなりの?何?」

釘が奥深くまでつきささる。それと同時に、傷口からは赤黒い血がどろりと湧き出した。

答えがなかなか出てこないので、優は杏の大きく広がった傷口に指を突っ込んだ。

グリグリと抉り、肉をかき回すと杏が悲鳴に近い呻き声をあげた。

「あ、あたしなりの・・・。気遣い・・・」

「へえ」

優は一瞬だけ顔を歪め、またすぐに笑顔を貼り付けてポケットからライターを取り出した。

「素敵な友情」

―反吐が出る。

「ぐっ、いやあああ!!」

「あれ、そんなに気持ちいい?」

剥き出しにされた足の指を、ゆっくり端からあぶっていく。

あぶった箇所は赤く焼けたでれて、辺りに皮膚の焦げるような異臭が充満する。

「気遣いとか言っておいて、結局最後はあっさり付き合っちゃったよね」

優は冷徹な笑顔でのこぎりを持ち上げると、きつく縛り上げられたままの腕につきたてた。

「っあああああああああ!!」

「つまり、自分の欲望に、自分自身に素直になったっていうことだよね?」

「うあああああああ!い、やめてええええええ!!」

―ゴリ、ゴリ。

ゆっくりとのこぎりが動き始める。

「それはとってもいいことだと思うよ」

クスリと笑いながら、優は楽しそうにのこぎりをわざと深いところに力づくで押し込んだ。

「ぐっああああ、うああああ!!」

鮮血が勢いよく飛び出す。その血はのこぎりを持つ優の手にも付着した。

「だから、私も自分に素直になることにしたの」

杏の髪を掴んでいた左手を離し、傍らに置いてある、―恐らく野球部の備品の、金属バットを手に持った。

「安心して?」

「ひっ・・・」

優は今までの笑顔とは打って変わった、心の底から楽しそうな 表情をして杏の耳元でささやいた。

「殺しはしないから」

そう、殺したりなんかしない。

優は心の中で復唱した。

「でも、とりあえず」

杏の苦痛と怯えに染まった顔を撫でると、バットを振り下ろした。

「 サ ヨ ウ ナ ラ 」

―ゴスッ。

辺りに響いたのは、金属が何か硬いものにぶつかる鈍い音だけだった。

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