クリスマス・イブの宅配便
今夜はクリスマス・イブ。雪の降る今夜、僕の仕事は人々の家に宅配便を届けることだ。
今夜は特に寒い。雪の積もった道路を歩くと、引いている雪山で使うみたいなソリが道路に白い線を残す。ソリの上に乗ってるのは、大小さまざまなダンボール箱だ。
しばらく歩いて目的の家につくと、僕はこんこんとドアをノックして中にいる人を呼び出す。しばらくして、ガチャリと音がしてドアが開いた。
「はーい…………おっ、お前かあ。今夜もご苦労さん」
出てきたのは男の人だ。僕に笑って礼を言いうその人に、どういたしましてとお辞儀をする。そしてソリから大きめのダンボール箱を持ってきて、男の人に渡した。
「ありがとな」
笑ってダンボールを受け取ったその人は「おーいプレゼント来たぞー」と家の中に呼びかける。足音がバタバタ聞こえて「やったー!」「ガンダムだ!」っていう声が聞こえたから、これは子供へのプレゼントだったんだろう。もちろん、子供たちにはこれとは別に、サンタさんからのプレゼントもあるんだろうけど。
「じゃ、気をつけてな」
そう笑って閉められた扉に背を向ける。さあ、次の家に行こう。
こんこん、とまた別の家のドアをノックすると、しばらくしてガチャリとドアが開いた。
「はーい…………ああ、君かあ。こんなところまでお疲れ様」
出てきたのは若いお兄さんだ。労うように言う彼に、ソリから長方形のダンボール箱を持ってきて渡す。お兄さんは嬉しそうに「ありがとう」と微笑んで、家の中に呼びかけた。
「お揃いのマグカップ、届いたよ」
「えっ、ほんとー!?」
中から恋人らしいお姉さんが出てきて男の人から、嬉しそうにダンボールの箱を受け取る。それから「キミが届けてくれたの? ありがとねー」と僕に笑いかけてくれた。
「今夜は冷えるから、気をつけてね」
そう言って閉まった扉に僕は背を向ける。さあ、また次の家だ。
それからもう何軒か家を回って、次が最後の家だ。
こんこんとドアをノックする。しばらくすると、ガチャリと音がしてドアが開いた。
「はーい…………あら、あなた。こんばんわ」
出てきたのはお姉さんだ。ソリから薄いダンボール箱を持ってきて渡す。
「ふふ、ありがとう。マフラー楽しみにしてたのよ」
笑って僕のダンボールを受け取ったお姉さんは「ちょっと待ってて」と言ってぱたぱたと家の中に戻っていく。何だろう? 不思議に思いながら待ってると、「お待たせ」とお姉さんが急いで戻ってきた。手に何か赤い物を持っている。
「はい、どうぞ」
そう言うと同時に、僕の首に柔らかい物が巻かれる。柔らかくて、長くて、暖かいそれは……真っ赤なマフラーだった。
「今まで使ってたやつなの。あなたにあげる。クリスマスプレゼントね」
メリークリスマス、と言って手を振るお姉さんと、何だかぽかぽかした気分で別れる。これで今日の配達も終わりだ。これから僕も家に帰って、自分の家でクリスマス・イブを過ごす。
雪の降った道路に雪に足跡をつけながら歩く。急な仕事だったけど、今日の仕事も楽しかった。他の人の幸せな姿を見れて、お裾分けしてもらえるのは楽しい。最もこれは僕の仕事じゃなくて、僕はただの手伝いなんだけど。
歩いているうちに自分の家について、僕はこんこんとドアをノックする。バタバタと急いだ足跡がして、すぐにドアが開かれた。
柔らかい光がドアから漏れる。顔を出した彼は、安心したように顔を緩ませた。
「やっと帰ってきたかあ。おかえり、ラッセル」
「ワン」
「犬のお前に仕事頼んじゃってごめんなあ。急な仕事だだったし、お前もしっかり仕事してくれるからつい……」
申し訳なさそうなご主人に、気にしないでと尻尾をふりふり振る。僕はこの仕事が好きだから大丈夫です。今日も楽しんできました。
「寒いよな? 早くあがれあがれ……ん? お前、このマフラーどうした?」
「ワワン」
貰ったんです、って言いながら、僕は大好きなご主人とクリスマス・イブを過ごすため、暖かい家に足を踏み入れた。