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06 ロンドンの鳥(1)

皆さま ご無沙汰しています。

いらしてくださりありがとうございます。

 以前、「何でそんなにロンドンに戻りたいの?」と学校の同窓会で聞かれた時、とっさに「食べ物がおいしいから」と言いました。


 途端に出席していた皆の顔にとまどいや驚きが表れました。

 うわぁ、やっちまったな、と思いました。ぱっと聞かれてぱっと答えるのは本当に苦手です。じっくり考えてもろくな答えが出ないことも多いのですが。


 それはさておき、他の回でお話ししたように、自分にとってロンドンの食べ物は魅力的なものがいっぱいです。牛や羊のひき肉とマッシュポテトを使ったコテージ・パイ(牛肉)とシェパード・パイ(羊肉)、また、ウイスキーや紅茶に漬けたスモークサーモン、については既に書きました。

 が、何割か小麦粉なのだけれどそのふにゅっとした感じがどこかほっとするソーセージ(周囲の日本人には大不評)、うなぎのゼリー寄せ(ただしビネガーかけ必須! これも他の周りの日本人に大不評)もまた食べたいです。


 コクのあるクロテッドクリームといちごジャムを塗ったスコーンはもちろん、バタークリームといちごまたはラズベリージャムが挟まれたヴィクトリアスポンジケーキ等々お菓子はだいたい皆おいしいです。


 中東の総菜が買える店の分厚い肉が乗ったスパイシーで甘辛いスープ飯やファラフェル、トマト・パセリ・ミントのサラダも忘れ難いですね。


 でもロンドンに戻りたい理由はそれだけではありません。


 街なかでもどどーんと大きな森のような広大な公園がいくつもあり花や緑が豊か、そしてリスや鳥がたくさんいる。ロンドンに住むまで、自分がこんなに自然を欲している人間だとは思いませんでした。


 タワー・ブリッジ、時計塔の大時計ビッグ・ベンや、石造りの家が横に連なるテラスハウスなど、石、レンガ、鋼鉄でできた歴史的建造物が大切に活用されており(自宅もそうでした)、それらとガラスでできたザ・シャード(8つの面が一見、三角錐みたいな建物を造り上げている)などの新しい建造物とが共存している。


 日本だと「人間ファーストでなければ人でなし」みたいな空気を勝手に感じることがあるけれど、TV番組をはじめ、ロンドンには価値観が花ファースト、建物ファーストでも許される自由な空気があると感じる。個人の主観ですが……。


 そんなところでしょうか。こういう複数の「ロンドンに戻りたい理由」を即座によどみなく答えられる人、ほんとにうらやましいです。

 まあ、もし同窓会でこれだけ喋り続けたら途中から誰も聞いてなさそうですけどね……。


 で、鳥です。緑が多いので鳥もたくさんいて、日本の国鳥キジ(Japanese pheasant)を、私はイギリスで初めて見ました。これはロンドンから外れてしまいますが、旅行のため電車に乗って1〜2時間過ぎた辺りで小さな石橋の近くを通ったとき、欄干に色とりどりのキジが止まっていました。


 顔周りの赤、頭の後ろに短くツンと伸びた羽と腹の輝く緑、翼と長い尾の薄茶と茶、まぎれもなくオスのキジです。写真を撮る暇もありませんでした。


 ロンドンから電車で1時間も行くと普通に緑の丘などで羊が草をはむのが車窓から見え、好きなのです。でも、キジには不意を突かれましたね。まさかイギリスで見るなんて。


 似たようなのでヤマドリ(copper pheasant)もいますが、頭が丸くて頭の後ろに羽が突き出ていなかったし、全体的に赤っぽかったです。広々としたのどかなコッツウォルズの、林みたいな所でうごめいているのを見ました。


 キジはケーンケーンと鳴くそうですが、キジでなくクジャク(peacock)がそう鳴くのを聞いたこともあります。

 ロンドンにクジャクが飼われている公園があり、昼間はクジャクは公園内を自由に歩いていました。オスが尾羽を広げるのは見たことがありませんが、頭や首から腹のピーコックブルーが本当にきれいでした。天気が良い日には、緑っぽく光って見えることもありました。


 オスが芝生でのへーっと腹這いになっていると、家族や恋人なのか、単なる同僚なのか、茶色系の体のメスが来て、七面鳥くらいの短い尾羽を広げて見せてくれたこともありました。短い羽だけれど立って円形に広がります。メスのそういう姿を見るのは初めてでした。


 メスは何度も何度も尾羽を広げ、ちょこちょこその辺を歩き回るのです。内心は「うちの人(あるいは兄弟・親戚・友人・恋人・同僚)がすみません」なのか「私だって羽広げられるんですよ! 見てー」なのか、はたまた全く違うものなのか分かりません。でも、目を離せないものがありました。

 オスはそんなメスを全然見ておらず、近くの鳩と会話しているように見えました。


 どうやって上がったのか、クジャクが高い木の枝に止まっているのも見ました。花鳥画でのそういう構図は、それまでなぜかファンタジーだと思っていたのです。そのため(あ、本当にこういうのあったんだ、ごめんなさい)と胸の内で謝りました。


 カササギ(magpie)もロンドンで初めて見た鳥です。カラスくらいの大きさで尾が長く、黒い羽と白い羽の間に、光沢のある美しい青い羽が多くを占める翼を持っています。芝生をチョンチョン飛んで歩いていたりするのもかわいいです。暑いときには、視覚的な涼しさも少し感じることができました。

 東洋ではしばしば吉鳥とされるも西洋では印象が違うようで、鳥に罪はないのにと思います。でも、カササギの体の色彩や仕草がもし好みでなかったら、そこまで思えるか自信がありません(おい!)。


 鳥といえば、 姿と共に声も忘れられません。ロンドンの鳥、特にヨーロッパコマドリ(European robin、robin)本当に綺麗な声で鳴くのです。「玉を転がすような」という比喩がありますが、どんな玉を転がしたってこう美しい音色にはなるまいというほど、私にとっては惚れ惚れする声でした。微細にルルリルリと震えながら艷( つや)やかで時おりパァーンと張りもあり、節もうねるし長さも長くて、まさに歌です。クロウタドリ(blackbird)の声もまろやかできれいですが、個人的にはコマドリの声の方がより「推し」ですね。


 片手にくるみ込めそうなコマドリの小さな体のどこからあんな豊かな声が出てくるのか、本当に不思議です。

 ロンドンの公園ではほぼ野放し状態で十メートル以上もある高い木がたくさん育っていることも、音響効果に一役買っているのかもしれません。

 動画サイトでも先ほど声を聞いてみましたが、うーん、公園で聞いたときはいつももっとなめらかで本当に歌うようであったなあ、と思うのが多く、たまにおお、これは近いと感じるものが見つかりました。とにかく、当時は、コマドリの声を聞くと、落ち込んでいてもすうっと心が洗われるような感覚がありましたね。

 

 コマドリの姿は実際にはあまり見られませんでしたが、背の灰色と腹のオレンジ色の対比やちょこんとついている目のかわいさも魅力的な小鳥です。アクセサリー、クリスマスのグリーティング・カード、食事の際のナプキン、コップなど、いろいろなところにデザインのモチーフとして活かされてもいて、イギリスの人々に愛されているなあと感じました。

 2015年6月には、「英国の国鳥にふさわしい鳥の投票」で1位にもなったそうです。

ここまでお読みいただきまして、どうもありがとうございました。

ご来訪に心から感謝いたします。

よろしければまたお越しください。

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