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第一章 8話 勝利と面影

 そしてゆっくりと落ち着いて瞼を開いたガレット。

「もういい。言い訳はいらない。」

「信じて!ガレット!私はあなたの母親のアーレット・w(ウィッチ)・リンズよ!」

 ガレットは容赦なく火炎魔法を放った。

「私の名前にw(ウィッチ)なんか入ってないわ。巫山戯ないで。」

「wは魔法使い。史上最強の魔法使いの一族の名前よ!」

(話を聞かないのね偽物が。)

すると周りは騒ついた。

w(ウィッチ)って、確か聖アザリンスと双璧を成したっていうあの?」

「あのアザリンスと双璧?!数多のS級魔獣を討伐して、あらゆる魔法を使いこなすヤツと双璧ってどういうレベルだよ!」

アルスはガレットを傍観していた。

(ガレット...)

「母さんは巫山戯たことなんか言わない。誰も幸せになれない嘘なんかつかない。私の愛しい家族に成り済ましたこと、後悔しなさい。」

続いてガレットは闇系魔法暗黒羅刹狂乱ブラッド・シー・ダンドを放った。

「おいおい暗黒羅刹狂乱ブラッド・シー・ダンドだと?!闇系最高レベルの魔法をなぜ一般学生風情が知っているのだ!」

暗黒羅刹狂乱ブラッド・シー・ダンドはこの世に存在する闇系魔法では最高難易度にして最高攻撃力を持つ。この魔法の的になったものはその体、魂に至るまで闇に呑み込まれる。

(この魔法の詠唱を成功させたのは今まででただ一人。アザリンスのみのはず。なぜ小娘程度が扱えるというのだ!)

「私はただの学生じゃないわ。コイツは母親に似てるみたいだけど、私の目は誤魔化せないわよ。」

「馬鹿な!完全に再現したはずなのに!」

「確かに顔・身長・服装。似ているけど実の娘の目は欺けないわよ。」

ガレットは冷めた目を向けた。

「模倣は本物を超えられない。あなたの模倣も所詮は、」

指パッチンをしたガレット。

「私の中の母を超えることはできない。」

「ギャーー!!」

断末魔が響いた。

「何故だ!この魔法は対象の記憶に深く残っている人間を召喚するモノだぞ!何故自分の手で屠ることが出来る!」

「聞きたい?私は目の前で家族が焼け死ぬところを見ているの。だから今葬ったヤツが本人じゃないってことくらい容易に分かるわ。アナタは負けた。今ここに、断罪されることになる。」

ダーゴはガレットの掌から出た半透明の縄に縛られた。

「な!この、解けない?!魔法も使えない!?」

スタスタとダーゴに近寄り顎を持ち上げたガレット。

「私に危害を加えようなんて命知らずにも程があるわ。大切なものを私から奪おうとした事、後悔させてあげる。」

微笑んだガレット。それはさながら嘲笑を含んでいた。

「クソが!」

詠唱を始めた。

「汝の魂は爆ぜる。冥府の王の名の下に。冥府王の逆鱗(トリードン・ハデス)

ダーゴの魂は消失した。身体を残して。

冥府王の逆鱗(トリードン・ハデス)。一般的には大戦時に使われる殺戮魔法。一般人がこの魔法を知ることはなく、軍人でも上部の人間しか使用を許されていない。いや、上部の人間しか扱えない超高等魔法だ。

(確か曽祖父様が見たことあると日記に書いてあったがこの威力とは。ガレット・w・リンズ。底が知れないな。)

この林間合宿のを仕切っているマキロ大佐は目の前の光景に驚いていた。

(現在大戦以外に使用が禁止されていて一般人に降りない魔法を持っているなんて、どのような力を持っているのだこの女は!)

「アルス。怪我はない?」

「あ、ああ。」

アルスにはガレットが今までのガレットに見えなかった。

(あんな見るからにヤバそうな魔法使うなんて、馬鹿じゃなかったようだな、ガレット。)

凛として強く見えていたのだ。

「変だった?あんなに強い魔法使って。」

「いや、別に?お前も馬鹿じゃないんだなって思っただけ。」

「そうか。」

まるで愛しいものを見るように微笑んだガレット。

「ガレット、なんかカッケェな。」


「ダーゴの魂が消失、か。どうやら“我が片割れ”の実力を見誤っていたようだ。」

“その人”は自身の城のベランダでワインを嗜んでいた。

「あの聖なる選別(ホーリーソーティング)の渦中にいて生き残るというのは最強の運の持ち主。」

“その人”は眼下に広がる風景を眺めながらニヤけた。

「待っているよ。」

“愛しい我が片割れ”

「主様。」

「おお、リリス。どうした?」

「お客様がいらっしゃいました。」

「分かった。すぐ向かう。」

長い丈の黒服メイド服を着た少女、リリスは一礼して戻っていった。

「私の正体に辿り着けるかな。」

まだ暗雲は来たばかりだ。

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