第一章 7話 予期せぬ客
ガレットとアルスは無事本部に着いた。
「大佐!」
走ってガレット・アルス・マキロは集まった。
「お前たち!無事だったか!」
「はい。」
「さっき私が送った人達は?」
「全員中だ。お前のおかげでな。」
本当にこの娘は、どのような能力を隠している!
「一体何が起きているんですか!」
「分からない。山の周りには既に魔獣がいるそうだ。今追撃部隊がまわっている。」
「山の周りに魔獣?!」
山が魔獣に囲まれているなんて、そんな、
「ウェスタン大佐。この林間合宿の目的は、生徒の能力を上げるために行われるモノなんでしょう?」
「はぁ?!そんなこと、」
「正解だ。ガレット・リンズ。この林間合宿の意義は、君達生徒の能力向上。一人で生き抜く力など今養わずとも何とかなるからな。」
アルスはマキロの胸ぐらを掴んだ。
「テメェ!生徒達危険に晒してまで強くするだなんてどんな頭してんだよ!」
「そんなこと俺が聞きたいわ!ここには人が死ぬレベルの魔獣は放たれていない。誰かが人為的にしたことなのだ!」
「人為的なんて、お前らがしたことじゃ!」
すると酷い地響きが轟いた。驚いたのかアルスはマキロの胸ぐらから手を離した。
「何だ?この、地響き。」
「...まさか!」
突如上空から生命体が飛来。
「この、気配は、」
煙が晴れ、一人の人物が浮かび上がってきた。
「え、」
“久しぶり。ガレット。”
そこには黒い外套を来た細身の女性が立っていた。
その女性は薄く笑みを浮かべていた。
「ガレット?コイツ知り合い?」
目つきを鋭くさせたガレット。
「離れて。アルス。ウェスタン大佐。」
「はぁ?!」
こんな見るからにやばいやつを前に離れるワケ、
「アルス・シャーロズ。ここは退避だ。」
「大佐!」
ガレットは少し遠くへ二人を風魔法で吹き飛ばした。
「ガレット!」
「大佐。すみませんが、アルスを頼みます。」
ガレットは女性に風魔法をぶっ放した。
外套は外れ、顔が現れた。
「ガレット。良かった。生きてた。」
それは、過去に失ったはずの母だった。
歯軋りをした。目の前で確かに散った母を改造したのかと疑った。
「ガレット。迎えに来たわ。さぁ、行きましょう?」
母に似ているその女性はガレットにで差し伸べた。無論、手は払われた。
「黙れ!母は、母さんは、あの日、」
「もう大丈夫。帰りましょう?」
「黙れ!」
手を払い除け風魔法を放った。
「ガレット?」
「お前は、今ここでぶっ倒す!私の、母を模倣した態度で私がそちらに行くとでも思っているのか!」
「違うわ!私は、あなたの母親よ!」
「うるさい!黙れ!」
ガレットの頭の中は怒りに染まった。
剣を構え女性に向かった。
「ガレット、寂しかったのよね?」
「うるさい。黙れ。」
ガレットの目は赤く染まっていった。
「ガレットの目が、赤くなっている!大佐。これは、」
「恐らく狂乱暴走状態。自己防衛機能の一つだ。彼女の本能が暴走し始めている。」
「本能なんて、そんな、」
「あの女、ガレットの母と名乗る女なら秘密があるか、或いはガレット自身の過去にそれなりの原因があるのだろう。君こそ、何か聞いていないのか?」
「聞いて、ないですよ。聞いたらアイツは、」
「反応が良くなかったのか。」
「はい。」
何があったんだ、ガレット・リンズ!
「お前が、母さんなわけないんだ!あの日、母さんは!」
「私は生きているわ!今ここに!」
戦闘状態は続いていた。
そしてまた別の生命体が飛来。
「今度は何!」
砂埃が晴れ、また別の人間の顔が見えた。
「クハハハ!良いぞ!良いぞ!」
低い声が耳に届いた。
「我が名はダーゴ・ザッティ。会えたことを光栄に思え!」
「ザッティ?聞いたことないわ。...あなたが母さんの模造体を、」
「これは我の幻術さ!対象の思い出に残っている人物を具現化する!」
「思い出、だと?」
「そうさ!君の記憶に残る人間はどうやら母らしいがそんなことどうでも良い!」
「一体、何のために、」
「“あの方”直々にお前を連れてこいと命令があったのさ!」
目的は、私?
「うるさい。私を連れて行きたいなら、私だけ狙えば良いのに、」
「それは余興というものだろう!」
ガレットの顳顬に亀裂が走った。
「余興で人を襲うなんて、」
まるで、
「アイツらと同じ、アイツらと同じことをするな!」
ガレットはまた女性に向かっていった。
(ヤバい。このままじゃガレットが!)
「ガレット・リンズ!止まれ!」
赤い目に染まったガレット。数日前とは大違いだ。
(ガレット。お前は、)
何を抱えている!
(いや今はそんなこと考えている暇はない。)
「ガレット!」
母さん、父さん、サーレット、ナユレット、ごめん。ごめん。助けられなくて。
「ガレット!お前に何があったかは知らない!だがお前はお前だろう!自我を、無くすな!」
大丈夫よ。ガレット。あなたは、大丈夫。
一度戦闘態勢を中止。目を閉じた。
「ガレット!」