第二章 21話 洗脳解呪
リンダが転送魔法陣で西の砦の近くへ転送した。
「ここだ。」
緑の芝生が生い茂り、風が澄んで吹いていた。ガレットは向かいに見える高い塀に囲まれた塔を指差した。
「あれが、西の砦ですか?」
「あぁ。」
砦の周りに芝生はなく、土が見えていた。
「あの建物は国境を見張る役目を持っているから頑丈だ。一筋縄では壊せない。」
「そうね。外からじゃなくて中から壊せれば良いのだけど、」
「門番が俺の知り合いだから中に入ることは簡単だと思いますよ。」
ロイスが言った。
「門番が知り合いなのか。ロイス。」
「はい。リンダ殿。」
一行はロイスを先頭に門へ行った。
「俺だ。開けろ。」
門はゆっくり開いた。
「ロイス。後ろにいるのは、シャーロズ侯爵ですね。」
「両陛下はいるか?」
「いる。捕虜にしに来たんだろう。入れ。」
ロイスを先頭に砦へ入っていった。
「あの、」
「何ですか?」
ガレットは門番の男に問うた。
「ここは、防衛の要の要塞。何故簡単に開けてくれたんですか?」
「我々も王と王妃、いや王族に無理難題を押し付けられた者でね。革命を起こす気力もありませんでしたから。」
「そう、ですか。」
「マーガレット。行くぞ。」
「分かった。」
ガレット達は砦の中へ入って行った。
ガレット、ガリント、アルス、ナオミ、リンダ、ロイスは走って階段を駆け上り王と王妃がいる最上階に着き扉を開けた。
「ロイス、よく参ったな。早く反逆者共を皆、」
「イガランド陛下。あなたは今から捕虜になっていただきます。」
「何?!」
半透明の縄に縛られた王と王妃。
「ロイス。あなた私達への恩を仇で返すつもり?」
「あなた方に世話になったつもりはございません。マーガレット殿。入ってきて良いですよ。」
廊下で待機していたガレット達が部屋の中へ入ってきた。
「お前がマーガレット・w・スカーバだな。影武者のクセして生意気な、恥を知れ!」
「おいおい誰が影武者のクセして生意気だって?」
ガレットよりガリントの方が怒り心頭に発していた。
「手前らの所為でこっちはどれだけ苦しい思いしたか知らねえクセによく言うよ。」
「待ってガリント。」
「待てねえよ。コイツらが元凶なんだろう?なら手っ取り早く潰してしちゃおうぜ。」
ガレットは二人の前に跪いた。
「陛下。先ほども言った通り、お二人には捕虜になっていただきます。」
「小生意気が革命、ねぇ。巫山戯るのも大概にしろと言ったところだな。」
「あなた方が現宰相に洗脳されていることを知っています。あなたが今言ってることは本心ではないのでしょう?」
「本心だ。それに俺はこの国の王。洗脳などあり得ぬ。」
(無自覚なのは、当たり前だよね。洗脳されてるって最初から気づいていたら苦労しないもの。自覚済みの洗脳は洗脳じゃない。)
「陛下。幼い頃の教育係の顔は覚えてらっしゃいまいますか?」
「今の宰相が教育係だったがそれが何だ。」
「幼い頃から睡眠時間が6時間未満なのはその宰相の所為なのは、理解できますか?」
「宰相の所為ではない。王位継承者は睡眠時間を削って王の器を作るべきなのだ。」
(睡眠時間についても疑問さえ持っていないとは...深刻ね。それほど過酷だったということか。)
「王位継承者であれど、ちゃんとした人間なんです。しかも王位継承者の段階ではまだ発達途上の年端もいかない子供。体調管理もできないようでは王は務まりません。だから子が減るんです。」
「少なくとも貴様のような小娘にだけは言われたくないな。」
「睡眠の重要性も分からない操り人形に言われたくないです。と、言ったところで魔法の構築が完了したので次に移りますね。」
ガレットは王と会話をしている最中に洗脳魔法を解析していた。そして洗脳を解く魔法を開発したのだ。
「ガレット?なにを、」
「汝の洗脳を解き賜え 色彩記憶。」
王と王妃の体が薄く発光した。
「何も起こっていないが?最初から小娘程度の魔法で王族の体に変化を及ばせるなど無理な話だったのだ。」
「体に変化が起きると思ってたのですか。記憶は物質ではありません。記憶についての魔法なので体に影響はありませんよ。」
魔法は解かれた。あとは本人の意識をあるべき姿に戻すのみ。