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第一章 4話 特別講師

その日の講義は特別講師としてヤンドールが招かれた。

「あのヤンドール・スキンズか!第二のアザリンス、どんな技を使うんだろうな!」

「うちに来てたの、あれってヤンドールだったのか。」

「そうだよ!」

ヤンドールが手を叩いて注目させた。

「はい、注目。これから見せるのは日常で使える技だ。覚えて損はない。ちゃんと覚えるように。」

ヤンドールは地面に手を翳して詠唱を始めた。

『我に使い魔を授けよ。妾の下僕(マイバトラー)。』

地面に魔法陣が現れ、中から火を纏った鳥が出てきた。ヤンドールは中から出てきた鳥を肩に置いた。

「これは使い魔召喚の魔法だよ。遠いところは移動する時とか便利。だけど下手に使えば周りに甚大な被害が出る可能性があるから注意するように。じゃあ、皆んなやってみようか。」

各々ヤンドールが使った魔法陣を出して使い魔を召喚していた。

「何が出るんだろう...」

孤児(みなしご)何だから〜蛇とかじゃない?いや、蝙蝠とかw?」

同じ授業を受けている女子が話しかけてきた。

「我に使い魔を授けよ。妾の下僕(マイバトラー)。」

地面に魔法陣が出現。そして煙が同時に出てきた。

「煙?ヤンドールさん!煙が出てきました。」

ヤンドールはガレットに駆け寄った。


「煙って何があったの?」

魔法陣から出てきたのは白い蠍と黄金の瞳を持つ黒猫だった。

「この蠍、螺旋の模様がある...」

「螺旋、ねぇ。」

「虫を召喚するとか、流石すぎるw」

ヤンドールは学生達に眉を顰めた。

「君たち、ガレットに言えるだけ凄い使い魔召喚できたのかな?」

「私は黒い獅子を召喚しましたわ!」

「そう...知ってるかな?蠍の毒は強く、人間も刺されたら中毒を起こして最悪死に至る。それは獅子も例外ではない。一見すると獅子が捕食者に見えるけど、見方を変えれば蠍が捕食者になるんだよ。そうやって人に自慢できるのも今のうちだよ。」

完膚なきまでに言い負かされた女子は悔しい顔をして離れて行った。

「ありがとうございます...」

「何のことかな?」

(ヤンドールさん、やっぱり優しいな。)

「ガレット!」

「アルス。何が召喚できた?」

「俺か?俺は大鷹だ。」

アルスは口笛を吹いて大鷹を肩に止めた。

「必要な時以外は放し飼いにしようと思ってな。翼があるのに縛りつけたら勿体無いだろう。」

「確かに...」

「鷹は主人に従順と言う。良い使い魔を持ったね。」

「ヤンドール先生!攻撃魔法を教えてください!」

また別の学生が声をかけてきた。

「攻撃魔法?」

「先生、強いんだろう?なら攻撃魔法の一つや二つくらい、」

「残念ながら僕は攻撃魔法を教えることはできない。」

「何でですか?」

「僕が使う攻撃魔法は主に対人用じゃなくて対魔物用なんだ。魔物と戦う人間じゃない限り、教えるつもりはないよ。昔と比べて魔物は減少傾向にあるし、強度も下がってきている。教える必要はないよ。」

「でも、見てみたいです!」

「うーん。人によるけど凄い子は見ただけで真似しちゃうからなぁ。」

「私、ヤンドールさんの攻撃魔法、見てみたいです!」

「ガレットまで...まったく、しょうがないなぁ。」

ヤンドールは空に右手を挙げ、軽く息を吐いた。

(どんな魔法が見られるんだろう。)

ふと右手に力を入れると無数の閃光弾が飛び出し空に飛び立った。

「おぉ〜!!!」

(無詠唱、か。認めたくはないが流石だ...)

この世界では無詠唱で魔法を使えるものは少ない。仮にいるとしたら文字通り最強の一角くらいだろう。)


(無数の閃光弾...何だか流れ星みたいだな。そういえば昔皆んなで流れ星みたっけ。あそこは周りに山が多いから流れ星が見られたんだよね。でも都は発展が進んで街灯が多いから流れ星が見えない。また見たいなぁ。)

「ガレット。大丈夫か?」

「ん?うん。ちょっと昔のこと思い出してたの。平気よ。」

程なくしてヤンドールの特別講義は終わった。

「流石ヤンドール・スキンズだよな!」

「無詠唱であんなかっこいい魔法出すのは最早神がかってるって。エアリオスが建国されて10年ちょっとから生きてるし相当経験もある。あの人を超えられる人間なんかいねぇぜ!」

生徒達は口々にヤンドールを褒めていた。

休憩時間になり、ガレットは学園の中庭にあるベンチに座った。

「ふぅ。」

「何か、浮かない顔をしているね。ガレット。」

ヤンドールはガレットの隣に座った。

「ヤンドールさん。さっきの魔法、凄かったです。」

「ありがとう。あれは凄い弱い魔物に対してよく使うんだ。わざわざ弱い魔物を殺したくないからね。」

「優しいんですね。」

(まぁ僕からしたら全部の魔物が弱いから基本的にさっきの魔法しか使わないだけどね。)

「さっきの魔法、流れ星みたいでした。」

「そうだね。あの魔法綺麗だもんね。」

ガレットは顔を上げて空を見ながら言った。

「...村にいた時皆んなと流れ星を見たのを思い出しました。夜中に屋根に登って流れ星を見て。本当に綺麗だった。」

「そう、だね。あそこは流れ星とか星空、星の川とか見られたもんね。僕が知る限り、星がよく見えるのはあそこくらいだよ。」

「もう暫く行ってないので、また今度行こうと思ってます。」

ヤンドールは心配そうな顔をして言った。

「無理してない?そんなに急がなくても良いんだよ。あの村で何が起きたか、君が一番知っているはずだからね。」

あの日の惨劇を、ヤンドールは思い出させたくないのだ。

「そうですけど、私は向き合いたいんです。あの日に。向き合って、何であんなことが起きたか知りたいんです。」

ガレットの目は真剣だった。

「そう、なんだね。いつか分かるよ。全部。」

「分かれば、良いですね。」

「お〜い!ガレット!先生が呼んでたぞ〜!」

「分かったよアルス!じゃあまた。」

ガレットは中に入っていった。

「ガレット...ごめんね。僕が何もできなかったばっかりに。」

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