第二章 14話 黒幕...?
「どこまで、強欲な一族なのよwは。」
本には胸糞悪いことしか書いていなかった。
“自身の目的のためなら他者を利用し、最悪悪者にもなる彼らは真の強欲な者であると言えるだろう。この本を読んだ者がどうか、行動を起こしてくれるように願っている。”
「作者の名前、ない。」
「機密事項だから作者の名前は書いてなくて当たり前だろうな。」
「ルイの様子を見ても状況は最悪ね。」
「それなら早く王と王妃を見つけなきゃな。」
「そうだね。行こう。」
ガレットとアルスはその場を後にして王と王妃を探し始めた。
〜地下道にて〜
「フィーラン、急ぐぞ。逃げねば“彼の方”に処される。」
王のイガランドと妃のフィーランは地下道を走って城外への逃亡を図っていた。
「わかっています。陛下。今は落ち着いて迅速に、」
“陛下を処す者などおりませんよ。”
背後から誰かの声が聞こえた。
「そ、その声は、」
“陛下。今は落ち着いて対処するべきです。ロイスとルイ・リアヌ両殿下は捕虜になりました。あとはあなた方だけでございます。とにかく生き残ってください。さすれば、地位は保証できましょう。”
波長が一定で落ち着いていて、少し気味の悪い声は2人に言った。
「わ、私達の地位は、このまま続行できるのでしょうか?」
王の前では落ち着いているフィーランも声の主に対して取り乱していた。
“私に全てお任せを。陛下。私に任せてくだされば、その地位は確固たるものになりますゆえ。今はまず、ご自身の身の安全を心配してください。”
「良かった...では、今からどこに行けばいいのだ?」
“西の丘にお逃げください。そこには私が用意した傭兵がおります。騒ぎが収まるまでそこでお待ちを。そのうち反乱の首魁を討ち取ってきましょう。”
「おぉ、流石宰相。期待しているぞ。」
“恐悦至極に存じます。陛下。さぁ、早く向かってくださいませ。”
イガランドとフィーランは魔法で西の丘に向かった。
「やれやれ。これだから無能は。おっと、これは禁句ですね。」
いずれこの世界を我がものとする者が、一国を手中に収めるなど簡単なこと。今回の件で国は己の物になったも同然。
「クック、ハハハハ!」
薄暗くジメジメした地下道に笑い声が響いた。
同じ頃、ガレットとアルスは地下道を探しにきていた。
「もしかしたらここにいるかも、」
少し遠くで人と魔法の気配を感じ、アルスが眉を顰めた。
「近くに誰かいる。隠れるぞ。」
「うん。」
近くの岩陰に隠れた2人。
『クック、ハハハハ!』
「笑い声?」
さらに眉を顰めたアルス。
「ここに王と王妃はいない。行くぞ。」
「え、ちょっと!」
ガレットの手を引いてその場から撤退したアルス。
“おやおや、気づかれましたか。流石、影の守護者の一族。いずれその力も私の物になるのです。楽しみにしておくが良い。”
「ちょっとアルス!」
しばらく歩いたところでアルスの手を振り払ったガレット。
「いきなり何なの?魔法の痕跡があるってことはあそこに誰かいたってことでしょ?もしかしたら王と王妃だったかもしれないじゃない!」
「確かにあそこに王と王妃がいたのは間違いない。」
「なら何で、」
アルスは腹の底から低く、確かにこう言った。
「wのヤツがいた。」
「wって黒幕の?」
「“多分”黒幕のヤツな。魔力感知を使ったんだが、常人ならざる気配を感じた。国家魔法士レベルのな。多分、wであってる。」
「もしかしたらそのwであると考えられる人が王と王妃にあってたんじゃ?」
「そうなるとかなりマズイな。どこかに逃したのかも、」
「早く周辺を探さなきゃ!」
ガレットとアルスは城を出た。