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第二章 7話 計画

「こうして、俺はあの孤城の主になったんだ。」

「そんなことが、」

「ジィさんは、俺の唯一の家族だったんだ。マーガレットに会うまで。それがあの日一瞬で奪われた。絶望しかなかった。双子だって分かって、マーガレットがいるって分かって、本当に良かった。」

老人が亡くなってから約10年。ガリントは独りで孤城にいた。

「マーガレットだけが、唯一の希望だった。あの日来てくれて、本当にありがとう。マーガレット。」

「ガリント...」

「俺は、マーガレットに生きて欲しいんだ。過去に囚われすぎるのも良くない。革命は、嫌ならやらなくて良い。ただ、生きてくれ。」

ガリントの願いは切実だった。

「父さんと母さんが亡くなって、悲しいのは分かる。でも、2人はお前が死ぬのを望んでなんかいないはずだ。なぁ、分かるだろ?俺が2人だったなら、お前に生きてほしいって思う。幸せになって欲しいって思う。これ以上何も失いたくないのなら、多少の諦めも必要だ。それでも革命を起こしたいなら、俺も参戦するよ。マーガレット。」

「ガリント...一緒に、来てくれる?」

「あぁ。どこまでも行くさ。俺たち、双子だろ?2人で一つなんだからどこまでもついていくさ。」

マーガレットとガリントはこれからの行く末を共にすることを約束した。

〜シャーロズ家本宅〜

「仕事が一段落した。疲れた。」

書類仕事が多いので肩が凝るのだ。

(今頃2人は何をしているのだろうか。自立魔導式人形(オートドール)がいるから大丈夫なんだろうが、心配だな。何もなければ良いんだが。)

「そんなに屋敷の2人が心配か?」

「兄貴。見てたなら言えよ。」

「いや〜弟が家に置いてきた人に対して思いを馳せているとなると、面白いと思ってねぇ。」

「煽ってるなら殺すぞ。」

「酷いなぁ。弟よ。あ、そういえば半年後。決行の日らしい。連絡が来た。」

「そう、か。分かった。」

(もうその時が来たのか。早いな。)

「あと、マーガレットとガリントだが。あの2人から目を離すなよ?」

「はぁ?何言って、」

「ここだけの話あの学園長、デメールは信頼できん。腹のウチが分からない。疑ってかかれ。アイツを信じるな。」

「兄貴?」

「僕は今のこの幸せを壊したくない。配偶者がいる。それにお前とマーガレット。ガリントがいる。アイツは、全ての幸せを壊す。己の利益のために。」

己の利益を優先するものは他人の幸福を最も簡単に壊す。

「兄貴は、学園長が何を考えているのか知っているのか?」

「今は何とも言えない。言ったら、何が起きるか分からないから。でも、これだけは約束してほしい。生きてくれ。そして、マーガレットとガリントを守ってくれ。それが、」

「それが?」

「...何でもない。いずれ分かることだ。さ、仕事に戻ろう。」

(何のことだ?というか腹のウチがわからないのは兄貴もだろ。)


〜ヤンドール宅〜

「半年後、どのようなことが想定されるのか知らべておかなければ。まず各機関の事実上の停止。民の混乱、そしてなにより今の東宮。皇太子の処遇だな。皇太子はまだ齢10。下の弟に関してはまだ齢5だ。首を切るのも忍びない。どうしたものかな。」

ヤンドールは革命を起こした後に世がどうなるか考えていた。

(デメールはそこまで手が回らないだろうしなぁ。全く、面倒なことだ。)

革命を起こすと決めた今、後始末のことについてもある程度は考えておかなければならない。

(国盗りを成功させたとして、新しい統治者も必要になってくる。今現在が王制で新しく創るとしてまた王制だと反感を買う可能性がある。他国では絶対君主制を廃止して立憲君主制を採っているところもある。独裁を避けるなら立憲君主制を推すべきだろう。だがこれは政権の揺らぎを起こしかねない。絶対君主制であれば最終決定権・主たる指揮系統が予め集められているため政治における揺らぎは少ない。だが立憲君主制はどうか。確かに立憲君主制は象徴(シンボル)である王族を抑えることが可能。だが政治が腐敗する可能性を秘めている。政治の腐敗は民の混乱や国全体の情勢を揺らがせる原因となる。どちらの制度も良い面と悪い面があるからどちらを導入するか、悩みどころだな。)

ヤンドールは多くの国々を長い期間回っているから絶対王政と立憲君主制の良し悪しが分かる。

(どちらにせよ象徴(シンボル)は必要になってくるな。どうしたものか。)

最悪自分が象徴(シンボル)になることも吝かではないヤンドールだった。

(いや、俺が象徴(シンボル)になったところで何も変わらないだろうな。良くも悪くも中性的な顔で高すぎず低すぎない身長。威厳の"い"の字もない。家来となるであろう人間は最初は従うだろうが次第に鼻で嗤う時が来るだろう。とはいえあとは誰が適任か。)

思慮を深めていたヤンドール。

(考えてもキリがない。象徴(シンボル)は後で考えるとしよう。今はそれ以上に問題が山積みだ。)

今ある問題を先送りにしても結局ツケが回ってくるのだ。

(何かあれば全てを知る者(オール・ノー)を使うか。聖なる称号(ホーリーアカウント)の行使は命懸け。できることなら使いたくないんだが、守りたいものを守り抜くにはこうするしかない。もう、何も失わないために。)

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