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第二章 6話 ガリント過去編3

「これが、俺がジィさんに勝てないと思った理由だ。」

「喧嘩して一回も勝てなかったとかいうやつじゃないんだね。」

「あぁ。負けたというより、勝てない。ジィさんは精神的に卓越した人だったんだ。」

身体的能力でなく精神的に成熟した人間に、ガリントは『負けた』ではなく『勝てない』と思った。

「悪戯をしても軽く受け流されるし、驚かされたことばかりだった。」

「あのさ、そのお爺さんはどうやって亡くなったの?」

ガリントの体に不意に力が走り、手に待っていたティーカップが割れた。

「お、思い出したくないなら言わないで!ごめん、空気読めなくて、」

「いや、良い。マーガレット。驚いた、だけだ。聞かれると思わなかったから。」

少し深呼吸をしてガレットの方を向いたガリント。

「落ち着いて、聞いてほしい。それで、何も言わないで欲しい。嫌わないでほしいんだ。」

「良いよ。ガリントのことは嫌わない。大好きだよ。思い出したくないことがあったら、言わないでよね?」

「あぁ。ありがとう。」

そこから、また話し始めた。


約10年前 ガリントが13歳の頃

「ジィさん!森で猪狩ってきたぞ!今日は牡丹鍋た!」

「お、良いなぁ。ガリントも猪を狩れるようになったのかぁ。成長したなぁ。」

夕飯の準備をしている時に、その時はやってきた。

突然、城の入り口から自立魔導式人形(オートドール)の叫び声が聞こえた。

「ガリント。」

「分かってる!」

ガリントは急いで結界を張り城の防御を固め、2人は入り口に向かった。

「おい!何があっ、」

床にはかつての召使い。自立魔導式人形(オートドール)の残骸が転がっていた。

「一体誰が、」

爆発音が轟いた。

「ジィさん!下がってろ!これは、」

前から槍が飛んできたので防壁(バリア)で弾いた。

「よくやるな。坊主。」

「その装備。お前らさては闇に掬う軍団(ダーネスソルジャーズ)だな。」

闇に掬う軍団(ダーネスソルジャーズ)

裏社会を牛耳る集団。世の中の犯罪を集約したかのような極悪人の集まり。いわゆる反社である。

「正解だ。坊主。で、奥にいる爺さんがこの弧城の主人だな?」

「ああ。何じゃ。」

「この孤城を俺たちに明け渡せ。そうしたら命だけは助けてやる。」

「断る。」

「ほほぉん?」

「ジィさん!向こうは数が圧倒的に多い、勝てるわけない!」

「そこの坊主の言うとおりだ。爺さん、アンタ魔法が使えないんだろう?そこの坊主がそこそこの魔法が使えるらしいが、数ではこちらが勝っている。さっさと明け渡せ。」

「ここはワシの、いや俺の生家。全てが詰まった、俺の全てじゃ!貴様らのような地に塗れ汚れた野蛮人に穢されるワケにはいかないんじゃ!」

「ジィさん!」

「骨は、拾ってくれよ。ガリント。」

老人は腰にさしていた剣を引き抜き、闇に掬う軍団(ダーネスソルジャーズ)に向かっていった。老体にも関わらず、強さは健在。次々に薙ぎ倒していった。

「す、凄い、」

「じじぃの癖に生意気な!」

「小童の貴様らより、潜った修羅場の門が多いもんでな。」

次の一振りで終わると思っていた。

でも違った。奥から銃声音がして老人の体を貫いた。

「な、バカな、」

「ハハ、アッハハハハ!!馬鹿め!こんなナマクラに俺たちが倒れるとでも思ったかよォ!倒れた振りをしたんだ!」

魔法が使えず防壁(バリア)が使えない老人は膝をついた。

「ジィさん!」

「これで終わりだクソジジィ!」

(ダメだ、間に合わねえ。いや、間に合わせるんだ、唯一の家族なんだぞ!)

闇に掬う軍団(ダーネスソルジャーズ)の頭領らしき男が剣を振った。

(何でも良い、時間を一瞬で止められる魔法、頼む!)

ガリントは思い切って念じた。


視えた!


「時空の番人よ 我に力を与えたまえ 時の番人(ヘイムダルタイム)!」

時空間が停止した。

(多分時間は長く止まらない。少しだけでも、ジィさんの側に!)

ガリントが老人の前についた瞬間、新たに詠唱した。

「主よ 我に力を与えたまえ 我は主の大剣

主様のために御身を捧げて迅ぜよう 創造神の剣ティアマティー・サーベル!」

手に金剛色の大剣が出現した。

“解除”

時は動き出した。そして頭領らしき男の剣を受け止めたガリント。

「ガ、リント?」

「ここは、大切な場所だ。僕たちにとって、変えることのできない唯一無二の場所だ!それを何処の馬の骨かも分からねえテメェら譲るワケねえだろ!」

創造神の剣ティアマティー・サーベルをかまえて闇に掬う軍団(ダーネスソルジャーズ)に向かったガリント。

「ジィさん!下がってろ!」

(“強くなった”な。ガリント。) 

創造神の剣ティアマティー・サーベルの威力は凄まじく、一振りするたびに50人が花を散らして倒れた。

「何だよ。創造神の剣ティアマティー・サーベル?聞いたことねぇな。金目になるなら、奪うm」

「奪うだけの人間はいつか搾取される!命を枯らせ!死の神の微笑み(ヘラスウィフト)!」

また人が1人倒れた。

「はぁ、はぁ、」

「ガリント!」

「何だジィさ、」

老人がガリントの前に立った。そして、老人は頭領らしき男に斬られた。

「ジィさん!ジィさん!」

「ッチ避けられちまったか。」

「ワシのことはいい。早く、終わらせなさい。」

「でも!」

「ワシのことは気にするな。まだ、5分は生きられる、から、」

(トドメだ。)

剣が振り下ろされた。

「.......ウガァ!!!!」

ガリントの目は紅色に染まり、頭領らしき男の剣を弾いた。

「お前が、お前らが!僕たちの、俺たちの幸せを壊した!今度は、俺がお前たちの命を奪ってやる! 汝の命は我が元に その胸に赤い牡丹と彼岸を咲かせ 聖なる紅華(バスティア)!」

立っていた闇に掬う軍団(ダーネスソルジャーズ)の胸から突然赤い花が咲き乱れ、爆ぜた。その瞬間悲鳴が上がった。

「地獄に堕ちろ!」

全ての闇に掬う軍団(ダーネスソルジャーズ)が倒れた。

「ジジィ、しっかりしろ!」

「ガリント、本当に、強く、なったなぁ。」

弱々しい子供のような手を取ったガリント。

「ごめん、助け、られなくて、」

「良いんだ。ごめんなぁ。この大きい孤城に、独りに、させてしまうのだから。」

「そんな、ジジィ!お前も生きるんだよ!」

「無理、だ。ワシは魔法が使えない。魔法が効かないんだ。だから、回復魔法も、効かない。」

「クソ!俺は、目の前にいる人間も、助けられない、弱い人間だ!」

「お前は、弱くない。強い。こうやって、自分以外の人間を、思って行動できる。それだけで、強いと言える。」

「ジィさん!」

「お前の迎えは、いつ来るかは、分からない。だが待つしかないんじゃ。今は。」

弱い手とは裏腹に力強い目をしていた。

「愛してるぞ。ガリント。」

そのことばを最後に、老人は目を閉じた。

「ジジィ、親父ィ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」


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