第二章 3話 方針決定
デメール宅
「計画が少々崩れてしまいましたか。まぁ良いでしょう。これで、大体の地盤は完成しましたあとは時が過ぎるのを待つだけ。」
“デメール”は自室にて不気味な笑い声を発した。
〜翌日〜
「ガレット。起きて、ガレット。」
「ん〜今何時ぃ〜?」
「朝というか昼の13時だよ。起きて。」
ガリントに揺さぶられながら起きたガレット。
「全く。もう20歳過ぎてるんだからもうちょっとちゃんとしろよ。そんなんだと嫁ぎ先ないぞ?」
「良いもんねー別に。独り身でも。」
「あのなぁ。」
部屋のドアが叩かれた。
「は〜い。」
「ガレット。起きたか。」
「アルス、おはよう。」
「おはよう。相変わらずの寝坊だな。しかも寝癖、悪化してるんじゃないのか?」
フッと笑ったアルス。
「うるさい。だまれボンボン。」
「効かねえな。俺には。」
ガレットの鼻を摘んだアルス。
(何見せられてんだ俺。)
「はなひははいほ(離しなさいよ)」
「じゃあちゃんと起きろ。俺このあと仕事で外出るから。」
「そうなんだ。いってらっしゃーい。」
「ガリント。ガレットのこと頼んだ。」
「りょ〜かい。」
部屋から出たアルス。
「...二度寝すんなよ。」
シャーロズ家本宅
「今日は、私領の経理観察、か。」
執務室にてアルスとリンダは仕事をしていた。
(革命を起こすだの何だの言ってるが、本当にできるのか?相手は王。だいぶ難しい気もするが...)
このエアリオス王国では王が絶対。逆らうことはすなわち死を意味する。
(兄貴がガレット達に変なこと吹き込んでなければ良いんだが。実の兄とはいっても腹の底は知れないし...)
考え事をしながら仕事をこなすアルスだった。
〜聖アザリンス学園 学園長室にて〜
ヤンドールとデメール、ナオミが顔を合わせていた。
「で、どうする。デメール。ガリントまで来たが今後の方針は?」
「方針、ですか。」
「マーガレットとガリントが一緒になったことで何か不都合でもあるの?」
ため息を吐いたデメール。
「ガリントが孤城にいた頃の異名は知っていますか?」
「異名?知らないけど。」
「ガリントの異名は、“手のつけられない死神”。調べによるとスラムをはじめとする貧困街や郊外を狙って色々やっていたらしいです。」
手のつけられない死神
一説では孤城の前に捨てられていて主に育てられたあと僅か13歳で孤城の主人となったバケモノと言われている。貧困街や裏社会を牛耳るとまで言われており、犯罪と呼ばれる行為はひとしきりやったと噂されている。
「犯罪者がいるのは辞めておきたいんですが、どうしたものか。」
「デメール、ひとつ聞いて良いかしら?」
「どうぞ?」
「いつ頃、やるつもり?」
デメールは足を大きく開いて膝に肘を置いて言った。
「革命の狼煙は、国をも焼き尽くす。半年後、決戦です。」
「半年ってだいぶ先じゃない?」
「我々にとっては最近も当然。な?ヤンドール。」
「んぁ?あぁ。」
「気を抜かないでください。私たちがやることは革命です。分かるでしょう?」
「わかってるさ。武者震いってやつだ。」
「ほぉん?」
(半年後に、革命か。生まれてから何年経ったかもう朧げだが、ついにこの時がやってきたか。)
「気を抜かないでくださいね。2人とも。革命を起こした暁には、相応の未来が待っているのだから。」
「えぇ。いいわよ。」
(ヤンドールは大丈夫ですかね?あれじゃ話になりません。いざとなれば、切り捨てましょう。)
(デメール。あいつは少しやり過ぎるところがあるからな。本当に心配だ。限度というものを知らない。第一今いる皇太子のことをどうするつもりだ?まだ10歳だし弟はまだ5歳だ。そんな幼い人間をやるのは忍びない。)
革命を起こすヤンドールも、人の心は残っていたのだ。
(俺も革命に賛同した身だ。今更抜けるなんてことはしないがいざとなれば...)