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第二章 1話 リンダ

〜学園にて〜

ヤンドールとデメール(学園長)は今後の策について話していた。

「で、次からどうするんだ。だいぶ博打だぞ?」

「博打でも勝てば良いだけの話。」

「ったく。お前は昔っからそうだよな。賭け事は自分から進んでやるし。しかもその賭け事で勝っている。」

「負け惜しみかな?」

「違う。はぁ、ったく。勘弁してくれ。」


ガリントとガレットは部屋へ入った。

「ねぇマーガレット。」

「?何?」

「俺このままここにいても、いいのかな?」

「え?何急に。ガリントは私の唯一の家族なんだからここにいて良いのよ?」

何かを悟ったのかガリントは少し顔を緩ませた。

「ありがとう。」

(どうかしたのかな。)

荷物の整理を済ませて食堂へ向かった。


「おぉ、来たか2人とも。」

扉の先にいたのはアルスだけではなかった。

「リンダさん!お久しぶりです。」

「久しぶり。隣にいるのは、例の弟さんだね?」

「ガリント。あの人はこの国の侯爵リンダ・シャーロズよ。」

「あれがアルスの兄貴か。」

リンダは2人に近づいた。

「学園長から聞いたよ。影武者の一族の末裔だってね?」

「まさか学園長から聞いたんですか?」

「あぁ。まだ僕たちが知っている情報はたくさんある。知りたければ、御夕飯が終わった後で応接室に来ると良い。」

言い終えるとリンダは少し離れた席に座った。

「さ、2人とも座ると良い。」

「おいなんかこいつ胡散臭いぞ。」

「そんなこと言わない。」

ガレットとガリントはアルスの隣に座った。

「おい兄貴。なんか変なこと言ってねえだろうな?」

「あたりまえだろう?お互いにとって有益な話だ。さ、久しぶりの晩餐を楽しもうじゃないか。」

(ッチ流された。これだから兄貴は。)

続々と料理が運び込まれてきた。

「凄いな、これ何の肉?」

「ガリント。これは角豚カクトンと言ってな、今王都で試用している家畜だ。爵位持ちの名家にしか流通してないから希少だぞ。」

アルスがガリントに説明をした。そしてガリントが一口頬張った。

「美味しい...角持ちの家畜からもっと肉が硬いのかと思ってたけど凄い柔らかくてジューシー...こんな美味しい肉初めて食べたかも。」

「あの孤城にいる間何食べてたんだよ。」

「リリスが出してるやつしか食べてなかった。そもそも食べる時は“独り”だったから味も分かんなかったよ。」

「それは、聞いちゃまずいことだったな。すまん。」

「全然気にしてない。俺は誰かと一緒にあたたかいめしを食べられるだけでも十分幸せだ。」

ガリントはアルスに笑顔を向けた。

「ガリントお前、ガレットに顔似てるな。」

「そりゃ双子だからね!」

幼い頃から独りで孤城に住んでいたガリントは見かけによらず仕草が幼い気を帯びていた。

「俺、マーガレットに会えただけでも嬉しいのにこんなご飯まで準備してもらって、本当にありがとう。」

「これからは我慢せず、自由に生きろ。ガリント。」

「うん!」

(まるで昔のガレットを見ているようだ。あどけない笑顔で、純粋で。懐かしい。)

「アルス?どうしたの?」

「いや、何でもないさ。さ、俺たちも食べよう。」

程なくして一同は夕飯を終えてガリントとガレットは応接室へ向かった。

「何が、聞かされるんだろう。」

「分からない。でも、何か重要なことなのは間違いないだろうね。」

〜応接室〜

「約束通り来たみたいだね。さ、座って。」

「はい。」

リンダと向かい合う形でガレットとガリントは座った。

「さて、何から話そうか。どこから知りたい?」

「全部って言ったらどうしますか?」

「全部というのは、困るなぁ。君たちに関する情報は抱えきれないくらい多いんだよ。」

ケラケラと笑ったリンダ。

「笑わないでください。私たちは今真剣なんです。」

「そう、か。じゃあ先に君たちに聞いておこう。どこまで知っているんだい?」

「私は、村が王の影武者の一族の末裔の集落で王の反感を買って焼き討ちにされたって事と入れ墨のことまでは知っています。あと、双子が厄災を齎らすって言われていた事も。」

「ガリントも同じ感じかい?」

「...はい。リリス、使者を使ってある程度のところまでは調べはついています。」

「ほう。なら、なぜ双子が厄災を齎らすかということから教えよう。」

そこからリンダは話し始めた。

「双子と言ってもまず一卵性双生児と二卵性双生児に分かれることは知っているだろう。ここでいう厄災を齎らす双子というのは一卵性双生児のことだ。一卵性双生児は一つの受精卵から二つに分裂するわけだから元の魂が一つであったことを意味する。元の魂が一つであることが厄災につながる理由についてだが、これはこの国の因縁と繋がっているんだ。」

「イン、ネン?」

「ああ。話は建国してから100年後くらいまで遡る。建国当初から影武者がいたんだ。で、とある代で影武者の一族に一卵性双生児が誕生した。それが厄災の始まりだった。」

〜建国してから100年後 影武者の集落〜

一つの家屋で二つの産声が上がった。

「お嬢様、元気な双子の赤ちゃんですよ!」

「よかっ、た。元気そうな子供で。」

建国当初は子供に恵まれていたが段々生まれてくる子供が少なくなっていった王室は状況を重く見ていた。そこで国の上層部は影武者の集落で双子を産んだという話を聞き入れて使いを集落に向けた。

「双子が生まれたというのは本当だったようだな。」

「騎士団長!」

「今、王家の血筋が途絶えようとしているのは知っているだろう。片方をこちらに譲ることはできないか?」

とても出産したての人間に聞く言葉ではなかった。

「正気なんですか!?いくら騎士団長であろうと、お嬢様のお子様を奪ろうだなんて許しませんよ!」

「吾輩はいたって正気だ。なんたって王命なのだから。」

この国は王の意見が絶対とされているため逆らえない。

「騎士団長。あなたは私が自分が産んだ子供を他人に渡すようた浅はかな人間だと思っているのですか?」

「そんなこと知らない。どうでもいい。さっさと片割れを寄越せ。」

騎士団長が手を伸ばした時、火花が散った。

「火花?馬鹿な。こんな小さい子供が魔法だなんて、おいお前何か細工でも、」

双子は揃って目を開き、言葉を発した。

『幼き子供を母から奪うとは何と無礼な行いをした。この国王はそんな野蛮なことをやるような人間だったのか。』

騎士団長はふと双子の手の甲を見た。

「!その刺青、お前達まさか!」

時計・月・螺旋の刺青を持ったことが確認された。

「その刺青は、初代王が建国するときに現れたとされる女神の刺青!お前達なぜそれを!」

『口を慎め。痴れ者が。妾は貴様らが理想郷を創ると豪語しておったから仕方なく手伝ってやったのだ。それを、人がいないから他人から生まれたての子供を奪うだと?冗談は寝て言え。馬鹿者が。』

騎士団長は歯軋りをして双子の母に刀を向けた。

「騎士団長!お嬢様に何をするおつも、」

瞬く間に侍女が床に倒れ、赤い花を咲かせた。

「団長!」

「どちらか渡せば、母の命は助けてやろう。早く渡せ!」

双子は幼き眼をカッ開き、騎士団長へ言った。

『貴様死にたいようだな。良いだろう。喰らえ。我が至高の魔法を。』

“悪には平等な裁きを 善には平等な福音を  神の裁判と慈悲(アメトムチ)

騎士団長に雷の槍が突き刺さった。

「グハァ!」

『王に伝えよ。そんなんだから子が産まれぬのだ、と。ま、無理であろうがな。』

騎士団長がその場に倒れ、塵となった。

「跡形もない...この子達、凄い双子ちゃんね。」

双子は母の腕の中に戻り、元のようにスヤスヤと眠った。

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