第一章 24話 仲直り
「私は、皆んなでこの国を変える。学園長、ナオミさん、ヤンドールさん、ガリント。それに、アルス。皆んなでこの国を変える。」
「どちらかの陣営には付かないのか?」
「付かない。私には、選べない。選ばない。皆んな、私の大切な人だから!」
選んだとして、片方は失うことになる。それは嫌だ。
「どちらも大切だからこそ、選ばないんだ。分かって。」
お願い。
「お前は、それで良いのか?」
「ええ。ガリント。」
「お前がその道を選ぶなら、従うさ。」
そこで闘いは終結した。地面に倒れた兵士達、ガリントが召喚した魔獣は息を吹き返した。
「これで、良いんだね。」
「多分良いんだろうな。」
各々は棲家に帰っていった。
「ガレット、ガリント。2人ともウチに来ないか?」
「は?それは悪いだろ?事実、俺はマーガレットをコッチに連れ込みかけたんだぞ?」
「そんなの今は関係ないだろ?2人は揃って生活するべきだと思うし、色々整うまでウチに来ないかって話だ。」
「ガリント。良い案だと思うよ?アルスの家は侯爵だし、物に色々思わなくて良いし。」
「...そう、だな。暫くは泊めさせてもらう。」
「じゃあ準備してくるから先に帰ってるわ。」
アルスは帰っていった。2人は歩きながら城を後にしてアルス宅へ向かった。
「お前さ、アイツのこと好きだろ?」
「え?好きだけど?」
俺が聞きたいのはそう言う好きじゃねぇんだよな。
「はぁ。お前鈍感だなぁ。」
「へ?」
「で、これからどうすんの?」
予期せぬ客の襲来。崩れ始めた計画。
(何でこうなるんですか。マーガレットならまだ“扱いやすい”のに、ガレントとは...)
全くどうしたものか。
「というかマーガレットはコッチに来そうだし、結果オーライでしょ?」
「そういうことじゃありません。」
(これからどうしましょう。“あの魔法”は取り扱いにくい。出方を間違えたらこちらが終わってしまいます。少々面倒なことになりましたね。)
「ヤンドール。今考えるべきことは別件だ。一回おいておけ。」
「...分かりました。」
ガレットとガリントは共に侯爵別邸(アルス宅)に着いた。
「ガリントの部屋は、ガーレットの隣室だ。」
「ぅあ、ありがとう、ございます。」
「別に今更敬語なんかいらねえよ。取って食うワケでもないんだから。調度品とかあるが気にするな。」
「ありがとう。急に押しかけて悪いね。」
「気にしてない。ガレットの唯一の肉親なら歓迎する。ただし、また今回みたいな件を起こしたらただじゃすまねえからな。」
「わ、分かった。」
「ガリント。部屋まで案内するよ。」
「ありがとう。」
ガレットとガリントは部屋へ向かった。
その頃、ナオミはマキロの墓参りをしていた。
「ウェズ。久しぶりね。やっと来ることができたわ。」
墓石の前に跪いた。
「ガリントは味方についたし、大体丸く治ったよ。ま、一部だけね。」
懐から酒瓶とグラスを出して注いだ。
「結局飲むことは叶わなかったけど、これで勘弁してよね。」
少し高めの丘に墓石が一つ。
「安らかに眠りなさい。マッキー。」
マッキーとは昔のマキロの渾名だった。
「自分を犠牲にして他の人間を生かすだなんて、あなたらしい。天上界でも、そのカリスマ性を駆使していろいろできるといいわね。」
その場から立ち去ったナオミ。