第一章 20話 孤独なる旅
ガレットは独り。旅を始めた。
(今度は、この刺青の謎を探る為。この刺青に何の意味があって、国の上層部が消そうとしたのか。)
黒幕は、リリスじゃない。国だ。
(国一つ自分一人で消せるなんて思ってない。いつか、仲間を率いて潰す。)
憎しみ・恨みはガレットの中で燃えていた。
「絶対許さない。」
「あれ、何で俺玄関に立ってるんだ?」
アルスはなぜ記憶にもないのに玄関に立っているのか気になった。
「これ、ペンダント?誰から、貰ったんだっけ?」
忘れちゃいけない気がするが思い出せない。
「ま、いいや。」
ガレットはその日も本を読んでいた。
(螺旋の意味は循環・運命。月の意味は神秘・変化。時計の意味は永遠・強時性。)
月は太陽の裏にいることから影の意味も持っていたはず。
「“王家の影武者”の家紋...」
この国の王家は昔から影武者なるものを抱えていたらしい。
「王家の影武者、何でその家紋が?」
私の手に?
「私、王家の影武者の一族だったの?なら、あの村は、」
影武者の一族の村だったのか。
なら私が林間合宿であの魔法を使った時ナオミさんが驚いたのも頷ける。
「王家の影武者だから規格外の魔法を使えても当然、か。」
それから私は王家の影武者について調べ始めた。
私は王家の歴史に詳しい人の家を訪れた。
「すみません。いきなり訪れてしまって。」
「良いんですよ。しかし、今更王家の歴史が知りたい若者なんて珍しいですね。」
「そう、ですね。国民はあまりこの国の歴史に興味がないそうです。」
ソファーに腰掛け話し始めた。
「で、確か王家の影武者の一族について知り合い、と?」
「はい。」
「すみませんが何故そんなことを知りたいのです?」
「それは、」
ガレットは右手につけていた手袋を外し、見せた。
「これは、影武者の家紋!何故、」
「私は、この刺青の謎を追っているんです。何か、知っていることはありますか?」
「知っていること、ねぇ。影武者についての情報は国の大臣でさえあまり知らないんですよ。」
「そう、ですか。」
やっぱり、知っている人は、
「ですが、ニつだけ分かっていることがあります。」
「二つだけ?」
「はい。影武者の一族に双子が生まれたら、すぐ里子に出す。出さなければ厄災が起こる。こう言われているんですよ。」
「双子?」
「双子を同じ家に里子に出すのではなく、別々の家に里子に出さなければ国が滅ぶと言われているんですよ。」
「じゃあ、あの村には双子が?」
「あなたの村に双子いたかどうかは知りません。この影武者の刺青は、本家筋の人間にしか現れないのです。」
本家筋...私は王家の影武者の一族だったのか。
でも妙だな。父さんも母さんも、サーレットにもナユレットも、右手に刺青なんかなかった。
「まさか、」
血が繋がってない?
「確か影武者の一族は十数年前に滅んだはずです。」
「十数年前に滅んだって、私の村が潰された年!」
「まさか生き残りがいるとは。」
そんなことがあるのか。
「私は、王家の影武者の直系一族の人間か。」
「あと、最後にわかっていることは、王家の影武者の一族は直系しか存在しないこと。分家は存在しません。」
「え?本当ですか?なら、私の本当の両親は、」
「恐らくもう、」
私と繋がっている人間がもう存在しない...ということか。
「私から言えることは以上です。お力に添えず、すみません。」
相手は深々と礼をした。
「謝らないでください!」
これだけの情報が得られたのだ。謝られることはない。
「あなたの旅路に幸運が有りますように。」
私は王家の影武者の直系の生き残り。私には片割れがいる可能性がある。そして、あの村が焼かれた理由が自分、なのか。
「私の、せいじゃん。全部。」
自分の脳裏に焼き付いている辛いことの元凶が自分だった。
「でも、一つ気になるな。双子を里子に出せば国が滅ぶことはなくなる。なら何で影武者の一族は滅ぼされたんだ?」
双子を里子に出した時点で国が滅ぶリスクが完全になくなる。なら一族皆んな滅ぼさなくても良いはず。
「何か、王家が影武者達を滅ぼす理由があったのか?」
次の目的が決まった。
「王家が影武者達を滅ぼす理由が分かれば、村が焼かれた理由も分かるはず。」
そしてまた私は歩みを進めたのだった。