第一章 2話 ヤンドール
復讐するにしても、思い出しただけで頭痛くなるからなぁ。
「ま、良いか。」
自分の村を潰した奴らを絶対許さない。聖なる選別なんて制度も絶対無くしてやる。こんな腐った制度があるせいで血が流れるのはダメだ。
(制度を無くすとなると、上に上がらなきゃいけなくなる。今のままじゃダメだ。もっと強くならないと。)
決意を固めたガレットだった。
ー翌日ー
「今日は確か、魔導史学・魔法史・実践魔法・体術か。頑張ろ〜。」
ガレットは食堂に行った。
「お、今日は寝坊しなかったか。」
「別にいつも寝坊してるわけじゃないです〜。」
椅子を引き座った。
「今日の朝ごはんは何だろうな〜♪。」
「朝ご飯程度に何故ここまで舞い上がれるんだ?」
「朝ごはんは原動力です〜。」
程なくして朝ご飯が来た。
「お〜!オムライスだ〜!」
このトロトロ感が堪らない。
「いただきま〜」
タイミングが悪く窓を小鳥が突いた。
「鳥、伝書鳥か?」
「タイミング悪...」
ガレットは魔法で窓を開けて小鳥が入ってきた。
「モグモグ、で何か用?」
『伝言 伝言。ガレット・w・リンズに客が来ている。』
「客?」
『魔法士 ヤンドール・スキンズである。学園に着いたら至急教官室に来るように。』
伝書鳥は開いた窓から去っていった。
「ヤンドール・スキンズ?誰だそれ。」
「私がこの家に来た時の仲人だよ。この家に来る時があったの最後だったし、懐かしいな〜。」
ー学園ー
「教官室〜どこだったけな。」
「お前教官室くらい覚えろよ。」
学園の中をウロウロしている。
“ガレット?”
「その声は!」
後ろを振り返った二人。
「ヤンドールさん!」
ガレットはヤンドールに走って抱きついた。
「お久しぶりです!今までどこで何してたんですか?心配してましたよ!何も連絡寄越さないから!」
「ごめんごめん。何せ忙しかったからね。」
これが、ガレットをウチに連れてきた魔法使い。中性的な顔、高すぎず低すぎない身長に金髪・萌葱色の目。ぱっと見物腰柔らかそうな喋り方。この魔法使い、ガレットの幼少期を知っているのか?
「そこの、確かシャーロズの次男坊。すまないが先を外してくれないか?」
「分かった。ただし、変なことは聞くなよ?」
「分かっている。この子に何があったか把握しているからな。」
把握って...
ガレットとヤンドールは中庭に向かった。
「今まで、何をしていたんですか?」
「う〜ん、魔獣退治とか枯れた土地に雨を降らせるとか、魔法使い養成所の特別講師とか色々だよ。」
「本当、ヤンドールさんって色々できますよね。」
「まぁ、な。これも年の功というものだよ。」
(ヤンドールさん、側にいるとすごい安心するな。)
「また会えて、すごい嬉しいです!」
「そうか。それはこちらとしても嬉しいよ。」
懐かしい雰囲気がする。前いた村でもよくこうやって過ごしていた。
「あの、何で今日来たんですか?朝伝書鳥が来たので少し驚きましたよ?」
「そうか。ここに来た理由は、ガレット。あれからもう十年だ。何か、思い出したことはないか?」
聞かれたのは私の村の話。
「私があの日のこと思い出したら気分悪くなること、知ってますよね?聖なる選別のせいで村がなくなったってことも。」
「ああ。」
「聖なる選別を主導するのは主に王家の人間。つまり、あの村を潰したのは王家ということになる。」
「主導するのが王家なのは知っているよ。でも、王家直々に現地に向かうことはない。私が知りたいのは現地に誰がいたのかなんだ。」
「そんなこと、覚えてないですよ。そもそも聖なる選別の対象になった人間は差別対象なんです。そんな口に出したくないんですけど。」
そう。聖なる選別はこの国に住む住民全てが忌み嫌う。言ってしまえばとてつもなく大きい規模の村八分なのだ。
「分かっているよ。だけど、あの村は本来聖なる選別の的にはならないんだ。的になっている時点で何か理由があるはず。」
「え、そうなんですか?聖なる選別は、この国に存在する土地・人に全て適用するって言ってましたよ?」
「いや、それは違う。あの村は、」
始業時間の鐘がなった。
「あ、私行かなきゃ。ヤンドールさん。また、思い出したら言いますね。」
「ガレット...すまない。私は、全て知っていたのに。」