第一章 17話 救世主
「ウェズ...」
目の前で人を失ったのはこれで二度目だった。
「あ、アレなんじゃない?次の扉。」
金属製のいかにも重さな扉。恐らくこれが最後だろう。
「多分、これが最後よ。向こうに多分、ヤンドールがいる。」
「この、向こうに...」
やっと、会える。ヤンドールさん!
すると誰かが手を叩く音が聞こえ、誰かが近づいてきた。
「いや〜凄いね。ここまで進んでくるなんて。本当に凄いよ!」
「まさか、リリス!」
「そ♡リリスだよ。さっき振り♡」
さっきも思ったけど布面積少なすぎゃじゃない?足は全部見えてるし、上半身なんかそれもう水着デショ。
「あ〜あ。軍人さん死んじゃったんだ。折角仲間にできると思ったのに...ショック。」
「仲間?ウェズが仲間?お前達の?冗談じゃないわ!」
ナオミはリリスに火炎魔法を放った。
「おっとっと〜。ダメだよ?背中に傷が付いてるんだからさ。」
「あなたが、黒幕?全ての。」
「どっちだと思う?いや〜今まで待った甲斐あったな〜。そこの、ガレット?の村が焼き討ちになってからもう随分経ってるもんね♪」
「待ってよ。村を、焼いたのって、」
「村を直接焼いたのは私じゃない。私達が話を騎士団の連中にリークして焼いてもらってたってワケ♡」
は?村を焼いたのは、コイツらって、こと?何、それ。
「いや〜良い景色だったよ?人の阿鼻叫喚、断末魔。逃げ惑う人たちに、次々と倒れる人たち。アレは圧巻だったよw」
良い、景色?人が、痛くて、叫んでるところがいい景色?
「面白かったな〜。って事で、あなた達も〜。」
死んでくれない?
リリスは両手から黒い茨を出した。
「この茨の棘で全身穴だらけだよ〜。」
どんな鋼鉄も効かない硬い棘。
「ガレット!」
ガレットの前に出たのは背中に傷を負ったナオミだった。
「ナオミさん!」
ズル...ナオミは地面に倒れた。
「キャハハハハ!良いねぇ!もっと、もっと血を魅せてよ!」
何で、こんな仕打ちを、
すると上から黒い影が突出した。
“頭を少し屈みなさい。ガレット君。”
言われるがままに頭を屈ませたガレット。
リリスの頭に黒い影の踵が直撃した。
「イッダ?!」
「誰、」
現れたのは白いローブを見に纏った人物。
「遅れてしまいましたね。もう大丈夫ですよ。」
「学園長?!」
「ジェナ。酷い怪我ですね。治癒します。」
「あり、がと。」
学園長はナオミに回復魔法をかけた。
「何で、誰よアンタ!この、この私の頭をかち割るなんて!」
「いやはや、我が愛し学び子のピンチに駆け付けなければ、教師失格でしょう。」
「愛し、子?」
「愛し学び子。我らは、学園の生徒をそう呼ぶんです。」
「デール来るの遅すぎでしょ...」
ナオミは服についた埃を払った。
「ナオミさん!大丈夫なんですか?!」
「ん?うん。デールのおかげでね。本っ当にお・そ・す・ぎ!」
ナオミは学園長に指を差した。
「すみません。まさか、共...仲間が逝ってしまうとはな。」
「ウェズが逝っても、私たちは止まらない。止まらない。」
「えぇ。」
さっき学園長、デール??さん?が仲間の前に何か言いかけてたような...気のせい?
「ようやく、会えましたね。リリス・ワーキンズ。」
「私の名前、知ってるんだぁ。まぁ良いや。」
リリスは両掌を床に向けた。
「ちょっと遊ぼうよ♡」
すると部屋の床が灼熱の炎に包まれた。
「ど〜お?この暑いの。我慢できる?」
業火に囲まれた3人。
「暑いですね。ですが、私の敵ではありません。」
学園長は右足を大きく踏み込んだ。
「古来より出し龍よ。目の前の業火を消し去れ。水龍之鉤爪。」
目の前に広がった業火は瞬く間に消化された。
「凄い...」
「何で、なんで消えるのよ!こんなの、チートすぎる!」
どうやらリリスは自分の技に自信を持っていたのか逆ギレし始めた。
「チート?褒め言葉として受け取ります。」
「ッチ!」
凄い露骨な舌打ち...
「良いわ。少し、本気を出してあ・げ・る。」
ズドン 3人は“何か”に押しつぶされそうになった。
「な、何?!重力操作!?」
「フフ。押しつぶされるが良いわ!」
あまりの圧にガレットは膝をついた。
「圧が、凄い。」
ガレットはまだ立っている2人を下から見ていた。
(私が旅に出てた数年で、何をやってきたのよ...)
「まだ、いけますね。」
「ええ。勿論。」
「フフ。悪あがきは辞めておいた方が良いわよ?」
「悪あがき?それはあなたの方でしょう。」
「はぁ?」
学園長は両手から粘り気のある糸を出し、リリスを拘束した。
「な!?何してくれてんのよ!解けないじゃない!」
「我が仲間の罪は重い。暫しそこで大人しくしていることです。」
3人はリリスの真横を素通りしていった。
「無理よ。次の部屋にヤンドールはいない。」
「は?次の部屋からヤンドールさんの気配するんだけど?」
「アンタ達天井見た?」
3人は天井を見た。
「?!?!?!?!」