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第一章 13話 旅の始まり

 「私の、昔の話。」

それはあの村での話だ。

「昔の話って、お前前にそれ言おうとして気分悪くなっただろう?言わない方が、」

ガレットは首を横に振った。

「私が、言いたいから。私ね、聖なる選別(ホーリーソーティング)の生き残りなんだ。」

聖なる選別(ホーリーソーティング)って、魔女狩りの?」

「ええ。私が来た村は聖なる選別(ホーリーソーティング)によって滅んだ。私以外、皆んないなくなった。目の前で。」

アルスは自身の右手拳を強く握った。

(家族を、失った?)

「多分、去年の林間合宿で私を狙った理由は、それだと思う。」

「生き残りが、いるから、処分しようと?」

「多分。」

尚更拳を強く握った。心の底から湧いたのは憎悪。

「お前の村は、極端に変なコトをしてはいないのだろう?」

「うん。何も、してない。」

何もしていないのに、村一つを滅ぼすだと?何を考えているんだ!

「私は、家族の仇を、村の皆んなの仇を討つために、強くなりたいんだよ。」

仇討ち。それが表すことはただ一つ。謀反(クーデター)だ。

「これは、この国の全てを変えるコトを意味する。だから、私はあの家を出なきゃいけないのよ。」

危険に晒すことになるのは分かっている。

大切な人だからこそ、守りたいのだ。今まで、側に居てくれたから。

「私は、何が原因であの村が滅ぶことになったのか。それを調べたい。」

「一人で全部調べるつもりなのか?」

「そうだよ。これは、私の復讐なんだ。」

ガレットはアルスに背中を向けた。

「ごめん。アルス。そして、ありがとう。」

「ガレット!」

その場から姿を消した。腕を咄嗟に掴もうとしたが上手くすり抜けられたようだ。

「...クソ!」


ガレットが向かった先は嘗て自分がいた村。

「ヤンドールさん。来ました。準備は、できています。」

「おお、来たのか。卒業おめでとう。覚悟はできているな?」

「はい。」

ガレットの意志は固くなっていた。

「行くぞ。我らの、」

仇討ちに。

黒幕の尻尾を掴むために旅を始めた。


ーとある丘にある城にてー

「ほほぉ、動き出したのか。」

「そのようですね。」

“ある人”と幹部リリス・ワーキンズはワインを飲んでいた。

「事実を突き止めたところで、何も変わらない。目の前にあるのは残酷な事象のみ。」

「彼らは気づいていないのでしょうか?」

「いや、二人いる。魔法使いと学園長だ。」

「全てを、知っているのはその二人だけだと?」

「ああ。本当に、馬鹿なヤツだな。」

全ての真実を知ってなお、教えないだなんて。

「愚かだ。本当に。」

「そうですね。」

「君にはすまないが黒幕をやってもらう。良いな?」

「ええ。勿論。」

楽しませてくれよ。

「我が片割れ。」

 

時の流れは残酷也。数年が経過したのだった。


旅を始めたガレットとヤンドール。山を越え、川を下り、谷を渡った。

今はアルンズ山脈の途中である。

「ガレット。もうすぐだ。次の目的地。」

「分かって、ますよ。」

膝が痛くなってくる。

 

山の少し進んだところには少し開けた場所があった。

「ここが、目的地。」

ウィンディー村だ。

「ここには私の旧友がいてな。今日世話になることは既に連絡を入れている。」

わ〜おさっすが〜。

「お〜!ヤンドール!久しぶりだなぁ!」

走ってきたのは何やら初老の男性。

「隣が、例の女の子か。」

「ああ。」

「う〜む。別嬪さんだな!」

初老の男性に案内され中に入っていった。

陽光が差し込み、空気が綺麗。まるで、あの村のよう。

「空気が綺麗...」

村の中には小型の魔獣が飛んでいたり、子供達が走り回っていたりだった。

「あの、村みたい。」

「ガレット。私は村長と話すことがあるから奥に行く。村の中をまぁ歩き回っていろ。」

「はい。」

突如散策することになったガレット。


「村長。いるか?」

「いるさ。さあ、奥へ来い。」

何やら怪しげ雰囲気の部屋を進んだ。

「で、なんのようだ。いきなり。」

「あの子の、“魂の色”はどう見えた?」

「どうって、些か凡人には見え難い。あの娘は一体なんだ。ヤンドール。」

「あの子は、私の、」

「そんなことはもう知っている。アレは、大きなモノだ。そんなの一般人から生まれるわけない。」

「そんなの私が1番聞きたいさ。」

あのようなどでかい魂が生まれ変わることがそもそも信じられない。

「...”全てを知る者(オール・ノー)”。偽りの名を持ってまで執着する理由は何だ。」

「その名で呼んでくれるなよ。」

聖なる称号(ホーリーアカウント)だぞ?もっと喜ばないのか?」

「私は、そんな腐った名前嫌いだ。全部知ったところで何も救えない。」

「そうか。...まぁ良い。大凡検討はついた。」

ヤンドールは座っていた座布団から立った。

「世話になった。」

その場を立ち去ろうとしたが呼び止められた。

「暗雲が迫っている。あの娘のコトを守りたいなら、立ち向かえ。さもなくば、魂が崩壊するぞ。」

そのまま去った。

「立ち向かわないものに、明日なんか来ない。分かっているはずだろう。」

聖なる称号(ホーリーアカウント)

・この世界における至高能力(スキル)の総称

・存在は極秘であり、一部貴族又は特例の人物のみ認知している

・行使したら効果は絶大であるが命の保証はない

・行使すれば自身の魔力を大量に消費するため文字通り命を削る諸刃の剣である

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