第一章 10話 尋問紛い
ガレットとナオミは客間に入った。
「あ、あの、今から何を聞かれるんですか?」
「ん〜?緊張してるの?」
ナオミは椅子に腰掛けて言った。
「そりゃあするでしょう?あなた初対面ですし...」
「そんな気張らなくてもいいからさ、とりあえず座りなって!」
勢いよくガレットの肩を叩いた。
「わ、分かりましたよ...」
ガレットは椅子に腰掛けた。
「んで、何から聞こうかな〜。」
バインダーのようなものをカバンから出して捲った。
(何を聞かれるんだろうか。)
「え〜っと、これだ!ガレット。あなたは何故あの場で暗黒羅刹狂乱と冥府王の逆鱗を使えたの?」
「何でって、あの場では最適解だと思っていたから使っただけですけど?」
「最適解だからって、この二つの魔法は一般人が知るわけないのよ?危険度も高いし。」
へ〜あの二つの魔法危なかったんだ。私がいた村だと使ってる人いたんだけどな。
規格外の場所で人間が育つと思考回路も規格外になるのだ。
「あの、私が過去にいたところでは普通に使っていたんですけど?」
「普通?!嘘でしょ?!ありえない、この魔法は軍部でも上部の奴らか王家の人間しか知らないはずよ。」
「もしかしたら私の村の先祖は軍部なのかも知れませんね。」
いや、仮にそうだとしても有り得ない。この魔法は外部の人間に漏らすのは御法度。例えそれが家族でも。この子、一体何者なの?
「ナオミさん?」
見た感じ魔力は一般人より少し多い程度。強すぎず、弱すぎない程度ね。
「あの、まだ聞くことってありますか?」
「ん、あ〜あるよ。ガレットが来た村って、どこかな?良ければ教えてくれる?」
私が来た村... 炎に包まれ家屋が倒壊。人の断末魔が轟き、目の前で広がる親しい人間の血まみれの姿。
(頭痛くなってきた...)
高等魔法が飛び交い、次々に倒れていく人たち。思い出すと気分が悪くなる。
「ガレット?」
(母さん、父さん、サーレット、ナユレット。ごめん、ごめんね。)
思い出せば思い出すほど家族へ謝りたくなってしまう。
「汗かいてるわよ?大丈夫?」
「あ、あ、」
目の前がグルグル回ってきた。
「...もう良いわ。ガレット。言わなくていい。」
「すみ、ません。気分が、」
「こっちこそいきなりごめんね?今日はもう帰るわ。」
ナオミはガレットの背中を摩った。
「はぁはぁ、」
(これだけ息が荒くなって魔力が揺れないってことは、心理的な事が原因か。って事は昔いた村でのことがトラウマになってるのね。これは、調べるしかないのか。)
「部屋に行こうか。ガレット。」
ナオミはガレットなら肩を貸して部屋のドアを開けた。
「ガレットに変なこと聞いてないだろうな?」
「アルス君そんなに目つき悪くさせないでよ〜。」
「アルス?」
(凄え汗かいてるじゃねぇか。絶対変なこと聞いたなこれ。)
「アルス君悪いんだけどガレット部屋に運んでおいてくれる?私のこの後用事があるのよ〜。」
「あっそ。なら早く帰れ。」
ガレットはアルスの肩に移った。
「じゃ!」
ナオミは手を振って去っていった。
「はぁ。全く。」
(マジでヤバそうな過去もってそうだな。苗字は確かリンズだったな。珍しいから結構良いところなのかな。調べるか。)
ナオミは一度学園に戻っていた。
「お、ナオミではないか。」
「ウェスタン大佐!」
「ガレットは、どうだった?何か掴めたか?」
「一つだけ分かりました。」
「何だった?」
「何故あの場で暗黒羅刹狂乱と冥府王の逆鱗を使えたのか。理由があの場で最適解だからと思ったから、らしいです。」
「最適解、か。あんな化け物じみた魔法を使うのが最適解とは...中々狂っているな。あ、そうだ。ガレットの出身地は?何かなかったのか?」
「それなんですけど、何かトラウマ?があるようで分かりませんでした。」
「トラウマ、か。」
「途中から汗が出ていたので相当ということしか分かりませんでした。」
「そうか。分かった。ありがとう。」
ナオミは去っていった。
(汗が出るなんて何があったのだ。ガレット・w・リンズ。)
「ガレット...」
アルスはガレットを部屋に運びベッドに寝かせた。
(昔から過去にいた村のことは何も話さない。それほど過酷な状況だったのか。)
「うぅ、父さん、母さん。」
掠れた声で魘されていた。
(魘されているとは、な。確かここに来てすぐの時は魘されていたな。最近はそうじゃなかったから、再発?でもしたのか。)
そのままガレットは眠り、アルスは部屋を出た。