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第9話 新しい可能性

 レオナール達はフェンリルの"ルーン"と共に奥地へと向かった。 奥地に向かう途中、度々ゴブリンに出会ったがルーンが瞬殺する為レオナール達の出番はなかった。 レオナール達は、今後奥地に居るルーンに会いに来る為ここを往復しなくてはいけないと一層気合を入れて特訓に励むのだった。


 ルーンの住処に着くとさっそくとばかりに特訓を始めたレオナール達だった。 ゼフィルより圧倒的に強いルーンだが、ちゃんと相手の事を考えて加減をしてくれる為、レオナールとシレンにとっていい特訓になっていた。


「さすがルーンだね!いい特訓になったよ!」


「(そう言ってくれると教え甲斐があるよ!)」


「バウバウ!(さすがお母さん!)」


「ルーク、僕たちはそろそろ帰るよ」


「(ほう、もうそんな時間か? 二人と過ごしていると時間が進むのが早いな)」


「バウバウバウー(お母さんまたねー)」


「じゃあねルーンまた来るよ!」


「(ええ、待ってるよ!)」


 ルーンとの特訓を終え街に帰る途中数度ゴブリンの襲撃にあったが、難なく撃退できるようになっていたことが嬉しくなっていた。 家に着いたレオナールは、フェンリルをテイムした事や定期的に鍛えてもらう事をアルバートに説明したのだが、それを聞いたアルバートは自身も会ってみたいと言い出した。 レオナール自身も会わせてあげたいと思ってはいたが、勝手に決めることが出来ない為今度行ったときに聞いてみると言う事で落ち着いた。


「レオナールはすごいな! フェンリルも従魔にしちゃうなんて!」


「僕は従魔にして家族が増えたみたいで嬉しいと言う気持ちでいっぱいです!」


「あのフェンリルをテイムしてそう言えるレオナールは流石だと思うよ!」


 アルバートと会話していると益々会ってもらいたいと強く思うレオナールにシレンも会話に混ぜろと突撃してきた。


「バウー!バウバウ? バウバウン!(主様ー!お母さんの話? ボクもする!)」


「レオナール、シレンはなんて言ってるの?」


「ああ、シレンのお母さんの話をしているのに気づいて話に入りたいらしいです」


「そうなのかぁ。 でも、僕には何言ってるのか分からないしなぁ」


「シレンも【念話】が使えたら一緒に話せるのにね」


「バウゥ。バウ、バウバウ!(そうかぁ。でも、ボク頑張る!)」


「そうだね!もしかしたら使えるようになるかもしれないしね。 一緒に頑張ろう!」


 そんな会話で盛り上がっていたが、時間が大分経っていてその日は解散となった。 次の日、アルバートは荷物を持ちレオナールの部屋に来ていた。 アルバートは、ゼフィル達にレオナールに関わるなと散々言われたが、聞く耳を持たなかった為、屋敷では肩身の狭い思いをしていたが、レオナールの事を冷遇する事は出来なかった。 そのため、アルバートは屋敷を出て離れでレオナールと暮らすことにした。


「レオナール今日から僕もここに住むことにしたよ!」


「兄様…… どうして?」


「屋敷に居るのが嫌になっちゃって。 レオナールは僕がここに住むのは嫌かい?」


「嫌じゃないです‼ けど、よくあの人たちが許してくれましたね?」


「まあ、色々あったからね」


「……そうなんですか? でも、兄様が来てくれてうれしいです!」


「これからよろしくね!二人とも」


「はい!」「バウ!(うん!)」


 アルバートが一緒に住むことになり、みんなで街に食材などの買い出しに行くことにした。 最近は、食材などの補充も来なくなり、レオナールは冒険者活動で得た報酬などで生活していたこともあり、アルバートに街を案内していた。 アルバートもほとんど屋敷から出た事が無く、街がどんな感じか知らず喜んで一緒に行くことにした。


「兄様!どこか行ってみたい所はありますか?」


「街にはあまり来た事が無いからゆっくり見ながら探そうかな?」


「分かりました。 みたい所が有ったら遠慮なくいってください!」


 楽しそうに色々な場所を見ていると、アルバートが自分も冒険者登録をすると言い出した。 その言葉に驚いたレオナールは理由を聞いた。


「!……いきなりどうしたんですか兄様?」


「いや、色々見てみて思ったんだけど、このままじゃレオナールにばかり負担を掛けることになっちゃうから自分でも働こうと思って」


「そんな事考えて居たんですか? 兄様にこれまでして貰ったことを考えると、全然気にしなくて大丈夫です!」


「家族なんだから当たり前の事だし、それで何もしないなんて絶対駄目だ!」


 理由を聞いたレオナールは納得して皆で冒険所ギルドに向かうことにした。


 ギルドに着いた三人は、ソニアのもとへ向かった。 ソニアは、レオナールが来た事に気づき今日は何しに来たのかを聞きに近づくと見た事の無い青年が目に入った。


「レオナール君今日は依頼を受けに?って、そちらの方は?」


「今日は依頼ではなく僕の兄が冒険者登録をしたいと言う事で一緒に来ました」


「そうだったのね!じゃあ書類を持ってくるから少し待っててもらえる?」


「分かりました」


 そう言ってソニアは登録に必要な書類を取りに戻った。 少ししてソニアが戻って来て、アルバートに書類を渡し、受け取ったアルバートはすべて記入し適性検査も通過し、無事登録ができた。 適性検査の際、アルバートのスキルを見たソニアは驚きの声を上げていたのだった。


「では、登録完了しました。 私は、受付嬢をしているソニアと言います。これからよろしくお願いします。それにしても、すごいスキルを持っていますね!」


「アルバートです。こちらこそお願いします。 でも、僕からしたらレオナールの方がすごいと思います!」


「仲のいい兄弟なんですね。 ところで、この後はどうしますか?」


「今日は登録をしに来ただけなので、帰ります」


「分かりました。 では、またお待ちしています」


 冒険者ギルドを後にし、家に帰っていった。 部屋に着いたレオナール達は、明日の事について話し合いをして、レオナールは森に行きアルバートは屋敷の方で勉強する事にした。 その日は、明日に備えて寝ることにした。


 レオナールとシレンは森に向かっていた。 奥地に行くにつれ、ゴブリンやウルフ、オークなどに遭遇していた。 鍛えて強くなったとはいえ、オークには苦戦していたがルーンの助けがあり難を逃れていた。


「ルーンありがとう!助かったよ」


「(こんなのお安い御用よ!)」


「バウバウバウー!(お母さんありがとー!)」


「ところで、ルーンに相談があるんだけど?」


「(なんだい?改まって?)」


「僕の兄様をここに連れて会ってもらいたいんだけど平気?」


「(そんな事かい!レオナールが信頼している人間なら構わないよ!)」


「本当! じゃあ明日連れてくるね!」


「(あらあら、急だね? そんなに嬉しそうにしちゃって!私は全然かまわないよ。)」


「ルーンありがとう!」


 ルーンの許可をもらったレオナールは、嬉しさのあまり明日来ると即座に言ってしまっていたが、それでもルーンは嫌な顔をせず許可を出した。 レオナールが喜んでいる横でシレンもルーンに相談をしていた。


「バウ!バウバウバウンバウ?(お母さん!ボクも相談があるんだけど?)」


「ガウガウ?(なんだい?)」


「バウバウンバウバウ!(ボクも【念話】使いたい!)」


「ガウガウンガウガウガウ(もう少し成長したら使えるようになるよわよ)」


「バウ!(本当!)」


「ガウ、ガウ(ええ、本当よ)」


 もう少しで使えるようになると聞いて、シレンはいつも以上にやる気を出しゴブリンを見つけては突撃していった。それを近くで見ていたレオナールとルーンはやれやれと言う感じで手助けに入っていった。


 特訓を終え家に帰ったレオナール達は、明日アルバートもルーンに会いに行く事を説明した。 それを聞いたアルバートはすごく喜んでいる様子だった。 初めて見るアルバートの喜ぶ様子に驚くレオナールとシレンは、どうにか落ち着かせることが出来たが、我に返ったアルバートは先ほどの行動を思い出し、恥ずかしそうに顔を隠したのであった。


 レオナール達は、ルーンに会いに行くため森の奥地に向かっていたが、森に来るのが初めてのアルバートはレオナール達からはぐれないようにするのがやっとだった。 森の中心部を進んでいるとゴブリンに遭遇した。慣れているレオナール達は難なく撃退していたが、初めてのアルバートは何もできずにいた。 その後、数度ゴブリンと遭遇したが、そのころにはアルバートも戦闘に参加できるようになっていき、アルバートの魔法も加わりいつも以上に進むのが早くなっていた。


 ルーンの住処に近づくにつれオークにも遭遇するようになってきたが、魔法が使えるアルバートがいた為何とか倒すことが出来た。 オークを自分たちだけで倒せた事を喜んでいると、ルーンが迎えに来ている事にいち早く気づいたシレンが吠えながら向かって行ったのを見てレオナールも駆け寄っていったが、アルバートはどうすれば良いか分からずに恐る恐る近づいて行くのだった。


「ルーンまた迎えに来てくれたの?」


「(ええ、前回オークに苦戦していたから様子を見に来たけど大丈夫だったみたいね)」


「うん!今日は兄様も居たから何とか僕たちだけで勝てたよ!」


「バウ! バウバウバウバウ!(そう! 昨日より楽だった!)」


「(そうね、あなたの魔法もすごかったわ!)」


「ルーン、この人が僕が合わせたかったアルバート兄様だよ」


「アルバートです。よろしくお願いします!フェンリル様」


「(フェンリル様だなんてよしとくれよ!ルーンでいいよルーンで!)」


「はい。じゃあ、ルーンって呼ばせていただきます!」


「(レオナールの兄なんだろ?敬語もいらないよ!)」


「分かった」


 ルーンにアルバートの紹介も終わり、いつも通り特訓を始めようとしたが、ルーンが待ったをかけた。 止められたレオナールが首を傾げているとルーンが説明を始めた。


「(さっきの戦闘を見て思ったのだけど、アルバートは他の魔法は使えないのかい?)」


 自分に話を振られると思っていなかったアルバートは少し驚いた。


「……え!僕ですか? 今使えるのは、『ロック バリア』『ジオマンサーズ グラスプ』『ストーン アロー』『ファイヤー アロー』『テンペスト アロー』『ミスト ヴェール』『ウォーター アロー』位かな? 他の魔法はまだ覚えてないけど?」


「(そうなのかい?それなら、私が魔法を教えてやろうかい?)」


「本当!? でも、そうするとレオナール達の特訓が出来ないんじゃ?」


「(魔物と戦いながら覚えてもらうから問題ないよ! やっぱり、実戦の方が覚えやすいからね!)」


「分かった!そういう事ならお願いするよ!」

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