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第6話 森での出来事

 次の日、初めての従魔に嬉しくなり今日は何もせずにシレンと遊ぼう!と決めたレオナールは、さっそくとばかりにシレンを呼んだ。


「シレン今日は遊ぼうか?」


「バウ? バウバウ(遊ぶ?何それ)」


 昨日まで野生で生きていたシレンは遊ぶと言う事を知らず、頭をかしげていた。 そんなシレンを見て笑いながら「分からないならやってみよう!」といい何をしようか考え始めた。


「何して遊ぼうか? とりあえず庭に行くか」


「バウ!(うん!)」


 シレンと庭に来たレオナールは落ちていた木の棒を手に取り「これを地面に落ちる前に取って持って帰って来て!」と指示を出した。 シレンと遊んでいると、アルバートが此方に向かって来るのが見えた。


「何をしてるんだい?レオナール」


「兄様!、今日は休みにしてシレンと遊んでいるのです。 ね!シレン!」


「バウ!バウバウバウゥゥン!(うん!遊ぶの楽しい!)」


「ははは、そうか楽しいか! 兄様はどうしたのですか?」


「僕はレオナールが楽しそうにしてたから何してるのかなぁって、見に来たんだけど、楽しそうだから僕も混ぜてもらおうかな?」


「いいですよ! 兄様も一緒に遊びましょう!」


 アルバートも加わって遊びの幅が広がった。 レオナールは前世の知識を使いアルバートの魔法で色々な障害物を作って競争などして遊んだ。 さすがにシレンにはスピードで勝てなかったが、アルバートには勝てていた。


「レオナール早すぎるよぉ……。 こんなに成長していたなんて……」


「そうですか? ここまで成長できたのも兄様と冒険者になったお陰です‼」


「いやいや、レオナールが努力して頑張って来た証拠だよ!」


「そう言ってもらえると嬉しいです」


 思いっきり遊んだためかシレンは眠そうにしていたので、部屋に戻ることにした。


「レオナール今日は楽しかったよ! もしまたこういう事をする時は呼んでね!」


「もちろんです! 僕も今日はすごく楽しかったです。 でも、魔法で遊具を作らせてしまったので疲れませんでしたか?」


「こっちも、魔法の練習になったから有難かったよ!」


「そういってもらえてよかったです」


 二人で少し雑談してアルバートは屋敷に帰っていった。 シレンは部屋に着くとすぐにベットで寝てしまった為、残されたレオナールは明日の予定を考えながら眠りについた。


 翌朝シレンに起こされ目が覚めたレオナールは、森に行く準備をはじめ冒険者ギルドを目指した。 ギルドに着き中に入ると、他の冒険者やギルドスタッフが慌ただしくしていたのでソニアの所へ行き何か起こったのか聞くことにした。


「ソニアさん、おはようございます。 何か慌ただしくしてますがどうかしたんですか?」


「ああ、レオナール君、おはよう! 理由は分からないけど、昨日から森でフェンリルが暴れてるらしくて今調べてる所なの!」


「えぇぇぇ‼フェンリルが暴れてるんですか!? それじゃあこの街も危険なんじゃ!」


「そうなの!だから今Aランク冒険者に調査しに行ってもらってる所なの!」


「今日は依頼受けられそうにないですね?」


「そうね、今の状況だと危険すぎるから森に行く依頼は受けれないけど、街の中での依頼なら大丈夫よ!」


「じゃあその街の依頼受けます!」


「そう? それは有難いわ!早速手続きしちゃうわね! 街の依頼ってやってくれる人が全然居なくて困っていたのよ。 森での依頼に比べて報酬が少なくて……」


「そう言う事なら、森に行けるようになるまで街の依頼をどんどんやっていこうと思います!」


「本当!すごく助かるわ! 今、色々持ってくるわね! それじゃあまずこの依頼をお願い出来るかしら?」


「わかりました! では行ってきます!」


 レオナールは、街の住人の依頼をこなしていくことにした。 住人の依頼をやって行く内に、色々な人に感謝されレオナールの交友関係が増えていき、ギルドに向かう際よく挨拶されるようになっていた。 そんな日々が数日続き、その日も街の依頼を受けようとソニアの所に向かうとやっと森への依頼が解禁されたと説明された。


「レオナール君、おはよう。 やっと森の状況が落ち着いてきたので、森への依頼が出来るようになったわよ!」


「本当ですか! 薬草採取の依頼はありますか? 森が封鎖されてて薬草が不足していると街の人に頼まれちゃいまして」


「そうなんですね! たくさんありますよ!」


「片っ端からやっちゃいます!」


「わかりました。 今手続きしちゃうわね! では、気を付けて!」


「はい!行ってきます!」


 レオナールは薬草採取の依頼を十件受け、シレンと一緒に森へと向かった。 森に着いたレオナールは早速薬草採取していく。 薬草採取を終え何時も通り中心部でゴブリンを狩っていると遠吠えが響き渡った。


「ウォォォォン」


「なんだ?今の遠吠えは?」


「バウ? バウウ!(うん? お母さん!)」 「ウォォォォン」


 いきなりの遠吠えに〔何だろう?〕と考えていると、シレンの言葉を聞いて思考が停止していた時、シレンも遠吠えを返しその遠吠えを聞いて我に帰った。


「シレン……もしかして今お母さんって言った?」


「バウ! バウウン バウ バウウウン!(うん! お母さんが僕を探してるみたい!)」


「え!…… お母さんが探してる!じゃあ、急いで向かわないと!」


「バウ! バウ バウウン バウ!(大丈夫! 今ここに居るって呼んだから!)」


「え! 呼んだ!」


 レオナールとシレンがそんなやり取りをしている内に、その場所に猛スピードで向かって来る者がいた。 


「グルゥゥゥ」


「えっ!…… フェ、フェンリル!どうしてこんな所に‼」


「(よくも可愛いい我が子を! 許さん‼)」


「頭の中にいきなり声が! 我が子?……もしかして、シレンの事!?」


「(許さんぞ人間! 我が子を攫い剰え森に戻って来るとは余程死にたいようだな!)」


「待って!僕は攫ってなんて無い!」


「ガウ!ガウウン ガウ!(坊や!今助けてあげるからね!)」


 お前の言葉など聞かんとばかりに、攻撃しようとしたフェンリルだったが、シレンによって阻止された。


「バウゥゥゥ!(ダメェェェ!)」


「「え!?(え!?)」」


「ガウ! ガウガウガウン!(坊や!何故こんな奴を庇う!)」


「バウ! バウバウバウン!(お母さん! ご主人は悪い人間じゃ無い!)」


「ガウン!(何を馬鹿な事を!)」


「バウ、バウバウバウン、バウバウーン!(僕が、ゴブリンに襲われている時に、助けてくれたんだ!)」


「ガウ!(何!)」


 シレンのお陰で襲われずに済んだレオナールはフェンリルに事情を説明した。 事情を説明し終えたレオナールは、周りを見ると大分暗くなっていた。 もう、時間が遅いことに気づき〔どうしよう!〕と慌てているレオナールを見たフェンリルが問いかけて来た。


「(どうした?そんなに慌てて?)」


「いや、時間が遅く今からじゃ帰れないからどうしたらいいか考えてて!」


「(そんな事か! それなら、野営?と言うのをすれば良いではないか! 森に来る人間はそうするのであろう?)」


「それはそうなんだけど、野営なんてした事無いし道具も何も無いから無理だよ! しかも、お兄様とギルドの人にすごく心配かけちゃうと思うんだ」


「(道具等必要ないぞ!私のスキル【結界】を使えばいいだけだ!)」


「【結界】?そんなスキル持ってたんだ!」


「(ええ、それを使えばここらの魔物などは何も出来ぬ! だから、今日はここに泊まり明日朝一で帰ればよかろう! 魔物が活発化する夜にうろつくよりは安全だろう?)」


「そうだね……皆には心配かけちゃうけどその方が安全か」


 レオナールは野営することに決め、シレンが母親であるフェンリルに甘えている所を眺めながら疑問に思った事を聞いた。


「ところで、何でフェンリルさんと会話出来てるんですか?」


「(それは、我が【念話】で話しているからだ!)」


「そんなスキルもあるんですね」


「(ああ。 それと、遅くなったが我が子を救ってくれてありがとう。 知らなかった事とは言え、恩人を殺すところだった……すまぬ!)」


「!?、いえいえケガもありませんし大丈夫です。 親なら心配するのも分かりますよ……。 まあ僕の親は気にすることもしないだろうけど」


 レオナールの最後の言葉は聞き取れないほど小さかったがフェンリルには聞こえていた。 その後レオナールは、自分のこれまでされて来た事や今後の事等、これまで溜まっていた気持ちや感情すべてをぶちまけた。 朝から動きっぱなしだった為、疲れていたレオナールとシレンはフェンリルに寄り添いながら眠った。 そんな二人に優しい眼差しを向け、フェンリルも一緒に眠るのであった。


 翌朝目が覚めたレオナールは、急いで出発の準備をしているとフェンリルから声を掛けられた。


「(レオナールよ、我も従魔として一緒に連れて行ってはくれぬか?)」


「……えぇぇぇぇぇぇぇ‼」

「何言ってるのさ! 無理だよそんなの! でもどうしていきなり?」


「(我が子を救ってもらい、この子も付いて行くと言っておるし、昨日のそなたの事を聞き守ってやりたくなったのだ! 駄目か?)」


「いきなりそんなこと言われても…… ごめん、少し考えさせて。 また森に来た時には返事をするからそれまでは……」


「(分かった! その時にもう一度聞くとしよう! 絶対また来るのだぞ‼)」


 そう約束して、森を出発したレオナールとシレンは冒険者ギルドに向かって行くのだった。


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