第5話 冒険者
レオナールと親しい人はレオと略称で呼びます。
冒険者のレオンの名前をレイヴンに変更しました。
次の日、約束通りに屋敷にある役立ちそうな本を持って訪ねて来たアルバートを迎え入れレオナールの特訓が始まった。 レオナールは毎日欠かすことなくアルバートと訓練と勉強をしていくうちにイザックには勝てないものの、ボコボコにやられる事も泣く事も無くなった為、虐めがいの無くなったレオナールにちょっかいを掛けなくなっていった。
月日が流れレオナールが十歳になった時、レオナールはアルバートに冒険者登録をする事を相談していた。
「アルバート兄様、僕冒険者登録しようと思うんです!」
「レオナール本気なの? でも、どうしてそんな急に?」
「実は、ずっと考えていたんです。 今のまま十五歳まで家で特訓をしているより冒険者になって色々な人を見てもっとたくさんの事を出来るようになりたいなって」
「でも、冒険者は危険なんだよ? それこそ死んでしまうかもしれないんだよ? 僕は大切な家族にそんな危険な事して欲しくは無いと思ってる」
「ありがとうございます。 こんな僕の事を家族だと言ってくれるのはアルバート兄様だけです。 でも、後五年したら僕はここを追い出されますなので、今のうちに学んでおきたいのです。 心配を掛ける様なことは絶対にしません!」
「そんなことまで考えていたなんて…… 分かったそこまで言うのなら応援しない訳にはいかないな! 頑張っておいで! でも、絶対に危険な事をしては駄目だよ?」
「はい! では明日早速行ってきます! 相談に乗ってくれてありがとう兄様」
アルバートに相談して決心を固めたレオナールは明日に向けて早々に眠りについた。
翌朝支度をしていると、アルバートが訪ねて来た。
「兄様おはよう! 見送りに来てくれたの?」
「レオおはよう! それもあるけど十歳になったからこれ!」
アルバートに手渡されたものを開けてみるとショートソードが入っていた
「兄様これは?」
「プレゼントだよ。 武器もなしじゃやってけないだろ?」
「兄様ありがとう! じゃあ行ってくるね!」
「ああ、くれぐれも危険な事はするなよー」
鑑定の儀以来家から出ていないレオナールは初めて自分の足で街に行った。 街に着き冒険者ギルドまでの道のりを散策感覚で歩いていると冒険者ギルドが視界に入って来た。 ギルドの前まで来たレオナールは緊張した面持ちで一度深呼吸して扉を開けた。
扉を開けると中は大分賑やかだが、レオナールが入って来た時一瞬だけ全員の視線が集まった。 だが、入ってきたのが子供で興味が無くなったのかすぐに視線を戻した。 ギルドの受付に着き用件を聞かれた。
「冒険者ギルドへようこそ! 本日はどういった御用でしょうか?」
「冒険者登録をしたくて来ました。 一応十歳になったので大丈夫ですよね?」
「十歳なら大丈夫よ。じゃあ、スキルの適性検査の為この水晶に手をかざしてもらえる?」
言われた通り机に出された水晶に手をかざすと少し光った。 大丈夫か心配になり、お姉さんの顔を見ると笑顔で「大丈夫そうね!」と言われた。
「では、この書類に記入してね」
「分かりました!」
書き終わった書類をお姉さんに渡すと「手続きするからちょっと待っててね」と言われ帰ってきたお姉さんにギルドカードを渡された。
「お姉さん、このカードに書いてあるGって何ですか?」
「あっ、その前に自己紹介がまだだったわね!私ソニアって言うのこれからよろしくね!レオナール君。では今から説明させてもらうわね。 Gと言うのはランクの事で、ランクは全部でG~Sまであって、原則自分のランクの一個上までの依頼しか受注できないの。依頼に失敗された際には、依頼料の半分の罰金が発生するから注意してね。 他に何か聞いておきたいことはあるかな?」
「ありがとうございました。 宜しくお願いします。 じゃあ今受けれる依頼はありますか?」
「ちょっと待ってね、今受けれるのだと、近くの森で採取できる薬草10本の納品の依頼になるかな?」
「その依頼受けてみます!」
「では、手続きしちゃうね。 もしまた分からない事があったら聞きに来てね」
受付嬢から依頼書を受け取ったレオナールは「はい! では、行ってきます!」と言って嬉しそうに依頼に行くのだった。
レオナールは初めての依頼に張り切っていたはいいが、森の雰囲気に気後れしていた。 レオナールは魔物と遭遇した時を想定して、自分のスキル一覧を見ていると〔このスキルが使えるんじゃないか?〕と思った。
「そうだ!薬草採取なら【自然の加護】を試してみよう!」
【自然の加護】が発動し、周囲にどんな植物があるのか一目で分かるようになっていた。
「わぁ! こんな感じで見えるのか!早速採取しよう!」
先ほどの気後れが嘘のように依頼の薬草10本を集め終えたレオナールは初めて見る景色に、他にどんな植物が生えているのか探索を開始した。 【無限容量】を持っているレオナールはどんどん採取していき、気づいたときには森の中心部に入ってしまっていた。 その事に気づいたレオナールが戻ろうとした時、何かが近づいて来る音が聞こえ、視線をそちらに向けるとゴブリンが1匹こちらに突っ込んできていた。 初めて見る魔物に驚きはしたが、アルバートに貰ったショートソードをすぐ手に取り初めての魔物との戦闘をするのであった。
「わぁ‼ゴブリン!?」
「ギャアァァァァ ギャ?」
いきなりの攻撃に何とか対処できたレオナールだが、初めての実践と言うのもありいつもどうりの動きが出来ずにいた。 最初は戸惑っていたレオナールではあったが、数度の攻防で動きもよくなっていき何とか勝利する事が出来た。
「はぁはぁ、やっと倒せた!」
ゴブリンを倒したはいいが、登録したばかりのレオナールが処理の方法など知るはずもなくどうすればいいか悩んでいると、こちらに向かってくる複数の足音が聞こえて来た。 初めての戦闘で思いのほか疲れていたレオナールは〔また魔物か!?〕と思いすぐに戦闘態勢をとり、先手必勝と思い切りかかりに行くとそこに現れたのは四人組の冒険者だった。
「やぁぁぁ! え?」
「!? ま、待て。 俺たちは魔物じゃないぞ!」
現れた冒険者の先頭に居た男が難なくレオナールの攻撃を受け止め魔物ではないことを伝えた。 レオナールはその言葉を聞きすぐに武器をしまい「すみません」と謝っていた。
「いいよ、いいよ。 俺たちも不用意に近づいたのがいけなかったし。 俺はレイヴンでこいつ等がパーティーメンバーのデモン、ナイア、リュカだ。 ところで、坊主こんな所で何してたんだ? ギルドで見かけた事無いしその見た目だと新人か?」
「はい! 今日登録したばかりのレオナールです。 それでさっきゴブリンに襲われて何とか倒せはしたんですがどう処理すればいいか分からず悩んでいたんです」
「え? 今日登録したのにこんなところまできたのか!? 何か強いスキルが有るとかか?」
「いえ、スキルはテイムだけで従魔も居ません」
「テイムで従魔も居ない? 無謀なことするなぁ。 冒険者は命あっての物種だあまり無茶なことはするなよ! 後、ゴブリンは素材に成る所が無いから死体は埋めて討伐証明の耳だけ持って帰ればいいだけだ。 レオナールはもう帰るのか?」
「そうなんですね! ありがとうございます。 はい。 兄も心配してそうだし今日は疲れたのでこの辺で帰ろうかと思います!」
「それなら俺たちも帰る所だから一緒に帰るか?」
「いいんですか? よろしくお願いします!」
レオナールは先輩冒険者のレイヴン達と一緒に帰ることにした。 帰りながら色々な事を教えてもらってるとすぐにギルドに到着した。
「皆さん、今日は色々な事を教えてくれてありがとうございました!」
「レオももう無茶なことはするなよぉ」
帰り道色々な話をし仲良くなったレイヴン達にレオナールは"レオ"と呼んでくださいと言いすぐに打ち解けた。 依頼を終えてソニアの所に報告に行き、一緒にゴブリンの討伐証明を出すと最初は驚かれたが「無茶なことはしないでください‼」と叱られていた。
部屋に着き中に入るとアルバートが「お帰り!」と言ってきたので「兄様、ただいま!」と返すのであった。 アルバートに今日の出来事を話していると褒められたが、ゴブリンの話になるとここでも叱られてしまった。 その日は色々あり疲れた為かすぐに眠りについてしまった。
それから毎日のように依頼を受けているレオナールは冒険者ランクが上がりEランクになっていた。 今日も依頼を受けながら探索していると五匹のゴブリンが何かを囲んでいるのが見えた。
「なんだろうあれは?」
「「「ギャァ、ギャギャ、ギャァァ」」」
よく見ると子供のウルフを囲んでいた。 ウルフとは言えまだ子供なので見過ごすことのできなかったレオナールはゴブリンを倒しウルフの状態を見た。 最初は「ヴゥゥ」警戒していたウルフだが、薬を渡してくるレオナールに警戒を解いた。 レオナールは〔今の状態のウルフならテイム出来るかも!〕と思いスキルを使うとすんなりテイム出来てしまった。
「やった‼テイム出来た! 名前は"シレン"にしよう! 今日からよろしくなシレン!」
「バウ!、バウバウ!(よろしく!ご主人!)」
レオナールは【生物理解】を使い初めての従魔と嬉しそうに会話をしながら帰っていった。 ギルドに着き依頼の報告と従魔登録をソニアにお願いした。 ソニアは報告に来たレオナール見ると抱えてるウルフの子供に目が行った。
「レオナール君? そのウルフはどうしたの?」
「あぁ、森でゴブリンに襲われてたので助けてテイムしました! なので、従魔登録もお願いします!」
「そうだったの。 分かったわ、じゃあこの首輪についているプレートに名前を刻んで付けてあげて? それで登録が終わるから。 でもよくウルフを助けようと思ったわね?」
「分かりました!。 ウルフだからと言ってさすがに見捨てられませんよ!子供ですし助けられるなら助けたいんです‼ 襲ってこられたら戦いますけどそうじゃなければ手を差し伸べます‼」
「レオナール君は優しいのね! こんな人を主人にもてて貴方は幸せね?」
「バウ!(はい!)」
「あら? もしかして何を言っているか分かるの?」
「ははは、そうみたいです」
ソニアと少し雑談をしたレオナールは従魔のシレンと家に帰っていった。 家に着くと部屋で待っていたアルバートに先ほどと同じ説明をするのであった。