第3話 スキルと不安
その日の夜、落ち着きを取り戻し記憶の蘇ったレオナールは神様からもらったスキルを確認しようとしていたが、スキルを確認するには鑑定のスキルがないといけない事を思い出した。
「鑑定のスキルがないと確認できないしあの時貰っておくべきだったなぁ」
「神様がほかにも付けてくれると言っていたしどんなスキルが有るか先に確認しておきたかったんだよな」
二日後に迫った鑑定の儀を前に、独り言を言っていると目の前にゲームで出てくるようなウィンドウが出てきた。 「!?……なんだこれ!?」 驚きながらいきなり出てきたウィンドウをのぞき込むと自分のスキルが書かれていた。
「え!?……えぇぇぇぇぇ!!」
現れたウィンドウ詳細
名前:レオナール・シルバーレイク(5歳)
所持スキル
【言語理解】(隠): 異世界の言語を直感的に理解する能力を持ちます。言葉の意味や文法の構造を把握し、会話等をスムーズに行うことができます。
【自然の加護】(隠): 自然界の力を受ける能力。植物や動物との共感や治癒力の向上など、自然とのつながりを持ちます。
【農業セット】
【土壌改良】: 土壌の性質を改善し、作物の生育環境を整えるスキルです。
【加工術】: 収穫した作物を保存・加工する技術を持つスキルです。
【作物交配】: 異なる品種の作物を交配し、新しい品種を創出するスキルです。
【害虫駆除】: 有害な昆虫や害獣を効果的に駆除するスキルです。
【農機具の使い方】: 農業で使用する機械や道具を正しく操作するスキルです。
【テイム】:魔獣を仲間にし、共に戦うことができるスキルです。
【生物理解】: 生物とコミュニケーションを取る能力。動植物の言語や意思疎通が可能となり、仲間や敵との関係を築くことができます。
【生命探知】(隠): 生命体の存在や感情を感知することができるスキルです。
【鑑定】(隠):自分、他人、魔獣、魔物が持っているスキルや情報、物品の種類、品質、効果、材料などを確認することができます。
【隠蔽】(隠):自分の任意の情報を他人から見えないようにする。
【冒険者セット】(隠): 冒険者として必要な基本的なスキルが身につく能力。戦闘技術、探索能力、サバイバル術などが向上し、冒険の幅が広がります。
【創造の才能】(隠): スキルや物を創り出す能力。魔法や科学的な手法で新たな物体や技術を生み出し、社会や戦闘に革新をもたらします。
【運命の絆】: 特定の人物や仲間と強い絆を築く能力。共感や連携を通じて、相手との信頼関係や力の共有を強めます。
【錬金術】(隠): 物質を変換したり、新たな物質を創り出す能力。鉱石の精錬や薬品の調合など、錬金術の知識を持つことができます。
【魔法の錬金術】(隠): 魔法と錬金術を組み合わせた特殊な能力。物質の変換や創造、魔法の強化・合成などを行います。
【探索者】(隠): 地図作成や迷宮探索に長けたスキルで、未知の領域の探索や貴重なアイテムの発見を行います。
【無限容量】(隠):このスキルは、無限の容量を持っています。そのため、あらゆる種類のアイテムや装備品を時間経過無しに収納することができます。大きさや形状に関係なく、どれだけ多くのアイテムでも収納可能です。
「これは流石にやり過ぎだろ神様……」
「鑑定があって良かったけどこんなの他の人に見せられない。隠蔽で隠しておかないと!」
スキルとは、一般的に一人三~四個程で多い人で六個だ。 それに比べレオナールのスキル量は異常と言うほかなかった。「このままではまずい」と思ったレオナールは色々なスキルを隠蔽で見えなくした。
色々な事が一日で起こり流石に疲れたレオナールは眠りについたのだった。
朝起きるとドアがノックされた。 許可を出すとメイドが入ってきた。
「はい。どうぞ」
「おはようございます、レオナール様。お着換えのお手伝いに参りました」
「……いや、着替えぐらい一人でできるから大丈夫だよ!」
「いえ、これもメイドの仕事ですのでお手伝いさせていただきます。 すでに、旦那様方が食堂でお待ちですので」
前世が三十五歳だった為、何とも言えない顔であきらめるのだった。 着替えが終わり、転生してから初めてちゃんと会うため緊張した面持ちで食堂に向かった。
食堂に着くと家族の視線がレオナールに向いた。少し驚きながらも挨拶をするとゼフィル、アリアン、イザック、アルバートの順にあいさつをされた。
「!?……お、おはようございます。どうかしましたか?」
「いや、おはよう。 レオナール元気になって良かった!」
「おはよう、レオナール元気になってくれて良かったわ心配したのよ。さぁ、食事にしましょう!」
「おはよう、レオナール早くご飯食べようぜ!」
「おはよう、レオナール元気になって安心したよ!まずはご飯にしよ!」
レオナールが席に着くと皆で食事を始めた。 しばらくしてゼフィルが口を開いた。
「レオナール、明日は大事な鑑定の儀だイザックやアルバートのように期待しているぞ!」
「はい!」
凄く期待されてるけど、兄様達ってどんなスキルだったんだろうか?後で教えてもらおう!と楽しみにするのだった。 食事が終わり、ゼフィルは執務室へ行きイザック、アルバートは勉強するため食堂を出て行った。スキルの事などを聞くために、ついて行こうとした時、アリアンに止められた。
「お母様?」
「レオナール何処に行くの?」
「お兄様達について行ってスキルの事等聞こうと思ったんです。先ほどお父様がお兄様達のように期待してると言われたので」
「駄目よ、イザックやアルバートはこれからお勉強ですもの。 明日の事で不安なのは分かるけど貴方は病み上がりだし、お勉強が終わってから聞きなさい。 それまではお母様と過ごしましょう」
レオナールは「はい」と返事をしたが少ししょぼくれて居た。 そんなレオナールを見てアリアンは「じゃあ図書室に行きましょうか?」と提案するとレオナールは嬉しそうに「はい!」と返事をし「まぁ!ふふ」とアリアンは驚いたような呆れたような顔で笑っていた。
図書室に着き、本の多さに驚きながらも様々な本を持ってくるのであった。 アリアンは子供が読むような本を持ってくると思っていたが、レオナールが持ってきた本はどれも五歳の子供が読むものではなかったため「その本を読むの?」と聞くと「はい!」と元気に返した。
レオナールが持ってきた本は自国のアルディア王国の事や周辺国の事が書かれている本や魔物、魔獣、薬草、歴史など多岐に渡った本を読んでいた。だが、スキルの事が書かれている本はなかった。 そこで、アリアンに「お母様、スキルの事が書いてある本はないのですか?」と聞くとアリアンは「そうねぇ、そういった本は王家や教国が厳重に保管しているわ」と言われ今は諦めるしかなかった。
自国の事が書いてある本を読んでいるとシルバーレイク領の近くの森にフェンリルが居ることが書かれていたそれを見たレオナールは〔フェンリルが居るならドラゴンとかも居るのかな?〕と思いいつか強くなって仲間とかに出来たらいいなぁと考えていた。 そんなレオナールをアリアンは微笑ましく見ていた。
読書に夢中になっているといつの間にか時間がたっており、近くに勉強の終わったイザックやアルバートが居た。
「イザック兄様!アルバート兄様! 居たなら声をかけてくださいよ」
アルバートは「いや、余りにも真剣に読んでいたから声を掛けようか迷ったんだよ!」と言うとイザックは頭を縦に振っていた。
「そうだ! お兄様達の勉強が終わったらどんなスキルを持っているか教えてもらおうと思ってたんです」
イザックは「スキル? あぁ、明日鑑定の儀だったな!いいぞ」と言いアルバートも「いいよ」と言ってくれた。
レオナールは夕食を終え自室にて先ほど教えてもらったスキルについて「お父様に期待されるだけあるなぁ」と思いながら明日の事を考えるのであった。
《イザック・シルバーレイク(10歳)》
イザックのスキル
【魔法剣士】: 剣と魔法を融合させた戦闘スタイルを持つスキルです。
【魔法使い】(火・土): 魔法を操る能力で、様々な属性の魔法を使用できるようになります。
【神速】: 驚異的なスピードと反射神経を持ち、高速で移動したり、敵の攻撃をかわすことができるスキルです。
【騎乗術】: 動物や魔獣を乗りこなすスキルで、高速移動や戦闘時の機動力を向上させます。
《アルバート・シルバーレイク(8歳)》
アルバートのスキル
【魔術師】(火・水・風・土): 高度な魔法の扱いに長けたスキルで、様々な属性や効果を持つ魔法を使用し、戦闘や探索に活かします。
【付与術】
【強化効果の付与】: 他者の能力を一時的に強化することができます。
【属性効果の付与】: 他者の攻撃や能力に属性効果を付与することができます。
【防御効果の付与】: 他者の防御力を強化したり、ダメージを軽減する効果を与えることができます。
【賢者】: 広範な知識や洞察力を持つスキルで、文献の研究や魔法の理論解析、謎解きなどにおいて優れた能力を発揮します。
イザックやアルバートが持っているスキルを思い出しながら「明日大丈夫かな?お兄様達のように攻撃系のスキルないし、どちらかというと生産系なんだよなぁ……」と不安に思いながらいつの間にか眠っていた。
翌朝メイドに身支度を手伝ってもらい、ゼフィルとアリアンと共に馬車に乗ったレオナールは不安になりながらも教会に向かうのだった。
馬車が止まり降りると、この世界では初めて見る教会に「おぉ!」と感嘆の声を漏らした。中に入り少し進んだところで人が立っているのが見えた「誰だろう?」と思いながら進んでいくとゼフィルが司祭と呼んで会話しているのが聞こえた。
「先日は急な呼び出しに応じてくれてすまない。そのおかげで息子も元気になった。今日はよろしく頼む」
「いえいえ、ご子息様がお元気になられ何よりです。 では、レオナール様はこちらに」
「はい」と緊張しながら司祭の前まで行き膝をついた。 鑑定が終わり司祭が驚いた声を上げ、どうしたのだろう?と思い顔を上げると「こんなスキル見たことない」と言う司祭の言葉が聞こえた。 その言葉を聞きゼフィルとアリアンの方を見ると司祭の反応に喜んでいるようだった。
ゼフィルは司祭に「どんなスキルなんだ?」と期待しながら聞き「【農業セット】・【生物理解】です」説明されると顔色が変わっていた。 「ほ、他のスキルは!」と動揺したように聞くと司祭は「【テイム】です」と答えられゼフィルとアリアンは絶望し「なんだその使えないスキルは!」「あんなに愛情込めて育てたのに!」とレオナールに怒鳴り始めた。
レオナールは「え!」とゼフィルとアリアンの変貌ぶりに驚いていると、そのまま手を引っ張られ馬車に乗せられた。 忌々しそうに見てくる二人に不安で仕方なかったが、そんな気持ちはお構いなしに馬車は家までの道を進んでいくのであった。