第25話 ダンジョンへ向かうまでの出来事
兵士の制止を振り切り進みだしたレオナールたちは、最短で領地に戻ることが出来た。
街に戻って来たレオナール達は、休むことなく居ない間の報告や領民への説明、今後のやる事について話し合いを始めた。 幸いレオナールが離れている間は変わったことは起きて居なかった。 ただ、レオナールのスキルを使った畑は作物が数日で実るため食料を保管しておく倉庫が二軒じゃ足りなくなっていた。
「分かりました。 皆に食料が行き渡るようになったということで取り合えず安心しました。 ただ、このままだと無駄になってしまう恐れがあるので調整が必要ですね」
「調整ですか? レオナール様のスキルはそんなことまでできるんですか?」
「はい。農業に関係していることであれば大抵の事は出来ます。 他に報告は有りませんか?」
「はい。困っているのはこのくらいです」
居ない間の報告を終えたレオナールは今後の話を始めた。 まず初めに、今この領地にダンジョンを調査するための冒険者と調査員が向かっている事を話すと領民たちは不安そうな表情をしていた。
「皆さん。 不安な気持ちは分かりますが、ダンジョンもこのまま放置しておく訳にもいきません。 それに、この領地を昔のように活気に満ち溢れた場所にしたいと思っているので皆さんの協力が必要なのです」
「それは……」
領民たちは少し話し合い何かを決意したのかレオナールに向かって代表者が口を開いた。
「レオナール様、お待たせいたしました。 我々はレオナール様を信じることにします。 レオナール様にはこれまで色々とこの街の為にしてもらいました。 今後もこの街や我々をよろしくお願いします!」
「皆さまありがとうございます! 期待を裏切らないように頑張ります‼」
諸々の話を終えたレオナールは冒険者や調査員が滞在するための建物を建てる場所を探しながら領地を歩いていたが、良い場所が見つからず屋敷に戻ることにした。 先に戻って仕事をしていたアルバートを見つけると話し合いで決まった事と今向かっている冒険者達が泊まる建物をどこに建てるかの話し合いを始めた。
「兄様、ただいま戻りました」
「お帰りレオナール。 話し合いはどうだった?」
「いい感じにまとまりました。 最初は不安な表情だったのですが、ちゃんと話し合って分かってもらうことが出来ました」
「話し合いでまとまったということは、それだけ皆に認められているという事だね。 あの人達だったら話し合いなどせず無理やり決めるだろうしね。 レオナールは領民に寄り添える良い領主になれそうで安心だ。 でも、街を発展させるということは、色々な人が増えると言う事だから時には権力を使って解決しなくちゃいけない事も出てくる。 だから、その見極めは大事という事を忘れちゃ駄目だよ」
「はい。 ところで、冒険者や調査員が泊まれる場所を作ろうと思っているのですが、なかなかいい場所が見つからず困っているんですよね。 兄様、どこか良い場所知りませんか?」
「うーん。 ダンジョンの調査に行くなら森の入り口の近くの方がいいと思うけど、森に近すぎると危険だし難しいね。 いっそのこと、この屋敷の近くに建てちゃえば?」
「ここの近くですか?」
「うん。 調査に来るのは高ランク冒険者だから大丈夫だとは思うけど領民と何かトラブルが起きるかもしれないしね。 それなら屋敷の近くに建てればすぐに対処に行けるでしょ?」
「そうですね。 そうなった時の為に屋敷の近くに建てるのは良いかもしれないです。 調査が終わって使わなくなったら領民の避難場所として使う事も出来ますしね」
話がまとまり翌日から作業を始めることにした。
朝になり、早速作業に取り掛かったレオナールは、アパートを作った経験を活かし順調に作り上げていくのだった。 アルバートに木材の調達を頼み作業を続けていると数人の領民が近づいてきた。
「レオナール様、我々も何かお手伝いさせてください」
「それは助かりますが、皆さんの仕事は大丈夫ですか?」
「はい、妻や子供でもできるので。 そちらは任せて来たので大丈夫です」
「分かりました、ではお願いします。 分からない事があれば気にせず聞きに来てください」
「はい!」
領民の手伝いもあり予定より早く完成させることが出来た。 建て始めてから四日で完成した為、レオナールは手伝ってくれた領民を集め頭を下げお礼を言った。
「皆さんのお陰で予定より早く完成させることが出来ました。 ありがとうございます‼」
「!?、レ、レオナール様!頭をお上げください‼ 我々はレオナール様のお役に立てただけで嬉しいのです」
「皆さんのお陰で四日で建てることが出来たんです。 お礼は言わせてください。 本当に助かりました」
「いえいえ。 また何かあったら手伝いますので気軽に声を掛けてください」
「分かりました。 その時は声を掛けさせてもらいます」
完成から数日後、無事に調査隊がミストヘイズ領へ到着した。
「遠いところからご苦労様です。 皆さんが滞在する家にご案内します」
「君は王都に居た子だよね?」
「はい。 ここの領主をやらせてもらってます、レオナールですよろしくお願いします。 なので、滞在中何かありましたら僕か屋敷の者に伝えてください」
「え!……領主様だったとは。 俺は、一応この調査隊のリーダーのグラスタです。 何かあったら相談させてもらいます」
簡単な挨拶を終え、調査隊を先日完成したばかりの家へと案内を始めた。 大所帯で領内を歩いていると、領民たちが此方を窺様に棟目から見ていた。
「この街にはまだ宿屋が無いので、皆さんにはここに寝泊まりしてもらいます。 部屋もたくさんあるので自由に使ってもらって構いません」
「こんな立派な場所を用意していただいてありがとうございます。 今日は着いたばかりなので、調査は明日からでも大丈夫ですか?」
「はい。 それで構いません。 ダンジョンまでの案内は僕がしますので、明日屋敷まで来てもらいたいのですが?」
「分かりました。 では明日伺わせてもらいます」
「では、明日屋敷に来た時に注意事項などをお伝えしますね。 何もないところですが、今日はゆっくりお休みください」
そう言葉を残しレオナールは屋敷に戻っていった。 残された調査員たちは、明日に向けて話し合いをし各々好きな部屋を選び休むのだった。
「おはようございます。 昨日もお会いしたと思いますが、僕はここの領主をしているレオナールと言います。 では、皆さん揃ってるみたいなので、森の注意事項などをお伝えしたいと思います」
「注意事項なんて聞く必要あるか?俺らなら大抵の魔物なら心配いらないぜ。 なんせここに居るのはA・Bランクの高ランク冒険者だからな」
実力のある者たちが集まっている為、ただの森だと思っている冒険者がレオナールの言葉に異議を唱えたのだった。 そんな中、一人の冒険者が割り込んできた。 割り込んできた冒険者は王都で出会ったタカマサだった。
「レオナールがガキだと思ってそう言っているなら、考えを変えてちゃんと聞いといたほうが良いと思うぜ?」
「誰かと思えはまたあんたか。 初心者相手に色々言って居るのは知っているが、俺たちはあんたよりランクは上で経験も豊富なんだぜ? それに未発見のダンジョンだ、こんな所で時間を無駄にしたいとは思わないね」
「まぁ、これ以上俺は止めないから準備をしたい奴は勝手にすればいい。 俺は死にたくないから説明は聞くがな」
そんな言い合いが目の前で繰り広げられ、他の冒険者を見ていると殆どの冒険者パーティーが異議を唱えた冒険者に賛同したが、残りの冒険者たちはタカマサに賛同しているという感じだった。
「皆さんの思っている事は分かりました。 説明を聞く方だけ残ってもらい他の方は準備出来次第、兄のアルバートにダンジョンまで案内してもらいます。 ただこれだけは伝えさせてください。 この森にはドラゴンが居ますが、友好な関係を築けているので何もしなければ安全です。 絶対に敵対行動はしないでください! もし興味本位でちょっかいを掛けても僕たちは助けにはいきませんので」
「ドラゴンだと!? 流石にドラゴンなんかにちょっかいは出さないさ。 じゃあ俺たちは準備をして先に行かせてもらう」
そう言葉を残し大半の冒険者たちはその場を後にした。 だが、ドラゴンが居ると聞いた冒険者の中にはドラゴンで一攫千金を考える者が数人いたのだった。
「では、残った皆さんに説明しますね。 まず先ほど話したドラゴンに関係する事なのですが、ここのダンジョンはドラゴンの魔力を吸収して他のダンジョンより危険度がかなり高いみたいなので気を付けて探索をお願いします。 ダンジョンのある場所がドラゴンの住処の近くなのでドラゴンに臆さない好戦的な魔物しか出てきませんので注意してください。 もし無理だと思ったら、大声で助けを求めれば僕の従魔かドラゴンが助けに行くので危険を感じたらすぐに叫んでください。 最後に、皆さん絶対無理はしないでください」
「分かった。 魔物であるドラゴンに助けてもらえるというのは不思議だが、危なくなったら頼ることにする。 貴重な情報を聞けて良かったぜ!」
「僕達も準備をしてダンジョンへ向かいましょう」
「おう‼」
レオナールの案内の元、残った冒険者たちもダンジョンに向かうのだった。 先に向かった冒険者たちは、説明を聞いていなかったことにより異様に強い魔物達に襲われ無駄に時間を浪費していた。 そんな冒険者たちの様子を見ていたアルバートは、ルーンを呼び負傷者をあまり出さずにダンジョンに到着するのだった。 何故アルバートがノヴァではなくルーンを呼んだかというと、レオナールからドラゴンの事を聞き悪い事を考える冒険者が数人居たのに気付いたからだった。
読んでいただきありがとうございます!
それに誤字の報告をしてくださっている皆様もありがとうございます。
今後も誤字脱字、おかしい言い回し等あると思いますがよろしくお願いします。




