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第24話 公爵令嬢と王女殿下


 王都を出発して領地に向かっていると近くで大勢に囲まれている一団が居るとルーンが教えてくれた。


「(レオナール、この先で大勢の気配があるけどこのまま進むかい?)」


「何かと戦って居るってこと?」


「(近くに魔物の気配は無いから戦っているとしたら人間と人間だろうね? でも、ただ集まって休んでいる可能性もあるけどね)」


「休んでるだけなら良いけど、もし襲われているとしたら・・・・・・よし、近くまで行ってみて大丈夫そうならそのまま帰ろう。 襲われているならまだしも何も無いのに姿を現して変な誤解をされるのも面倒だし」


「(分かったよ)」


 レオナールの指示のもと気配の方へ向かっていると金属がぶつかる音や叫び声が聞こえてきた。 近くまで行くと盗賊達が馬車を襲っていて、馬車の周りに居る兵士達が戦って居るのが目に入った。 兵士達の人数に比べ盗賊達の方が圧倒的に多かった為兵士達は苦しい戦いをしていた。


「ほら諦めて出てきたらどうだ? 男は皆殺しだが女なら生かしておいてやるぜ」


「お嬢様、我々が時間を稼ぐのでどうかお逃げください!」


「この人数差で逃げられると思っているのか? それに、逃げたところで魔物に襲われて終わりだ。 それなら、生きていられる俺たちの方に来る方がましだと思うがな?」


「あなた達の慰み者になるくらいなら私は魔物の餌になった方がましです!」


「その威勢が何処まで続くか見ものだなぁ」


 盗賊とのそんなやり取りを聞いていたレオナールはこのままではマズイと思いルーンに指示を出した。


「僕はあの馬車に乗ってる人や兵士の人たちを助けたい!」


「レオナールが決めた事なら僕は手を貸すよ?」


「(主様、戦うのぉ? やったぁ‼)」


「(はぁ、お前さんの事だからこうなるんじゃないかと思っていたよ)」


「ありがとう皆。 じゃあルーン、急いで向かおう! 皆、間違って兵士の人や馬車には攻撃しないように!盗賊だけを狙ってね!」


「うん」「(分かったぁ)」「(はいはい)」


 こうしてレオナール達は助けに入った。




 盗賊たちが兵士と戦って居ると後ろの方から「魔物だぁ‼」と言う声が響いた。


「ち、魔物だと。 兵士はこちらで何とかしておくから何人か後ろの支援に行け。 こんな所に出てくる魔物なんて人数で攻めれば何とかなるだろ」


「へい」


 盗賊のリーダが手下に指示を出した。 盗賊のリーダが言った通り街道に出てくる魔物ならそれでも平気だったが、この時の誤算は普通の魔物ではなく最強種のフェンリルと実力のある冒険者だった。 その為、後から応援に来た盗賊たちもあっけなく倒されていき残るは兵士と戦って居る盗賊数人しか残っていなかった。


「何なんだあの化け物は…… お頭、後ろで戦って居た仲間が魔物と人間に全員やられました。 もう俺たちしか残ってません」


「なんだと!?」


 手下の言葉に後ろを確認すると巨大なウルフと人間に蹂躙されていた。 その光景を目にした盗賊のリーダーの顔は絶望した表情に変わっていた。


「何だってこんな化け物がこんな場所に居るんだ。 お前達!馬車はもういい一人でも多く生き残るために散らばって逃げるぞ‼ 生き残ったやつはアジトに集合だ!」


「ここで逃がすとまた被害者がでる。形成は逆転した畳みかけるぞ‼」


 レオナール達のお陰で人数不利が無くなり息を吹き返した兵士たちが追い打ちをかけるべく攻撃に出た。 リーダーと数人の盗賊が兵士の猛攻を潜り抜け逃げ切れたと安堵したのもつかの間レオナールやルーンに後を追われ結局捕まることになった。 街道で問題になっていた盗賊を捕まえることが出来た事に兵士たちは喜び逆に盗賊たちは絶望していた。 レオナール達と最初に交戦した盗賊たちは殆ど亡くなったが、生き残った者たちは死んだ方がましと思えるような場所へ犯罪奴隷として送られることが決まっていた。


「本当に助かった。 君たちが助けに入ってくれなければ我々はもちろんお嬢様もどうなっていたか分からなかった。 本当にありがとう。 助けてもらった礼をしたいとお嬢様が言っているのだが付いて来て頂けないだろうか?」


「申し訳ありません。 僕達は先を急いでいるので遠慮させてもらいます。 盗賊たちは置いて行くのでそちらで対処お願いします。 それじゃあ僕たちはこれで失礼させて頂きます。 行こうルーン」


「(ええ)」


「え?ちょ、まっ……」


 兵士が止める言葉を言い終わる前に走り去っていくのだった。

 レオナール達が立ち去った後、兵士はお嬢様と呼ばれている人物に報告に向かった。



「それで、先ほどの方は来てくれると?」


「いえそれが……急いでいたらしくもう行ってしまわれました」


「名前や行先は聞いたのかしら?」


「聞く暇もなく行ってしまわれた為誰だったか分かりませんでした。 ただ、見た目は冒険者に見えませんでしたが、あれほどの従魔を従えているとなると冒険者ギルドで調べればすぐに分かるかと」


「それなら、急いで王都へ向かい調べて頂戴。 お礼もせずに帰したとなれば公爵家の恥ですもの。 お父様にも叱られてしまいます!」


「分かりました! 急いで準備をして王都へ向かいます‼ 多少運転が荒くなってしまいますがご了承ください」


「それ位構わないわ」


 公爵令嬢に急かされ兵士たちは休む暇もなく急いで準備に取り掛かるのだった。

 公爵令嬢は馬車の中で「年も私とあまり変わらないのにあんなに強くて勇敢なお方が居たなんて……絶対に直接会ってお礼を言うんだ」と少し頬を赤く染めながら思うのだった。


 レオナールの知らないところでそんな事が起きているとは思いもせず自分の領地に向かうのだった。



 馬車が王都へ到着すると護衛をしていた兵士が数人盗賊の輸送をする者とレオナールの情報集めをする者に分かれ各々目的の場所へ向かった。 公爵令嬢はと言うと屋敷に到着するや否や父親の元へ向かった。


「お父様、ただいま戻りました! それで、お父様にお願いしたい事があるのです。 どうしても探してほしい人物が居るのですが調べてもらえませんか?」


「帰って来てそうそうどうしたんだ? ミリアのお願いなら何でも聞いてあげるが、少し落ち着いてから説明してくれ」


 ミリアと呼ばれた公爵令嬢はちゃんとした説明をせずに父親へお願いした。 父親としては、何の説明もなしにいきなりお願いされ何のことだかさっぱり分からず、まず落ち着かせてから話を聞くことにした。 王都に戻って来る道中にあった出来事を聞き、問題になっていた盗賊の捕縛とミリアが無事に帰って来た事に安堵した。


「そんな事があったのか。 ミリアが無事で本当に良かった。 ただ、その助けてくれた子の名前やどこの街へ行ったかも分からないのだろう?」


「はい……。 でも今、私の護衛をしてくれていた兵士の方がその方の情報を集めに行ってくれています。 その方が連れていた従魔は目立つと思うので何か知っている人が居るかもしれませんから」


「分かったよ。 私の大事な娘を救ってくれたんだ、私としても礼をしない分けにはいかないからね」


「ありがとうございます。 何か分かったら必ず私にも教えてくださいね!」


「ああ、分かったから今日はもうゆっくり休みなさい」


「はい」


 ミリアが部屋を出て行くと公爵は情報を集めるためすぐに行動に出た。 ギルドへは兵士が行っている為、公爵は自分と交流がある貴族の元へ情報を集めに向かった。


 冒険者ギルドへ情報集めに行った兵士は、受付嬢から「申し訳ないのですが、何か犯罪を犯したわけではないのならどの冒険者の情報であってもお伝えする事は出来ません」と言われこれと言って有用な情報を得ることはできなかった。 公爵の方もレオナールの情報を得る事は出来ずにいた。 そもそも、レオナールは冒険者ではあるが領地を持つ領主であるためギルドの依頼を受けることは無く貴族と一切接点がなかった。


 情報集めから数日たったがレオナールを王都で数日間見かけた程度の情報しか集めることはできなかった。 そのため、半ば諦めていたミリアだったが意外なところで有力な情報を得ることが出来るのだった。


 ある日、この国の王女で友人でもあるアリアと二人でお茶を楽しんでいる時ミリアが自分が盗賊に襲われているときに助けてくれた人が居て挨拶もできずそのままどこかへ行ってしまって探している事を話しているとアリアが思い当たる人が居ると話した。


「アリアそれは本当なの!?」


「ええ。 先日お父様に会いに来た方が大きな従魔を連れていたと城の中で話題になって居たもの」


「で、それは誰でどこに住んでいる方なの‼」


「私は分からないけどお父様に聞けばわかると思うわよ?」


「国王様に直接聞くのはちょっと私には無理ね。 お父様に頼んでみようかしら?」


「ふふ、ミリアがそこまでして男の方を探しているなんてその方は大分魅力的な方なんですね!」


「ちょっとアリアからかわないでよ! 別にそんなんじゃないわよ?ただ、お礼を言いたいだけよ‼」


「その方の話をしている時のミリアは恋する女の子の顔になっていますもの。 でもまあそう言う事にしておきましょう。 その方とお知り合いになれたら私にも紹介してくださいね? 私もどんな方なのか会ってみたくなりました」


「その時は三人でお話しましょ!」


 王女のアリアから有力な情報を得たミリアは早速父親にお願いした。


 翌日、公爵は国王に会いに行き探している人物が誰なのかを知ることが出来た。 屋敷に戻り娘のミリアに分かった事を話した公爵は会いに行くと言うミリアを止めるのに苦労するのだった。 なんせミリアが行こうとしている所は王都から馬車で七日かかり護衛を連れてとなるともっとかかる為、いくら説得されても公爵が首を縦に振る事はなかった。 そんな父親の苦労も意味なくミリアがアリアにその話をすると、最愛の娘のお願いを断る事の出来なかった国王がAランク冒険者パーティー一組とBランク冒険者パーティー三組を雇いアリアとミリアがミストヘイズ領へ向かう事が決定した。

 ちなみにこの冒険者パーティーは、依頼で王都に居なかった為ミストヘイズ領で見つかったダンジョンの調査隊に参加できなかった者たちでこの依頼で向かえる事に喜び二つ返事で依頼を受けたのだった。

読んでいただきありがとうございます!

それに誤字の報告をしてくださっている皆様もありがとうございます。

今後も誤字脱字、おかしい言い回し等あると思いますがよろしくお願いします。

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