第22話 国王との謁見
レオナール達は領地に戻ってすぐに領民たちを集めダンジョンが発見された事を話し王都へ向かう事と各ギルドに支部を置いてもらいに相談しに行く事を説明した。 近くにダンジョンがあることに恐怖する者がほとんどだったが、少数の者はよそ者が街に来る事に難色を示した。 レオナールは領主なので権力で強制する事ができるのだが、そういう事が嫌いなレオナールは今後の事を説明し納得してもらう事に成功した。 家に戻ったレオナール達は王都へ向かう準備を始めた。
「レオナール、王都へ向かう途中の街でギルドによって王城あてに書状を出さなくちゃいけないけど準備は出来てる?」
「まだできてません」
「じゃあ、それは僕がやっておくからレオナールは各ギルドに提出する書状を用意してくれ。 時間が無いから急ぐよ」
「はい」
役割分担をして準備を進めていたレオナール達だったが、準備が終わるころには日が落ちかけていた。 レオナールは野営するのに慣れていた為そのまま出発しようとしていたがアルバートに全力で止められその日は自宅で休み明日王都へ向け出発する事にした。
「兄様、こちらの準備は終わりましたが兄様の方はどうですか?」
「僕もなんとか終わったよ」
「分かりました。 じゃあ出発しますか」
「え!? 何言ってるのレオナール? もう時間も遅いし明日の朝一で出発しよう?」
「でも、僕達は野営も慣れているし早く行った方がいいじゃないですか?」
「慣れて居るって言っても、戻って来てから碌に休んでないんだから駄目だ!」
「僕なら大丈夫です」
「駄目なものは駄目だからね‼ レオナールが何を言っても出発は明日だからね」
「分かりました」
翌朝、兵士たちに領地の事を任せ王都へ出発した。 領地から少し離れるとルーンが待っていた。
「ルーン待っててくれたの?」
「(私が連れて行った方が早いからね)」
「でも、ルーンには領地の事を頼んでいたはずだけど?」
「(それはノヴァがやってくれることになったから領地に事は大丈夫よ)」
「そうなんだ。 戻ってきたらお礼をしに行かなくちゃだね」
「ノヴァは色々知っているからまた話を聞かせてもらおう」
「兄様は本当に勉強が好きですね」
「知識は武器になる事があるから知らないよりは知っていることが多いい方がいいからね」
「そうですね。 それじゃあルーン王都までよろしく」
「(分かったわ。 急いでるんでしょ早く背中に乗って!出発するわよ)」
「待って!レオナール。 まずは王都じゃなくて道中にある街によって書状を送らないと」
「あっ、そうでした。 ルーン先に近くの街までお願い」
「(そのまま行った方が早いだろ駄目なのかい?)」
「先に行く事を知らせておかないと早く着いても待たされちゃうから逆に時間が掛っちゃうんだよ」
「(人間って面倒くさいのね)」
「ルーン達からしたらそう思うのも無理ないけど僕たちが会いに行くのはこの国で一番偉い人だから仕方ないよ」
「(じゃあ飛ばすわよ)」
レオナールの話を聞きルーンは速度を速めた。 ルーンのお陰でその日のうちに目標の街へ着いたレオナール達は、街に入る際ルーンを見た門番になかなか通してもらえず説得するのに大分時間が掛った。 やっと街に入れたレオナール達は早速冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドに着いたレオナール達は中に入るとその場に居た冒険者たちの視線が一気に集まった。 久しぶりの感覚に少し緊張しながら受付嬢の元へ向かった。
「冒険者ギルドへようこそ。 今日はどのようなご用件でしょうか?」
「緊急で王城へ手紙を届けて欲しいのですができますか?」
「それは出来ますが……緊急ですか?」
「はい。 僕達もこれから向かうのですが、先に国王様に知らせておかなくてはいけない事がおきまして」
「よろしければ何があったのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「わかりました。 ですが急いでいるので重要な事だけ伝えさせていただきます」
「ありがとうございます」
レオナール達はミストヘイズ領でダンジョンが見つかった事、そのダンジョンが現時点で確認されているどのダンジョンよりも危険度が高い事を伝えると、距離は離れているとはいえ隣の領地と言う事もあり受付嬢の顔がどんどん悪くなっていった。 受付嬢の反応が無くなったのでレオナールが呼びかけると『ハッ!』と我に返った受付嬢は急いで準備を始めた。
送り終わった受付嬢が戻って来るとギルドマスターにも今の話をと言われたが急いで王都へ向かわなくては行けなかった為、ギルドマスターへの報告は受付嬢に任せレオナール達はその場を後にした。
「久しぶりに睨まれるように見られて緊張しちゃいました」
「最近は領地の事で人とあまり関わっていなかったからね。 まさか入った瞬間一斉に見られると思わなかったけどね」
「はい」
ギルドでの用が済んだレオナール達はそのまま街の門へと向かい王都を目指した。
ルーンのお陰で普通じゃ考えられない速さで王都へ着くことが出来たレオナールだったが、ルーンを見た門番に別室に連れていかれ来た目的やルーンが安全か等色々な質問をされ王都の中に入れたころには日が暮れていた。 門番に大型の従魔を連れていても泊まれる宿を教えてもらい今日はそこで休み明日国王への謁見をすることにした。
「はぁ……まさか入るのにこんなに時間が掛るなんて思いませんでした」
「王都だからしょうがないよ。 ちゃんと調べないと犯罪者とかが入り込むかもしれないからね」
「そうですね」
「魔道具で犯罪者かそうでないかが分かる道具が大昔に在ったみたいでね、その研究が行われているらしいから研究が成功して再現できるようになったらもっと早くはいれるようになると思うよ」
「そうなんですか!? 僕の領地もこれから色々な人が来るようになると思うので完成したら欲しいですね」
「早く完成するといいね」
「はい。 そうだ!僕達も独自でそういうのを作ってみるのはどうでしょう?」
「難しそうだけど、レオナールのスキルがあればできそうなのが怖いな」
「まあ領地のためですから」
たわいない会話をしながら歩いているとすぐに宿に着いた。 扉を開けて中に入ると受付に居たおばちゃんに声を掛けられた。
「おやいらっしゃい。 うちは酒場もかねてる宿屋だけど今回は泊りかい?」
「はい。 ただ大型の従魔も居るんですが大丈夫ですか?」
「それは大丈夫だけど従魔も料金がかかるけど平気かい?」
「はい」
「何拍する予定なんだい? 二名様と従魔が二匹で一泊銀貨三十枚と銅貨が五十枚だけど」
「とりあえず五日でお願いします」
「了解。 五泊だと金貨一枚銀貨五十二枚銅貨五十枚だね」
「じゃあこれで」
「ちょうどだね。 これが部屋の鍵で部屋はそこの廊下の一番奥だよ。 部屋に従魔も連れていけるからそのまま行って大丈夫だからね」
「分かりました。 ありがとうございます」
「あ!お客さん食事はどうする? 料金に朝と夜の食事代も入っているから言ってくれれば用意するよ」
「分かりました。 今はまだ大丈夫なのでまた後で声を掛けさせていただきます」
「はいよ」
無事宿に着いたレオナール達は部屋に行き明日の準備を始めた。 明日の謁見にはルーン達も一緒に付いて来てもらう事になった。 話し合いが一段落ついたので食事をとり休むことにした。
翌朝、準備を終えたレオナール達は王城へ向かった。 王城の兵士がルーンを見てひと悶着あったが国王への謁見があると説明してやっと解放された。 謁見の準備が終わるまで別室に通されたがすぐに呼び出しがかかった。
「ほぉ、お主があの領地を任されている者か?」
「はい。 レオナールと申します」
「あの地は昔から色々とあって不用意に手が出せん土地でなくれぐれも気を付けてくれよ」
「ところで、お主と一緒に居る魔物は本当に大丈夫なのか?」
「従魔なので心配はいりません」
「その大型の従魔はキングウルフか?」
「あまり広めたくないので陛下の心の内にとどめて頂けるのであればお話しさせていただきます」
「なっ‼ お主陛下に向かってその物言いは不敬ではないか‼」
「何と言われても約束頂けなければお話できません」
「分かった、他に広めないと約束しよう」
「ありがとうございます、陛下。 陛下の言う通りこの子はウルフではなくフェンリルです」
「フェンリルだと!? あの土地には何か不思議な力でもあるのか……」
「どういうことですか?」
「昔の話だが、何代か前の領主がドラゴンを従魔にしていたらしくてな今もなおあの場所を守っていると言われているんだ」
「その事も含めて報告したい事がございます」
「ダンジョンが見つかったと聞いたが他にもあるのか?」
「はい。 それが、先ほど話していたドラゴンとも友好な関係を築けました」
「それは本当か‼」
「はい。 従魔が教えてくれたのですが、ダンジョンは周囲の魔力を吸収して成長するらしくドラゴンの魔力を吸収して現在確認されているどのダンジョンよりも危険度が高くなっているみたいなのです」
「そんな事が……長年謎だったダンジョンの事が分かるとは……褒美を用意する故少し時間をもらいたい」
「分かりました。有難く頂戴いたします」
「では、今回見つかったダンジョンはBランク以上の冒険者以外立ち入り禁止とし様子を見ることにする。 今回の功績でお主を男爵にし家名に"ミストヘイズ"と名乗ることを許可する。 後日叙爵式を行いその時までに褒美の目録を用意しておこう」
「これにて謁見を終了とする!」
国王との謁見が終わり宿に戻ったレオナール達は明日の両ギルドの話し合いに備え早めに休むことにした。 今回の事で領地にギルドが無い事を知った国王がギルド宛の書状を作ってくれると言う事で明日に行く事になった。
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