第21話 ダンジョン!?
「ついつい長話になってしまったな。 ちと退屈じゃったかの?」
「そんな事ないです。 昔の歴史が知れて勉強になりました! 有難うございます」
「今の話で魔族の謎が解けました。 昔あんなに仲の悪かった魔族が今は仲が良いのはノヴァのお陰だったんですね」
「そうなのか? 改めて面と向かって言われると何だか照れ臭いの」
「あ!」
レオナールがいきなり大声を出した為驚いたアルバートが首を傾げた。
「いきなり声を上げてどうしたんだ?レオナール」
「いえ、さっきの話であの開けた場所がなんなのか分かったのでつい」
「まさかあの開けた場所って……ノヴァがエドガーさんと最初に出会った場所?」
「そうじゃぞ。 長い間あの場所に居たせいで儂の魔力が染みついてしまってな他の魔物は余り近付いて来れないみたいじゃ」
「だから野営した時周りに魔物の気配がなかったのか」
「レオナール、僕達ノヴァの話に夢中になり過ぎて辺りがもう真っ暗だよ」
「え!? これだと今日も帰れそうにないですね。 また昨日の場所に戻って野営しますか」
「なんじゃ、お主らあの場所に戻るなら儂が連れて行ってやろうか?」
「それは有難いですが、いいんですか?」
「儂は構わんぞ。 久しぶりにあ奴と同じ雰囲気の人間に会えて儂も嬉しいからの」
ノヴァの話をレオナール達は時間も忘れて聞いていた為気付けば辺りは暗くなっていた。 ノヴァの提案であの開けた場所まで送ってもらうことになった。
「フェンリルの次はドラゴンに乗れるなんて……人生で一体会えれば奇跡と言われている最強種なのに。レオナールと一緒に行動していると他の最強種とも仲良くなりそうでちょっと怖くなってきたよ」
「それは……たまたまですよ兄様。 それに、領主になったんですから今後他の最強種に会う事なんてないですよ‼」
「でもレオナールは冒険者でもあるしなぁ」
「アハハハ」
アルバートの問いかけにレオナールは顔をそらしてぎこちなく笑う事しかできなかった。
昨日野営した場所に戻ってきたレオナール達は準備を早めに済ませ森のことについてノヴァに聴き始めた。
「ノヴァはこの森に長い間居たんだよね?」
「そうじゃが?」
「じゃあこの森について色々教えて貰えないかな?」
「儂にわかる事なら構わんぞ」
「本当! ありがとう。 じゃあまず、この森ってどんな魔物が居るの?」
「この森で儂が見た事ある魔物はゴブリン、ホブゴブリン、ウルフ、ベアウルフ、オーク、オークジェネラル、後は先ほど戦ったデススパイダーをよく見かけるの。 それと、ダンジョンから出てくる魔物位かの」
「「ダンジョン‼」」
「(ほう。 こんな場所にダンジョンがあるのかい?)」
「(主様、ダンジョンってなぁに?)」
「ダンジョンはね、色々な魔物が居て運がいいと強い装備やアイテムが手に入るすごい場所だけど危険な場所でもあるんだ」
「(いろんな魔物!?主様、僕行きたい!)」
「シレン僕の話聞いてた? 危険なんだよ?」
「(えぇー。 行きたいよぉー。ダメェ?)」
「(坊やが我が儘を言って悪いね。 でも、特訓にもなるし危なくなったら私も力を貸すから行ってみないかい?)」
「分かったよ。 領地のためにも下見には行かなくちゃいけないし明日にでも行ってみようか。 ノヴァ案内頼んでも大丈夫?」
「構わんぞ」
「ありがとう。 良かったねシレン明日ダンジョンに行けるよ」
「(本当‼やったー。 明日が楽しみだね)」
「楽しむのもいいけど気を付けないとだよ。 シレン、ノヴァにもちゃんとお礼を言わないとだよ?」
「(ノヴァおじいちゃんありがとう)」
「気にせんでもいいんじゃよ」
「シレンにあんな事言ったけど実は僕も楽しみではあるんだよね」
「はぁ、レオナールも気を引き締めて行かないと危険なんだからね?」
「すみません兄様。 明日に備えてそろそろ休みますか」
「そうだね」
翌日、ノヴァと話をしていた際この森にダンジョンが有る事を知ったレオナール達はノヴァの案内の元向かうことにした。
「まさかこんな所にダンジョンが有るなんて思いませんでしたね兄様」
「これで領地にも人が集まる様になればいっきに発展するね」
「はい!」
そんな話をしながら進んでいると目的のダンジョンが見えてきた。
「ところでノヴァはこのダンジョンには入ったことあるの?」
「儂は入った事は無い。 偶にダンジョンから出てくる奴を倒して食糧にしているぐらいだから中がどんな感じなのかはわからんの」
「そうなんだ。 でも、ダンジョンの魔物って倒すとアイテムに変わるんじゃないですか?」
「ダンジョンの中ならそうだけど中から出てくると死体はその場に残るんだ」
「そうなんですね。 よく知ってましたね兄様」
「こういう事も教え込まれたからね」
「でも、ノヴァがそうやって魔物を倒していてくれたおかげであの領地は残って来れたんだね。 ありがとう」
「儂はただ自分が生きる為に倒していただけなんだがの」
「それで救われた人達が居るんだ感謝するのは当然だよ!」
「お主達もあいつと一緒で相当の変わり者だの」
あんなに酷かった領地に何故まだ人が住めていたのか理由が分かったレオナールはノヴァにお礼を言ってダンジョンの中に向かった。
「これがダンジョンかぁ。 初めて入ったけど外じゃ無いのに明るいなんて不思議な感じですね」
「レオナール、初めてのダンジョンで嬉しいのは分かるけど誰も来た事がない場所だからちゃんと警戒しながら進まないと危険だよ‼️」
「はぃ。気をつけます」
アルバートに注意されたレオナールは気を引き締め直し探索を再開した。
「(主様、全然出て来ないね)」
「まだ入ったばかりだからもう少し進めば出て来るんじゃないかな?」
「(本当‼じゃあ早く進も。 早く早く)」
「待ってよシレン」
「(コラ坊や!一人で行って何かあったらどうするんだい)」
「(はぁい。ごめんなさい)」
一人で突っ走ろうとしたシレンはルーンに怒られしょんぼりしながら戻って来た。 シレンが戻って来たので探索を続けていると正面からコボルトとゴブリンが数匹現れた。 魔物が出て来た事でレオナール達に緊張が走ったが、魔物を見つけたシレンは先ほどまでが嘘だったかのように喜びだした。
「(あっ、魔物だー。 早く戦いに行こう!)」
「シレン待って。 相手はコボルトとゴブリンだけど複数居るし外とダンジョンじゃ強さが違うかもしれないから無暗に突っ込むのは危険だよ」
「(あんな奴ら僕なら倒せるもん‼)」
「(ボーヤ?)」
「(ひぃ、ごめんなさい)」
「まずは兄様の魔法で試してみましょう。 一応何があってもいいようにすぐに動けるようにしておこう」
「(えー、僕が行きたかったのに)」
「ごめんねシレン。 もう少し待ってね」
「(はぁい)」
「じゃあ行くよ『ストーンバレット』」
アルバートの魔法が手前に居たコボルトとゴブリンに当たると、魔石(極小)に姿を変えていた。
「あれ?外とあんまり変わらないみたいだね。 シレン確認が終わったから皆で倒そう!」
「(やったー。 じゃあ行くよ)」
そこからは皆で戦った為すぐに戦闘は終了した。
「(もう終わり?)」
「そうみたいだね。 ドロップ品を拾って先に進もう」
「そうだね」
戦闘が終わり探索を続けていたが、特に強い敵など現れず次の階層に行くための階段を見つけた。
「一階層目はここで終わりみたいだね」
「消耗もあまりしていないからこのまま進むか?」
「そうですね。 このまま進みましょう」
二階層目も一階層と変わらず難なく進むことが出来た。
「ここも上とあまり変わらないですね」
「基本的に三~五階層目位から雰囲気や難易度が変わるみたいだよ。 例えば、危険度の高いダンジョンだと三階層目から難易度が変わって中くらいだと四階層目からと変わるみたい。 だから、次の階層で変わって居ればここは危険度の高いダンジョンって事になるかな?」
「じゃあ、次の階はより慎重に行かないと駄目ですね。 ルーンもそのつもりで頼むよ」
「(まかせなさい)」
二階層も難なく突破しドキドキしながら三階層へ続く階段を下りて行った。
「いよいよ三階層ですね」
「どんな魔物が居るか分からないから気を付けよう」
「はい」
ついに三階層に着いたレオナール達はその光景に驚きを隠せずにいた。
「ここ本当にダンジョンの中ですよね?」
「後ろに降りて来た階段があるから間違いないと思うけど……流石にこれは」
「(森だぁ。 ダンジョンてすごいね主様!まるで外に居るみたいだぁ)」
「ダンジョンってこんなに変わるものなんですね」
「でも、おかしいな? こんなに急激に変化するとは聞いたことが無いんだけど……」
「(そうだねぇ。 私も色々なダンジョンには入った事はあるけどここは少しおかしいねぇ)」
「ルーンもそう思う?」
「(ええ。 探索はここで終わりにした方がいいかもね。 私一人なら平気だけど、流石に坊や達を守りながらだと万が一の事があるかもしれないから)」
「ルーンがそこまで言うとは本当にヤバそうだね」
「兄様、ルーンとそんなに話し込んでどうしたんですか?」
「ここは想像以上にヤバいから引き返そうと話していたんだ」
「やっぱりこの光景は普通じゃないんですか? 僕初めてなのでこれが普通なのだと思ってました」
「違うよ。 だからもう引き返そう」
「分かりました。 シレン、今日はもう帰るから戻って来て」
「(えぇー、もう帰るの?)」
「また今度来よう」
「(主様、絶対だよ?)」
「分かったよ」
シレンを説得してダンジョンから早々に退却した。 ダンジョンの外で待っていたノヴァは思っていたより早く戻って来た事に驚いていた。
「なんじゃ? ずいぶん早く戻って来たんじゃの」
「(このダンジョンが少し妙でね、すぐに引き返してきたの)」
「妙とは何があったんじゃ?」
戻って来た経緯をノヴァに話たがノヴァもこんな事象聞いたことが無かったらしく首を傾げていた。
「そんな事があったんじゃの。 戻って来て正解じゃな。 その選択ができるのも勇気のいる選択じゃ」
「(でも何でこんな事が起きているのかねぇ?)」
「分からんの」
「(そういえばノヴァ、あんたの住処ってここから近かったわよね?)」
「そうじゃの。 それがどうしたんじゃ?」
「(例えばだけど、あんたの魔力の残滓を長い年月をかけて吸収していって出来たとかは考えられないかしら?)」
「それは有るかもしれんの」
「ねえルーン、何でノヴァの魔力が関係あるの?」
「(人間には知られていないかもしれないけど、ダンジョンて外の魔力を少しづつ取り込んで成長していくものなのよ。 だから、そのダンジョンの近くに住んでいたノヴァの魔力を吸って成長したのかもしれないって思ったのよ)」
「えぇ‼……ダンジョンの成長の仕組みをこんな所で知れるなんて」
「まずは、ダンジョンの事を王都へ報告しに行くついでに冒険者ギルドと商業ギルドに相談して領地に支部を作ってもらいに行こう」
「ダンジョンが発見されたから両ギルドの支部は絶対に必要だね」
今後の話をし、ノヴァとルーンに別れを告げレオナール達は急ぎ領地へ戻り王都へ向かう準備をしていた。 血相を変えて戻って来たのを見た兵士は何があったのかを聞き準備の手伝いに加わった。
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