第2話 転生
ここは、シルバーレイク伯爵の屋敷。
屋敷の一室に赤ん坊の泣き声が響き渡った。
執務室で仕事が手につかなった当主"ゼフィル・シルバーレイク"は、こちらにやってくる足音を聞いてドアの方を向いた。その時、執務室のドアがノックされた。
「入れ」
「旦那様、失礼いたします!」
許可を出したメイドが慌てて入ってきたので、要件を聞くことにした。
「そんなに慌てて何かあったのか!? ……まさか!?」
「はい、お生まれになりました。 元気なご子息様です」
それを聞いたゼフィルは勢いよく飛び出していこうとしたが、執事"オリヴァー・ノクターン"に止められた。
ゼフィルは、自身を止めたオリヴァーを見ると、オリヴァーは口を開いた。
「旦那様、逸る気持ちも分かりますが、そんなに慌てていては周りに示しがつきません」
ゼフィルはオリヴァーに「すまない」といい少し落ちつきを取り戻したのであった。
ゆっくりとした足取りで妻"アリアン・シルバーレイク"と生まれたばかりの赤ん坊の居る部屋へ着いた。
部屋のドアを開けるとアリアンと目が合い、目線を下げると生まれたばかりの赤ん坊"レオナール・シルバーレイク"をあやす長男"イザック・シルバーレイク"と次男"アルバート・シルバーレイク"の姿があった。
ゼフィルはレオナールを抱きかかえるとレオナールが泣いてしまった為アリアンが手を差し伸べ、アリアンに抱かれたレオナートは安心したのか眠ってしまった。
そんな時、「「僕たちも抱っこしたい」」とイザックやアルバートが言い始めてしまった。
そんな息子達を見たアリアンは「生まれたばかりだから今はゆっくり休ませてあげて」と優しく言った。
生まれてから二年が経ちイザック、アルバート、レオナールで遊んでいた時、レオナールが歩くのを見たイザックとアルバートが母、アリアン 父、ゼフィルを呼びに行った。
「お母さま早く早く!」
「そんなに急いでどうしたの? イザック?」
「レオナールが歩いたんです!!」
「!?」
アリアンはなぜイザックが慌てて呼びに来たのか理由聞いて急いでレオナールの居る部屋に向かうのであった。
一方アルバートはレオナールが歩いたことを伝えるため父、ゼフィルの居る執務室へと向かった。
「お父様、失礼します」
執務室についたアルバートがドアをノックすると、ゼフィルが許可を出した。 普段執務中には訪ねて来ないアルバートが中に入ると驚いているゼフィルが問いかけてきた。
「おぉ! アルバートどうした?」
「お父様! レオナールが歩いたんです!」
「それはほんとうか!?」
レオナールが歩いた事をきいたゼフィルは執務をほったらかして部屋を出て行ってしまった。 残された執事のオリヴァーは「またかぁ」と呆れながら連れ戻すため後を追っていった。
あれから月日が流れ五歳になったレオナールは、現実のような夢で最初は見たこともない物や景色に戸惑いながらもとうとう前世の"佐藤遥斗"の記憶を思い出した。
目覚めた時、こちらをのぞき込んでいる人影が目に入った。
「「レオナール!?」」
いきなり大声を出されてビックリしたが、よく見ると心配そうにこちらを見ている二人の男の子がいた。
後ろではメイドらしき人が部屋から慌てて出ていくのが見えた。
「どうしたのですか?」と問いかけると、イザックは「レオナール、司祭様に治癒術使ってもらったが、三日もうなされながら起きなかったんだぞ」と言われた。
え!?……三日もねていた? レオナール?誰の事だ? この二人見た事があるような……
「ゔぅ」頭が痛い……
佐藤遥斗はレオナールの五年間の記憶がフラッシュバックし苦しみ始めた。
「どうしたレオナール!!」
そのころ部屋を飛び出していったメイドはゼフィルとアリアンにレオナールが起きたことを伝えに行っていた。
メイドはゼフィル達の居る部屋に着くとドアをノックし、返事も待たずに慌てて中に入った。
「失礼します!」
そんなメイドを見て執事のオリヴァーが口を開きかけたが、ゼフィルがそれを手で抑制して用件を聞いた。
「それで何があった?」
「レオナール様が目を覚まされました!」
「なに!」 「「それは本当『なの!?』『か!?』」」
メイドの報告を聞いてレオナールの部屋に急いで向かう二人だった。
部屋に着くとノックもせず入った二人だが、レオナールが頭を抱えて苦しんでいるのを何もできずに、不安そうにしている二人の息子が目に入り事情を聞いた。
「イザック、アルバートなにがあった!!」
「「お父様、お母様」」
イザックとアルバートは両親が来たことに安堵の表情を浮かべ、あった出来事を説明し始めた。
「目を覚ましたので名前を呼んで駆け寄ったところいきなり苦しみ始めたのです」
「すぐに教会に連絡して治療できるものを呼んで来い!」
ゼフィルに指示されたオリヴァーはすぐに部屋を退室して教会にいそいだ。
十分程して、オリヴァーは司祭を連れて戻ってきたので、ゼフィルはすぐに治療を頼んだ。
「司祭、レオナールの容態はどうなんだ?」
「前回は効果はありませんでしたが、今回は効果があったようで落ち着きを取り戻してきております」
「そうか、急に呼び立ててすまなかった」
「いえ、また何かあればお呼びください」
司祭が治癒術を使い治療していると、少ししてレオナールは落ち着きを取り戻していった。その様子を見て司祭は帰っていった。
近くで見守っていたゼフィル達はレオナールに駆け寄り声をかけた。
「レオナール大丈夫か?」「もう苦しくはないの?」「「大丈夫?」」
「もう大丈夫です。ご心配お掛けしました。」と、前世の口調で自分を気遣う家族たちに声をかけてしまっていた。
そんなレオナールを見て、ゼフィル達は彼の様子がおかしい事に気づいていたが、起きたばかりだった為その事に触れることはしなかった。