第12話 まさかの出来事
ギルドに着き、ギルマスの部屋に通されたレオナール達は後一年でルーンと共にこの街から居なくなる事や、ルーンが居なくなることで住処に引きこもっている魔物が活発化するかもしれない事を説明した。 もちろんギルドには引き止められていた。 家に着いたアルバートはゼフィルのもとへ向かいスキルが発動しない事を伝えに行った。 レオナールが責められないよう魔物の呪いによって消えた事にした。
「お父様、お話ししたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
「アルバートか、どうした?やっと考えを改める気になったか?」
「いえ。実は、森で戦闘中に魔物の呪いを受けてしまい、非常に言いにくいのですがスキルが発動しなくなってしまいました」
「なっなんだと!? オリヴァー急いで馬車を用意しろ!」
「畏まりました」
ゼフィルの指示でオリヴァーは急いで馬車を用意しに行き、ゼフィルはアルバートを連れて教会に向かった。 教会に着くと、司祭のもとに急いだ。
「ゼフィル様そんなに慌ててどうなさいました?」
「アルバートが魔物の呪いを受けてスキルが使えなくなったらしいのだ。 だから、司祭の鑑定でどう言う状況か見て欲しいんだ!」
「分かりました。 すぐに準備します」
司祭はゼフィルから事情を聴き、急いで準備して戻って来た。 アルバートの鑑定結果を見た司祭は驚いた声を上げた。
「こんなことが‼」
「どうしたと言うのだ! 結果が分かったのなら早く教えろ!」
「そ、それが… スキルがすべて消えています」
「そんな呪いが本当にあるのか!?」
「聞いたことはないですが、現に無くなっているので存在するとしか…」
そんな二人の反応を見てアルバートはほっとしていた。 話が終わり戻って来たゼフィルに連れられ家に帰っていった。 家に着いたのだが、ゼフィルは放心状態のまま屋敷に入っていった。 少ししてゼフィルは呪いを解く方法を血眼になって調べ始めたのだが、そんな呪い存在しないため徒労に終わるのだった。
離れの部屋に戻ったアルバートはゼフィルの様子から作戦がうまくいかない事を危惧して早めに森に戻ろうとレオナールに相談していた。 相談を受けたレオナールは準備を始めたが、回復薬作りやギルドに頼んだ魔物の解体などで早くて二日後の出発になってしまう事に焦りを感じていた。
やっと準備の整ったレオナール達は森へ向かおうと離れを出ようとすると扉の前にゼフィルが立っていた。
「アルバートお前の我が儘はここまでだ!呪いが解けるまで屋敷で大人しくしていてもらう‼」
「そんな言葉に僕が従うと思っているのですか?」
「スキルの使えない今のお前に何かできるとでも? 大人しくついてきてもらう!」
アルバートはゼフィルに連れていかれレオナールは急いでルーンのもとへ向かった。
ルーンと合流し作戦が失敗したことやアルバートが連れていかれた事を伝え、今後の対策を話し合った。
「どうにかして兄様を助け出さないと!」
「(落ち着きなさい! 今すぐ助け出してもすぐ連れ戻されるだけだよ!)」
「そうは言っても…」
「(それに、アルバートは頭が良いから自分で何とかしそうだしね!)」
「そうかな?でも、もしもの時の為に作戦だけは立てておこう」
「(気にしてるのはレオナールだけみたいよ。 シレンなんか気にする様子もなく魔物を追いかけまわして遊んでるしねぇ)」
「(なぁに?)」
「シレンが兄様の事心配してないなぁって」
「(アル兄なら大丈夫だと思う!)」
シレンはそう言ってまた魔物を追いかけまわしに行った。
一方そのころアルバートは屋敷の自室に居た。 ゼフィルに連れられたあと自室に入れられ部屋から出してもらえずに居た。
「やっぱり駄目だったかぁ。魔法を使えば抜け出すのは簡単だけど今使うとばれちゃうし何か作戦を考えないと!」
アルバートは焦ることなく次の作戦を立て始めた。 ゼフィルは色々な手を使い【呪術】のスキルを持つ呪術師を見つける事が出来た。 アルバートを見た呪術師は難色を示した。
「どうなんだ!呪いは解けそうか??」
「大変申し上げにくいのですが、ご子息は呪いに罹ってはいません」
「そんなはずはないだろう! 現にスキルが無くなっているのだぞ!」
「そう言われましても…【解呪】を使っても効果が無いので呪われて無いとしか言いようがありません!」
「貴様…まさかスキルを偽っているのか? オリヴァーこいつを牢に入れておけ!」
「そ、そんな!私は嘘など言っていません。貴族様!御考え直しを」
「うるさい。早くそいつを連れていけ」
「お父様!そんな酷いことはやめてください! 呪いが強くて効果が無かっただけかもしれないじゃないですか!」
見捨てることのできなかったアルバートは何とか擁護しようとしたが、ゼフィルは聞く耳を持たなかった。それどころか、罪人として突き出そうとしていた。 アルバートは呪術師をどうにか助けようと考え始めた。
その日の夜、アルバートは風魔法【エア ミラージュ】を屋敷全体に使い幻影を作り出し姿を消した。 そのまま牢屋まで行き呪術師を自分の部屋まで連れていき牢屋には魔法で作り出した呪術師を置いてきたのだった。 助け出した呪術師を外へ連れ出し事のあらましを説明した。
「こんな事に巻き込んでしまい申し訳ありません。 呪いの事はお父様を騙す嘘でしたが、この事をお父様に知られる分けには行かないので他言無用でお願いします」
「分かりました。 でも、何故そのような嘘を?」
「僕には弟がいるのですが、スキルのせいで酷い仕打ちを受けていたんです。 そして、後一年で辺境の領地に追放されてしまうので付いて行くためにこれを計画したんです」
「そんな事が… それなら何故こんな危険を冒してまで私を助けたのですか!言っては何ですが、見捨てた方が良かったのでは?」
「僕のせいで無関係な他の誰かが不幸になる事は嫌でしたので… なので、ばれない内に逃げてください。 あの魔法も朝には解けてしまうので」
「本当にありがとうございます! あなたみたいな方が領主様だったらどんなに良かったか」
呪術師を見送った後、部屋に戻り牢屋以外の魔法を解いて眠りについた。
翌朝、呪術師が居ない事で屋敷では騒ぎになっていたが、すでに領地には居ないため見つかる事はなかった。 数日調べても直す方法が見つからないため諦めたゼフィルは、アルバートを屋敷から追い出した。 いきなりの事で焦ったアルバートだが、取り合えずレオナール達のもとへ向かうことにした。
いきなり現れたアルバートに驚きながらも事情を聞いて納得したのだった。 十五歳までの残り一年の殆どを森で過ごすのだった。
そんなある日、森で異変が起きていた。 森の中心部で生息している筈のゴブリンが入口の方に現れるようになった。ゴブリンの生息地であった中心部はオークで溢れていた。
異変に気づいたレオナールはこの事をギルドに報告をしに向かったが、ギルドでもこの異変に気づいており、既に調査に行く冒険者が集められていた。 レオナール達が森で生活していることを知っているソニアは、レオナールにも調査に参加して欲しいとお願いするのだった。
「レオナール君にお願いがあるのだけど、今回の調査に参加してもらえないかな?」
「僕がですか?」
「ええ、レオナール君程森の奥地に詳しい人がそんなに居ないのよ」
「分かりました。僕も気になっていたので、どこまで役に立てるか分かりませんが協力します」
「助かるわ。会議室の方に皆集まっているからそちらに行ってもらえる?」
「分かりました」
レオナールは会議室へ向かい、中に入ると集まっている冒険者たちの視線がレオナールに集まった。 そんな中、集まった冒険者の一人が声を荒げた。
「なんでこんなガキが居るんだ?ギルドは真面目に調査する気あるのかぁ?」
その言葉がきっかけとなり他の冒険者も騒ぎ始めたが、そこにギルドマスターが現れ静まった。
「何を騒いでいる?」
「ギルマス!何故こんなガキがここに居るんだ?」
「こちらから参加を頼んだからだ!」
「本気か?調査に行くのは奥地だろ?それなのに、こんなガキじゃ足手まといだろ!」
「多分だが、ここに集まっているお前達より森に詳しいと思うが、それでも不満か?」
「なっ、俺たちよりこんなガキの方が詳しいなんて有り得ねぇだろ!」
「数年間の殆どを森の奥地で生活している奴より自分たちの方が上だと言いたいのか?」
「え……、こんなガキが奥地で数年生活だと!嘘だろ」
「本当の事だ。だから今回参加を頼んだのだ」
「ギルマスがそこまで言うならここは引くが、足手まといだと思ったら置いて行くからな」
「分かりました」
ギルマスの説明を聞き一応納得した冒険者たちを見て会議が始められた。 会議の結果すぐに向かうことになり各々が準備の為に一旦解散した。 レオナールはアルバート達に説明する為先に森へ戻り途中で合流する事になった。
アルバートとシレンと共に調査隊に合流し調査を始めた。 奥に進むにつれてオークの量が増えて行くが、今回集まった冒険者は高ランクの為苦戦することなく進むことが出来た。 レオナールの戦闘を見た冒険者たちに実力を認められていった。
調査を進めて行く内にオークの集落を発見した。 集落にはオークキングを筆頭に数十体の上位種に数百体のオークを見つける事が出来た。 話し合いの結果このまま殲滅する事に決まり、離れたところに拠点を作り交代で見張りをしながら休むことになった。
翌朝、全員の準備が終わり集落の殲滅が開始された。 今回は他の冒険者が居る為、ルーンに助けを頼むことはできなかった。 高ランク冒険者だけあって、オークの数がどんどん減っていたが、負けじとレオナール達も倒していった。 残るはオークキングだけとなり、全員で力を合わせ倒す事にした。
「残るはオークキングだけです!」
「こいつは流石に全員でやらないと無理だな。 もうひと踏ん張りだ!行くぞぉ‼」
「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」
「ブモォォォォォォォォォ!」
大分時間が掛ったが倒すことが出来た一同は、そのまま拠点に戻り翌朝帰ることにした。 翌朝、レオナールだけが冒険者たちと一緒に帰ることになり、そろそろ十五歳になるのでついでに家に顔を出すことにした。
ギルドに着き報告が終わると一緒に行った冒険者たちに「祝勝会だ」と誘われ一緒に酒場に行く事になったが、レオナールは未成年の為ジュースを飲んでいた。 祝勝会も終わり離れの部屋に帰ったレオナールは、時間が遅かった為翌朝会いに行く事にした。




