第11話 作戦とスキル作成
レオナール達は部屋で、ゴブリン集落での不甲斐ない結果の反省会をしていた。
「兄様、今回は本当に大変でしたね」
「そうだね。 でも、いろんな意味で成長できたと思うよ」
「はい。ゴブリン位なら何とかなるって思ってました」
「それを分からせるためにルーンはやらせたのかもね」
「今回の戦いで自分に何が足りないか知ることが出来ましたもんね」
「今後の課題が分かったんだから落ち込んでる暇は無いな!」
「そうですね!もっと強くなってあの人たちを見返せるように頑張ります!」
ゴブリンとの戦闘を経て自分に足りないものを確認する事が出来たのであった。 レオナール達が部屋でそんな話をしている頃、ギルドではレオナールがフェンリルをテイムしているのでは無いかとゴブリン集落での戦いを目撃した冒険者達に噂されていた。
久々に依頼を受けようとギルドに行くと色々なところから視線を感じた。気になったレオナールはソニアの所へ向かった。
「おはようございます。なんか今日妙に見られてる感じがするんですが何かあったんですか?」
「おはよう、レオナール君。ああ、それはね、フェンリルの騒ぎがあったじゃない?」
「はい」
「それにレオナール君が関わってるんじゃないかって噂があるのよ!」
「何でそんな事になってるんですか!?」
「それは…レオナール君が冒険者登録をしてすぐにフェンリルの騒ぎが起きて、森に行かなくなってから収まったじゃない?それに、昨日のゴブリン集落の件も在ってテイムしてるんじゃないかって言われてるのよ!」
ソニアに理由を聞きこのままじゃ不味いと思ったレオナールは、関わりの長いソニアとギルマスにだけ本当の事を伝えることにした。
「そうなんですね…ギルマスとソニアさんにだけ報告したい事があるので呼んでもらえますか?」
「ちょっと確認してくるわね!」
ソニアが確認しに行き許可が下りたと言われ一緒にギルマスの部屋へ通された。
「報告があると言う事だが昨日の件か?」
「昨日の件と関係はあります」
「でも、何故ソニアも一緒なんだ?」
「ソニアさんにはお世話になってますし、今後の事も考えると知っていてもらっといた方がいいと思ったので。 なので、他の方には言わないで欲しいです」
「それは大丈夫だ。犯罪を犯したとかなら別だが、それ以外なら言いふらしたりする事はしない!ソニアも分かったな?」
「はい!。分かりました!」
ソニアとギルマスにシレンの事やルーンの事等すべてを話し、報告していなかったことを謝罪した。 説明を聞き終えたギルマスたちはその内容に固まっていた為、レオナールの謝罪は聞こえていなかった。 我に返ったギルマス達は噂は本当だったのかぁと頭を抱えた。
「この内容なら報告を躊躇うのもしょうがないが、何故今報告しようと思ったんだ?」
「それは、最近ギルドで噂されていると聞いて、このままでは不味いと思ったので報告しようと思いました」
「フェンリルをテイムしたと言う事は、今後何かあった時は助けてくれると言う事で大丈夫か?」
「それはルーンに聞いてみないと分かりませんが、変なちょっかいを出さなければ友好な関係でいれると思います」
「あのフェンリルにちょっかいを出す馬鹿は居ないだろ! それにしても、フェンリルに子供が居たとは驚いたな! しかも、そのフェンリルを子供共々テイムしてしまうとはな!」
依頼を受けに来たはずのレオナールだったが、噂の事を知り予定外の時間を食ってしまった為、その日は依頼を出来ずに帰ることにした。 家に着き今日の出来事をアルバートに伝え、話し合いをして眠りにつくのだった。
あれから三年経ちレオナールは十四歳になった。 レオナールの噂はされなくなっていた。 三年で皆成長し、アルバートは色々な魔法を覚え攻撃の幅が広がり、今まで使えなかった付与魔法も少しづつ使えるようになっていた。 シレンはついに【念話】を使えるようになり、アルバートはもちろん、嬉しさのあまりソニアにも話しかけてしまっていた。 レオナールは色々な戦術を覚え作戦を立ててルーンの力を借りずに殆どの魔物を倒す事が出来るようになっていた。
レオナール達は森に籠るようになり、家に帰ることが殆ど無くなっていた。 何故帰ら無くなったかと言うと、帰るたびにゼフィルと言い合いになり、このままだとルーンが本当に街を襲いに行きそうだった為こうするしかなかった。 ギルドには顔をだし依頼を受けていた為、レオナールの冒険者ランクはCランクに上がり、アルバートもDランクに上がっていた。
後一年で追放されるレオナールは今後について話し合っていた。
「後一年で僕はここに居なくなるけど皆はどうする?」
「(ご主人!僕は一緒に行くよ?)」
「(私も付いて行くつもりだよ!)」
「ルーンが居なくなっても平気なの?」
「(私に臆して住処に籠ってる奴らが活発になるだろうけど、私には関係ないね!)」
「兄様とはあと一年でお別れですね」
「その事なんだけど、もうあの家には居たくないから僕も一緒に行こうと思ってるんだ」
「えぇ!でも、あの人が許してくれないんじゃ…」
「あの人たちに何を言われても、もう従うつもりはないよ!」
「一緒に来てくれるのは嬉しいけど、無茶なことはしないでくださいね!」
「それは約束できないよ!」
アルバートの言葉に、あの人たちがすんなり許可してくれるはずはないと分かっているレオナールは不安に感じていた。 今度は、アルバートをどうやって連れ出すかの話し合いが始まった。
「兄様どうやって説得するつもりですか?」
「え?別に説得するつもりはないよ?」
「説得しないってどうやって付いて来るつもりなんですか!?」
「うーん、どうしようかなぁ… あ!そういえば、レオナール面白いスキル持ってたよね?」
「? 面白いスキルですか?」
「前に教えてくれた【創造の才能】ってスキルだよ! 確か、スキルも作れるんだよね?」
「使ったことはないですけど、一応作れるみたいですね」
「そのスキルを使って新しいスキルを作ればいいんだよ! 例えば、【付与術】を作って内容を【隠蔽付与】にしてそれを僕に付けてスキルが無くなったようにしちゃえばいいんだよ! そうすれば僕はスキルを持ってない無能になるから何も言われなくなるでしょ?」
「分かりました。出来るか分からないですけどやってみます!【創造の才能】!」
{創造の才能が発動されました。何を創造しますか?}
「うわ! 今の声はどこから!?」
「いきなりどうした?レオナール」
「何でもないです」
〔僕にしか聞こえてないのか? じゃあ、スキルの創造で〕
{スキルの創造ですね?どのようなスキルを創造されますか?}
〔【付与術】の創造〕
{付与術ですね?付与の効果の創造をお願いします}
〔効果は、スキル【隠蔽】の付与で〕
{スキルの創造に入ります。 スキル【付与術】効果【隠蔽】の付与の創造を完了しました。 スキル欄に追加されます}
「兄様!作れました!」
「本当! 早速使ってみてくれ!」
「はい!では、兄様に【隠蔽】付与」
レオナールがスキルを使うとアルバートの体が少し光った。 成功しているか確認の為、レオナールがアルバートに【鑑定】を使って調べるとちゃんとスキルに隠蔽が付与されていた。
「兄様、ちゃんと付与されてるみたいです!」
「分かった。ちょっと使えるか試してみるから出来てるか確認してくれ」
アルバートに頼まれて【鑑定】を使ってみるとスキルの横に(隠)の文字がちゃんと付いていた。 レオナールの【鑑定】は、他の【鑑定】と違い【隠蔽】で隠しているスキルまでも見ることが出来ていた。
「大丈夫です!ちゃんと使えてます」
「それじゃあ、次帰った時にスキルが使えなくなったって騒いでみようかな? そうすればあの人の事だから、すぐに教会に連れて行って確認するだろうし。 でもそれだと、レオナールのせいになっちゃうか?」
「あと一年位なんてことないので大丈夫です!」
「またそんなこと言ってぇ。 僕はレオナールのせいにならないようにしないとな!」
そう言うと、アルバートはその場で考え込んでしまった。 レオナールは、ほとんど帰る事が無くなったため、今更何を言われても大丈夫だと本気で考えていた。
レオナール達は、ルーンが居なくなる事で起こる災害についてギルドに報告しておくために明日一度帰ることにし、そのついでに先ほどの作戦を実行する事にした。




