第10話 怒り
ルーンに魔法を教えてもらう約束をしたアルバートは、さっそく魔法を習っていた。アルバートが魔法を習ってる間に、レオナールとシレンは練習の為の魔物を探しに行くのであった。 ゴブリンを見つけたレオナール達は、ゴブリンを誘導してアルバート達の居る所へ戻り魔法と連携の練習を始めた。 そんな事を繰り返し
やり連携は上達したが、魔法の方は発動までには届かなかった。 その日は帰ることにし、二日後準備をして泊まり込みで鍛えることにした。
「ルーン今日はありがとう!また二日後来るから!」
「ルーン二日後来るからその時また魔法教えてね!教えてもらった魔法は明日練習しておくよ!今日はありがとう」
「バウ!バウバウー(お母さん!またねー)」
「(ええ、待っているよ! あと、練習もいいけど無理は駄目だよ!)」
ルーンに別れを告げてレオナール達は帰っていった。
家に着いてそうそうアルバートは、ルーンに教えてもらった魔法の復習をしていたが、レオナールに注意され渋々止めて眠りについた。 朝起きると、アルバートの姿が無くどこに居るのか探していると、離れの裏手で魔法の練習をしていて、それを見つけたレオナールは呆れながら声を掛けた。
「はぁ、兄様こんな朝早くに隠れて何してるんですか!」
「いやぁ、目が覚めちゃって……。 だから、魔法の練習でもしてようかなぁーって」
「昨日もあんなに練習してたんですから、ちゃんと休まないと体が持ちませんよ!」
「それは分かってるけど、新しい魔法って思うとわくわくしちゃってゆっくり休むなんてできないよ!」
「嬉しいのは分かりますけど、程々にしてくれないならルーンに言って教えるの止めてもらうからね!」
「そんなぁ」
「悲しそうにしてもダメです!分かったら、ちゃんと体を休めてください!」
レオナールに怒られアルバートはちゃんと休むことにした。 その後、明日の野営の買い出しや準備をしてその日は終わった。
翌朝、荷物を持ち森に向かおうとするレオナール達の前にゼフィルが現れた。
「お前達何処へ行くつもりだ!」
「あなたには関係ない事です!そこを退いてください!」
「お前みたいな奴が何処で野垂れ死のうと構わないが、アルバートがお前と一緒に行く事を許す訳にはいかないな!」
「なっ。まだそんな事を言ってるんですね!お父様は!」
「そんな事とはなんだ! 俺たちはお前の事を思って言ってるのが何故分からない!?」
「その思いを少しでもレオナールに向けれないのですか!」
「こんな無能が生まれてきたこと自体が我が家の恥だ!こんな奴生まれて来なければ良かったのだ!」
「そこまで腐って居るとは思いませんでした。 僕は絶対に貴方たちの言いなりにはなりません!もう僕に関わらないでください!」
「そんな事が許されるとでも思っているのか?」
「僕はあなたの奴隷じゃ無い!許す許さないなんて関係ないです!勝手に行かせてもらいます!」
アルバートはゼフィルの言葉にとうとう怒りを爆発させて、止めるゼフィルを気にも留めずレオナールと森へと向かった。
森に着いたレオナール達はいつも通り魔物の強襲を受けたが、アルバートが先ほどの鬱憤を晴らすかのように魔法をぶっ放しすぐに倒していた為、レオナールとシレンは手を出す隙もなかった。 そんなアルバートの姿を見て、レオナールとシレンは今後怒らせては駄目だと思いながら進んでいると、いつの間にかルーンの住処についていた。
ルーンは前回と、雰囲気の違うアルバートを見て何があったのかレオナールに訪ねた。 聞かれたレオナールは朝の出来事を説明すると、理由が分かったルーンも怒り始めた。それと同時に、ゼフィルに言われたことに反論もせず言われるがままのレオナールの事も叱り始めた。
レオナールは、ゼフィル達の自分への扱いに慣れてしまっている為、何故自分が怒られているか理解できずにいた。 最初のころは色々な感情のあったレオナールだが六年以上もそんな扱いをされていた為、何も思わなくなってしまっていた
「(なんでレオナールはそこまで言われて言い返さないのさ!)」
「いや……それは、ずっとそんな扱いされてきたから……。 それに、言い返そうものなら何をされるか分からないから」
「(そんな人間私が行って懲らしめようかね!)」
「そんなことしちゃ駄目だよ! いくらルーンが強いからって街に行ったら討伐されたうよ!」
「(そうは言うけどレオナールがそんな扱いされて黙って居られる程、私は優しくないからね!)」
「ルーン達が怒ってくれるだけで僕は幸せだよ!」
「(まあ、本人がそういうなら、仕方ないねぇ。 ただ、また同じような事があったら容赦はしないからね!)」
「だから駄目だってぇぇ!」
「(坊や、今度同じような事があったら教えておくれ! レオナールは隠しそうだからね!)」
「バウバウ!(わかった!)」
「レオナール、皆お前の事を思って言ってくれているんだ!だから、自分の事も大切にしてくれ!」
レオナールを叱り終わった後、皆で野営の準備に取り掛かりそれが終わると特訓を開始した。 ここまで来るのに魔法を使っていたアルバートは少し休憩を取りレオナールとシレンはルーンの指導のもと基礎的な事や連携の特訓をしていた。
レオナールとシレンの特訓が一通り終わると、今度は休憩を終えたアルバートがルーンもとへやって来た。 二日前ルーンに教えてもらった魔法の練習を引き続き行っていると、コツを掴んだのか少しずつ使えるようになっていった。 その日は特訓を早めに切り上げ各々休息をとったのであった。
翌朝ルーンに連れられ森を探索していると、レオナール達はゴブリンの集落を見つけた。 規模は大きくゴブリンの上位種なども居た為、戻ろうとしたレオナール達にルーンは待ったをかけた。
「どうしたの?ルーン?」
「(いい戦闘の練習になるから見逃すのが惜しいと思ってね。 私もフォローするから戦ってみないか?)」
「この人数じゃ確実に危険だと思うけど……、兄様はどう思いますか?」
「正直やめるべきだと思うけど、ルーンが大丈夫だと言ってるのならどこまで成長したのか試したい気持ちはあるかな?」
「バウ!バウバウ!(ご主人!やろうよ!)」
「皆がそこまで言うならやってみようか? でも、危なくなったらすぐに逃げるからね!」
その場で戦うことを決めたレオナール達は、覚悟を決めて戦いに挑んだ。
「僕とシレンは近場のゴブリンから減らしていくので、兄様は魔法で牽制しつつ上位種が出てきたら足止めをお願いします! ルーンは状況を見て危なそうだと思ったら助けてくれ」
「バウ!(うん!)」「分かった!くれぐれも無茶をしないように気を付けよう!」「(分かったわ!)」
「それじゃあ皆頑張って切り抜けよう!」
レオナールの作戦どうり動いていた皆だが、五十匹を超えるゴブリンと数匹の上位種に最初は善戦していたが連戦による疲れが現れ押され始めていた。
「レオナールこのままだと不味いぞ!どうする!?」
「こっちも抑えるのがやっとの状態でこれ以上は無理そう、だからルーン後はお願い!」
「(分かったわ!ちゃんと自分たちの限界を見極められてたみたいで安心したよ! アルバートは魔法を打つ余裕があるなら隙を見て打ってもいいわよ!)」
「わ、分かった」
後はルーンに任せ後ろに下がったレオナール達の顔は悔しそうだった。 ただ、アルバートだけはまだ諦めておらず、練習していた魔法を何度も打とうと試みていた。 そんな中ルーンはどんどんゴブリン達を倒していった。 それでもめげずにアルバートは魔法を打とうと頑張っていると、ついにその時が訪れた。
「ここまでみんなで頑張って来たんだ!お願いだ成功してくれぇぇぇ!『スライシング ゲイル』‼」
アルバートの頑張りが届いたのかゴブリン達に向かって無数の風の刃が飛んで行きどんどんゴブリン達の命を刈り取っていった。 もちろんその中には上位種も混じっていた。 アルバートは魔法を放つとその場に倒れこみそうになったが既の所でレオナールが支えた。
アルバートを支えながら魔法が放たれた方を見ると、残っていたほぼ全てのゴブリンが倒されていた。ルーンがまだ戦って居るのに気がづきそちらを見ると、ゴブリンキングと戦って居る所だった。 ルーンがゴブリンキングを圧倒している所を食い入るように見てると、少ししてゴブリンキングが倒れ戦いが終わった。
ルーンが戻って来て、アルバートを背に乗せた。 そのまま住処に戻ると先ほどまでの緊張が一気に解け疲れがどっと押し寄せて来たレオナールとシレンは倒れるようにして眠ってしまったので、ルーンはその隣にアルバートを寝かせた。 レオナール達が起きたのは次の日の朝だった。
「ルーン昨日はありがとう!助かったよ」
「(いいのよ。 昨日は皆、限界まで頑張ってたもの!)」
「僕からもお礼を言わせてくれ!ルーンのお陰で新しい魔法を覚えることが出来たよ!」
「兄様の魔法本当にすごかったです!」
「はは、使った後すぐに気を失っちゃったからあんまり覚えてないんだけどね」
「(アルバートの頑張りの賜物だから礼なんていらないよ!)」
「僕たちはそろそろ帰るよ。昨日の事もギルドに報告しなくちゃいけないし!」
「(ええ、気を付けて帰るのよ!)」
レオナール達はギルドに着き、すぐにソニアに報告しに行くと、ギルドマスターの部屋に案内された。事情を聴かれ、倒したと報告するとすごく怒られた。 ルーンをテイムしている事は言えないので、いきなり現れて助けてくれたと報告した。 ギルマスは、フェンリルがどうして?っと不思議に思っていたが言及はされなかった。 報告が無事終わりギルドを後にしたレオナール達は露店でご飯を買い帰っていった。
「兄様、今回は大変でしたね!」
「そうだね!でも、成果もあったから無駄ではなかったよ!」
「今後の自分の課題も分かったので、より一層頑張りましょう!」
「そうだね!もっと強くなってゴブリンの集落ぐらい僕たちだけで落とせるようになろう!」
「バウ!(おう!)」




