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今すぐ出て行ってもろて

 

「あら、heaven's kissの純樹君と奏君じゃない。それと良介君まで」


「あ、本当だ。だいぶ酔ってるみたいだね」


 後ろから覗き込むようにインターホンを見に来た2人が口々にそう言った。

 すると後ろで青ざめていたはずの真奈美が少し嬉しそうな声を出し「え!?純樹と奏が来たの!?」なんて言い出す。

 三軍共は所詮ファンの集まりだからな、バンドメンバーに会えること自体が嬉しいらしい。

 こんな状況なのにも関わらずよくもまあそんな嬉しそうな声をだせるよな。


「……こんな時間になんの用だ?それにどうやって ロビーのロックを解除した?」


 仕方なくインターホン越しに話しかけると、かなり飲んできているのか、へらへらした表情の純樹が「俺が咲夜の事で知らない事なんてある訳ないだろ~!」なんて気持ち悪い事を言い出している。


 そう、そもそもこのマンションはロビーに入る前にロックを解除しないと各部屋のインターホンを押すことも出来ない仕様になっている。

 宅配業者であればロビー前のコンシェルジュにセキュリティを解除して貰えるが、コイツらを宅配業者だとコンシェルジュが思うはずもない。


 となると…緊急用として解除ナンバーをマネージャーに教えていたから、恐らくそれが伝わっていたのだろう。()()()として。

 今は全く緊急な事態だとは思い難いが。いや、ある意味俺は緊急事態ではあるんだけど、こいつらがいると更に厄介だ。早々にお帰り願いたい。というかサッサっと帰れ。何しに来たんだ。


「おい!咲夜!お前はなぁ!いやいいからとりあえず開けろ!」


「咲夜サーン、悪いんスけど開けてくれないと近所迷惑になっちゃうッス!こうなった純樹さんは俺らじゃ止められないッスよ~」


 ここに来る前に散々止めたのであろう良介が申し訳なさそうに、そして焦って手を合わせて謝っている。

 が、いつもなら一緒に止めたであろう奏までヘラヘラしている。


「良介、悪いが連れて帰ってくれ。明日は俺もそいつらも事務所で仕事があるし、そもそもそんな酔っ払いを家に入れるのはごめんだね」


「良いじゃない、咲夜。少し上げてお水だけでも飲ませてあげたら?」


「そうだよ、2人ともかなり酔っ払ってるみたいだし、このままだと良介くんも可哀想じゃない?」


 ……。

 くそう、三軍共と美優はともかく夢々がいるのもあって、むやみやたらに無下にも出来ないか。


「ったく……仕方ないな。水飲んだらさっさと帰ってくれよ。ほら、玄関ロックを外したから入って来い」


 モニター横のセキュリティ解除ボタンを押して玄関ロックを外すと、バタバタと音を鳴らして数人が家へ入ってきた。


「いやあー、ほらな!咲夜は絶対入れてくれるって言っただろー!」


「咲夜さん、マジですんませんッス!」


「こらこら良介が謝るような事じゃないだろ〜」


「お、お邪魔しま〜す…」


「うわあ〜…咲夜さんの部屋初めて入ったー…」


 これでもかと言うほどに酔っ払った純樹、何度も謝りながら純樹に肩を貸している良介。

 その傍には、珍しく酔っ払っている奏と、それに付き合わされたであろう林と中村がキョロキョロしている。

 そんなコイツらをキラキラとした目で見ている真奈美と遥。

 全くなんなんだこの状況は。ヤバいな、頭がおかしくなりそうだ。


「はぁ…夢々、悪いがこいつらに水を持ってきてやってくれないか」


「う、うん!」


 こうなったらもう仕方がない。さっさと水を飲まして追い出せば良い。

 ったく、そもそも夢々と美優が入れてやれなんて言い出さなければ済んだものを。


 俺の言葉通り、キッチンへ水を取りに行った夢々は、高級グラスへ水を注いでいる。

 ばっ…!ばかか!そんな高級なグラスで、こんなアホ共に水を渡すやつがあるか!!

 こいつらには紙コップすら勿体無い!ペットボトルでそのまま渡せば良いんだ!


 なんて俺の気持ちなんてつゆ知らず。

 渡された水をグビグビと飲み干した純樹は夢々の顔をじっとみて、思い出したかのような表情をした。


「ん?…あれ、夢々ちゃん?それに美優ちゃんじゃん!なんで咲夜の家にいんの?てか、あっちの2人は…誰だ?」


「ん、えっと…私は一応今日咲夜に呼ばれてここに来たんですけど…」


 夢々が俺をチラチラと見ながらそう答えると、美優がまた出しゃばるようにペラペラとその口を動かし始めた。


「私たち今日はheaven's kissのライブお疲れ様って事で咲夜の家で飲んでたんです。そっちの2人も一緒に。ついさっきまで、あと2人いたんですよ」


「ん〜?おいおい〜俺たちとの飲み会にはめっきり顔出さなくなった癖に〜咲夜〜どう言う事だ〜?んん〜?」


 何ともウザい絡み方をしてくる奏は、完全に酔うと正直純樹よりも鬱陶しいかもしれない。


「え?そっちでも飲み会してたの?やだ咲夜、言ってくれれば私たちは後日で良かったのに」


 わざとらしくそういう美優は展開が自分有利になったと言わんばかりだ。ずっと黙っている真奈美と遥に至っては先程まで青ざめていた顔はもはや見る影も無く、酔っ払っている純樹と奏を見つめながら「どうしよう!じゅ、純樹と奏だよ!遥サン!」「そ、そうですね…!これは…!凄い事に!」なんて小声で話しているが丸聞こえだ。


「でぇ〜?どういう状況なんだぁ〜?咲夜ぁ〜夢々ちゃんと美優ちゃんまで連れ込んで〜」


 ずっしりと俺の背中に覆い被さるようにもたれかかってくる奏が実に鬱陶しい。

 …何だか面倒臭い展開になってきてしまったな。


 こんな事なら片付けなんてどうでも良いからさっき全員帰しておけば良かった…ん?あれ、と言うか、そういえば何でこいつら知り合いなんだ?

 夢々と美優がheaven's kissのメンバーを知っているのはまあ、わかる。一応バンドのメンバーだしコイツらも芸能人の端くれだからな。

 だが、初めてあった感じでもなし、何ならさっきのインターホンの時、突然の事で忘れていたが、良介の事も知っている口振りだった。


「…なあ、夢々と美優ってこいつらと知り合いだったのか?」


「え?咲夜さん、何言ってんスか?二人とも同中じゃないっスか、俺の同級生ッスよ。咲夜さんの後輩!いつもライブも来てくれてたじゃないっスか〜!」


 キョトンとした顔で良介が自分と夢々、そして美優を交互に指さしてそう説明した。


「は?嘘だろ?」


「いやいやホントッスよ!何いってんスか咲夜さん、覚えてないんスか!?」


「はあ!?咲夜おまっ…知らずに一緒にいたのか!?ってか、逆にどうやって再会したんだよ!?」


 いやいや、中学生の頃なんて取り巻きの女子が多すぎて後輩の顔と名前なんていちいち覚えちゃいない。

 と言うか、夢々と美優もなぜ今の今までそれを黙っていたのか。

 いや、美優に関してはわざと黙っていたに違いない。が、夢々がそれを隠していた意味がわからない。

 まあ同じ中学の後輩だったからどうって訳じゃないが、この状況で俺だけそれを知らなかったと言うのは何だか気分は良くない。


「どうやってって…半年前くらいだったか?ラジオ収録の時にスタジオで会って、ファンだって言うからサインしたんだよ。で、連絡先を渡されたから一度会って、その後から何度か食事したんだよ。な、夢々」


「あ、ええ…うん」


 そう言いながら夢々の肩を引き、抱き寄せた。が、なんだか夢々の歯切れが良くない。くそ、まさかさっきの美優の話の方を信用し始めているのか?


「待て待て。咲夜お前それって…その収録の日、俺らの後の番組誰がやってたか知らないのか?」


 水を飲んで少し酔いが覚めてきた様子の奏が眉を歪ませながら俺をみている。


「さあ、誰か何かやってたっけか?」


「夢々ちゃんだよ、本当に知らなかったんだな。」


「…は?な、何で夢々がラジオ収録を?人気インフルエンサー特集でもやってたのか?」


 夢々を見るが「あ、えっとぉ…」と目をそらされてしまった。

 なんだ、なんなんだよ!本当に!


「いやいや咲夜さん、何でって夢々さんって結構人気な声優さんですよ!」


 林がそう言いながら、中村と目を合わせ、ウンウンと頷いている。

 驚きながらも夢々を見ると、夢々は少し焦りながらも苦笑いで俺に何か言いたげな感じだ。


「あの〜ちなみに何ですけど、そちらの美優さんも業界では結構有名なマスコミの方、ですよね…はは」


「なっ…、は!?美優がマスコミ!?」


 中村のとんでもない一言で俺が美優を見るとヤレヤレと言わんばかりのため息をついた美優が俺をみている。


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