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冒険者様

 とは言っても、まだ朝の7時になったばかり。


 宿屋も今開店した所だ。

 一応覗き込んでは見るけど、きっと客はほとんど0だろう。

 あのまま寝たなら多分ゴブリンも強制ログアウトだろうし、朝っぱらから再ログインするかも不明だ。


「いらっしゃいませ、冒険者様。お食事ですか?宿泊ですか?」


「え、あ…いや私は、」


 先ほどの事がなかったかのようなステファの態度に驚きながらも、店の中を見渡す。

 やはり客はまだ誰もいない。


「あ、あの、ステファ」


「はい?」


「さっきの話なんだけど」


「…ええっと、申し訳ございません冒険者様、先ほどのお話、とは?」


 キョトンとした表情で首を傾げるステファは困った表情で私を見つめ返す。


「え?」


 いやいや、ほんの数分前の…てかあれ?


「これ、ほら」


「あら!これは宿のブランケットですね。持ち出しは困りますよ、冒険者様」


「え、あ…あぁ、ごめん」


 ぎこちなく謝り、ブランケットを返却すると綺麗にたたみ直したステファは2階の宿スペースへとブランケットを片付けに行ってしまった。


 …もしかして、さっき話しかけてきたのはステファじゃなかった?


 ファスプレのNPCはよく出来ているが、プレイヤーの呼び方は皆一貫して『冒険者様』だ。


 だかしかし、先程公園で話しかけてきたステファはどうだった?

 最初こそ冒険者様と呼んでいたが、途中から『貴女』と呼ばれていた気がする。

 まあ、気が動転しすぎてて定かな記憶ではないけど……


 それにやっぱりNPCからプレイヤーに話しかけるなんてイベント聞いた事が無い。

 となると、化粧アイテムで誰かがステファそっくりに変身して私に話しかけてきたっていう方が説明がつく。


「…でもなんの為に?」


 うーん、と腕を組んで考え込んでいると「おう、冒険者様じゃねえか。食ってくのか?泊まってくのか?」と食堂のキッチンから声が聞こえてきた。


「あ、ああええっと、」


 声の主はダム、この店のシェフでステファの兄という設定のキャラクターだ。


「ん?ステファのやつはどこ行った?」


「ああ、えっと…宿スペースに物を片付けに行ったみたい」


「そうか、んで?冒険者様よ、食ってくのか?」


 こいつはこいつで、またNPCらしく食事をするのかと同じ事を何度も聞いてくる。


「い、いや、今はいいや」


 そう言い、階段をちらりと見るが、ショウもゴブリンも降りてくる様子は無い。

 いや、そもそもあの時間から宿に泊まっているんだ、眠ってしまったならそろそろ強制ログアウトになっているだろう。

 再ログインしたら部屋に現れるはず。

 もし、なかなかログインせずに宿泊時間が過ぎたら部屋の前でログインになるはずだ。


 いずれにせよ、2人ともこの宿からスタートだ。


 ここにいればいずれ会えるだろう。

 が、しかし…


 ここで座って待っているとまたダムに「食ってくのか」と聞かれそうだ。

 もはや今にも同じ事を発しそうな顔をしている。


「一旦出るか…」


 ステファも降りてくる様子は無いし、それに先程の公園で会ったステファの事も気になる。

 誰がなんの為にステファに成りすまして私に声をかけてきたんだろうか。


 しかもわざわざ課金アイテムまで使って。


「化粧アイテムって結構高かったよね…?」


「なにブツブツ言ってやがるんだ?食ってかねえのか?」


「いやだから今は良いって!」


 ここにいたらきっと永遠に聞かれるであろう言葉に大声で返事をし、とりあえず宿屋を出た。


 なんだか考え事が多すぎる気がするが、まあとりあえずは宿屋からショウかゴブリンが出てくるのを待つか…


 そんな風に思いながら宿屋の入口外の壁にもたれかかった。


「はぁ〜…今日は大学休むかぁ…どの道オールしちゃったし、まともに授業を聞ける気がしないし」


 誰に言うわけでもなく大きな独り言を言いながら、仰ぐように空を見上げる。

 ファスプレの空は今日も晴天だ。

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