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エールの飲み過ぎにはご注意を

 ゴッゴッゴッゴッ…!


 アタシらにもはっきりと聞こえるほどに喉を鳴らしながら勢いよくエールを流し込むゴブリン。

 どんだけ喉乾いてたんだよコイツ。いや、つかそもそもファスプレ内で喉乾くとかいう概念ないから!喉乾いてんなら一回ログアウトして何か飲んでこいよ。


「ッ!プハァーーーー!」


 そして死ぬほど美味そうに飲み干すとそう息を吐いた。


「……う、美味いぞ…!!?」


 不思議なもんで、実際に喉が潤ったりはしないが何故か若干味覚を感じるのだ。

 鮮明に味を感じる訳じゃないけど、美味しい、不味い、などの感覚が感じられる。

 本当、このゲームどうなってんだろうか。


「だろだろー!?この店のエールはマジで最高なんだよ!」


「あははウケるゥー!エールはどこの店でも美味いっつーの!あんたはステファがいるこの店で飲むエールが好きなだけっしょー」


 ショウの話に合わせるようにアタシは適当な事を言い、二人の様子を伺う。


 飲み干していたと思っていたジョッキにはまだ少しエールが残っていたのか、名残惜しそうに中身を見つめたゴブリンがジョッキに口をつけ再度エールを飲む。

 最後にはジョッキを逆さまにして最後の一滴まで楽しむように、今度こそ飲み切ったらしい。


「…プハァ!」


「いいねいいね!ゴブリンいける口じゃん!ウェーイ!」


「まあね」


 ショウがゴブリンに向けて手のひらをかざすと、実に楽しげにパン!とハイタッチなんてしている。

 だが、一気飲みしたエールで酔いが回ったのかふらつくゴブリンの表情が突然強張った。


「…!お、お前!もしや俺に何か盛ったのか!?エール飲み干したら何か、おっと…おかしいぞ!」


「は?何言ってんだ?ハハ!そりゃエール飲んだんだからな、酔うだろ」


「ゴブリンウケるゥー!」


 アタシらの言葉にポカンと口を開け、ハッと気が付いたように周りをキョロキョロと見渡している。


「っえ、こっちで酒飲むと酔うのか!?」


 おそらく、周りの人たちもエールで酔っ払い、酒盛りをしている事に今気がついたのだろう。

 そしてアタシとショウの状態にも納得といった表情だ。


「ウェーイ!やっぱり知らなかったのか!アハ!最高な気分だろ?因みに、現実世界のビールとかと違って、こっちの世界で飲むエールはかなり酔っ払うから気を付けて飲めよー、コレはファスプレ歴半年の俺様からの忠告だぜ」


 ショウがそう忠告したところで煽るようにゴブリンの手元のジョッキを指差す。


「ホラホラ、エール足りてないんじゃないのぉ〜?」


 そんな言葉にゴクリと喉を鳴らしてステファを目線で探しているのがわかる。


「ステファちゃん、だっけ?エール一杯貰える?」


「はい、わかりました。お待ちくださいね」


 もはやショウの手のひらの上で転がされるようにエールを注文するゴブリンはアタシらに声をかけてきた目的すら忘れているようだ。


「フゥ!いいねいいね!ゴブリン最高じゃん!」


 こいつはこいつで…さっきまでそんなキャラでしたか?ってくらいのキャラチェンだ。


「ファスプレ初日で君たちみたいな人と知り合えて良かったよ、エールの良さも知れたしね!」


 ステファから新しいエールジョッキを受け取ったゴブリンが、そのままアタシとショウに向けて腕を伸ばした。


「だろだろー!?ゴブリン話わかる奴じゃん!いいねー!」


「はー?アタシは最初からゴブリン最高って思ってたしい〜!」


 それに応えるように、アタシらもジョッキを持って腕を伸ばす。

 コン!と木製のジョッキがぶつかり合い、そのまま3人ともエールを喉の奥へと流し込んでいく。


「プハァ!」


「ウェーイ、最高!」


「本当エール最高過ぎ〜!」


 そう口々に言うと「俺はショウだ、よろしくな!お前は?まさかゴブリン、なんて名前じゃないよな?」とショウがゴブリンに握手を求めるように手を伸ばした。


「違うって!俺はサク、…サクだ。よろしく」


 なんで2回言った。なんてツッコミたい所だが、ここはアタシもグイグイ行かなければ。

 不審に思われたら困る。


「何男だけで友情育んじゃって!私も入れてよ〜!私はルミだよ、よろしくねー」


 テーブルに肘をついて小さく手を振りながら笑いかけ「えへへー、サクくんだっけ?せっかくだしフレ登録しようよー」なんて言ってみる。この状況でフレ申請の話をしない方が不自然だろうし。

 ま、あとですぐに切るけどな。


「あ、ああ…そうしたいのは山々なんだけどさ…俺今日始めたばっかりで、変な噂も立てられたりで…だからフレンド作るのはもう少し後にしようと思ってるんだよね」


 おお、ナイス判断だよゴブリン。

 正直引け目を感じているからか、あとで切ると言ってもやはり繋がりを持ちたくはない。


「ええー、別に良いジャーン」


 だがすぐに引いてはおかしいと思われるだろうし、一旦食い下がりショウをチラリと見た。


 するとすぐに「そんな無理にフレンドにならなくても良いだろ、人には人のタイミングっつーもんがあるんだよ」と絶妙なパスを送ってくる。


 何だこいつマジで常習犯め。


「ま、そういう俺もサクとフレンドにって今思ってたんだけどな!だけど、そういう事なら今じゃなくても良いよな。また次、縁があれば次こそはフレンドになってくれよ!」


 なんて白々しい事を言うショウはアタシをみて露骨に心配そうな顔をし出した。


「って…おいおい、ルミ…お前流石に飲みすぎじゃね?ログアウトする?」


 時計をチラリと見れば、22時半だ。なるほど、あと30分ほどで一旦ログアウトの時間か。


「え〜、大丈夫大丈夫!最悪こっちで寝てくから〜!」


 実際酔っ払っているのも事実だけど、少し大袈裟気味にヘラヘラと笑いダラリと身体をテーブルに預ける。

 そろそろ寝たふりでもしてようかな。


「こっちで寝てくって、ゲーム内で眠れるの?」


「ああ、一応眠れるぜ。ただ、5時間以上眠っちゃうと強制ログアウトになっちまうけどな!ハハ!」


 そんな二人の会話も他所に、アタシは軽く目を閉じた。

 あと30分くらいしたらさっさとログアウトして、1時にまたログインか。

 今日は少し夜更かしになるなーなんて思いながら、本当に寝てしまわないように二人の会話だけは一応聞いておくことにした。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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