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エールとゴブリンと金

 ショウとアタシがそんな事を企てているとも知らずに、隣のゴブリンがあからさまに目線をキョロキョロと動かし始めた。

 そして少しだけ気まずそうにコチラを見る。

「隣には気がついていないふりをしろ」と言いたげにショウがアタシに目配せをしてくる。


「あの〜」


 そしてついにゴブリンが口を開いて、アタシとショウに話しかけてきた。


 まじか。ショウの計画通り過ぎて逆に怖いんですけど!

 とか思いつつも声かけられて初めて存在に気が付きました!なんて白々しい態度を取らなくてはいけない。


「ん?なんだ?...って!お前、もしかして噂の迷惑ゴブリン!?」


「うわ、本当だー!マジでゴブリンじゃん!」


 エールで酔っていて助かった。演技力なんて物は当然持ち合わせてないが、高いテンションでなんとか誤魔化せる。

 ショウをチラリと見れば、私の演技に満足そうな表情だ。


「いや、あはは...そんなつもりはなかったんだけど、いつの間にかそんな呼ばれ方をしていたようだね...」


 なんだか想像していたよりも謙虚なゴブリンだな。

 自分の事をheaven's kissの咲夜だとか喚き散らしたりするような奴には見えないけど…気が弱い演技とか?


「俺、ファスプレやったの今日が初めてで、色々分からない事が多いんだよね、良かったら教えてくれると嬉しいなー...」


 おおう…本当にショウの思惑通りすぎて怖くなってきた。


「ウェーイ!今日が初めてのファスプレ?最高じゃん、迷惑ゴブリン!何が知りたいん?ファスプレ歴半年の俺様がレクチャーしてやんよ〜フゥ!」


 少しの間も置く事をさせないように、ぶっち切りのテンションでショウがゴブリンに絡み出した。

 おっと…アタシにも絡めとショウの目線がビシビシと刺さる。


「ウェーイ!アタシも教えてあげるゥ!」


 エールの力を借りて渾身のテンションでゴブリンに話しかけてやる。

 するとまあ、そうだろうね…困惑を隠せない様子のゴブリンがアタシとショウを交互に見てくる。


「...えっと、ふたりともなんだか凄い酒に酔っているように見えるんだけど、ファスプレやる前に一緒に居酒屋でも行ってきたのかい?」


 やはりエールの存在を知らないのか、酒に酔った状態のアタシらを見て苦笑いをしている。


「はぁ〜?なわけないじゃーん!アハハ、このゴブリンウケるゥ!ウチらそもそもリアルで会った事すらないってえ!」


 ゲラゲラと笑いながらそう言い放ち、ショウに話を振るように目線を送った。

 初めて会ったやつと目配せだけで意思疎通できるのマジ怖…と思えるレベルでショウがアタシの考えを読んだかのような笑みでゴブリンの肩を引き寄せている。


「おいおい、お前ファスプレの楽しみ方をまだ知らない様だな!」


 そのまま半ば強制的に肩を組み、ドン!と音を立て、木製のジョッキを置いた。


「よし、そんな可哀想なゴブリンの初日を祝って、俺が1杯奢ってやるよ」


「え...1杯って、」


「おーい、ステファちゃん!こっちにエール1杯頼むよ!」


 ゴブリンの言葉を待つ前にどんどん話を進めるショウ。

 こいつ断る間も与えないように…絶対常習犯でしょ…


 ステファの「はーい」という声と笑顔に感心した様子のゴブリンが物珍しそうにステファを見てる。

 まあ、わかる。確かに最初はマジでビビるよな、ファスプレのNPCたちには。


「はい、お待たせしました」


「おっ、ありがとう!勘定は俺に着けといてくれな!」


「ふふ、わかりましたよ」


 だってこんな日常会話はお手のもの。

 普通に雑談だってできちゃうんだから。


 微笑みながらテーブルから離れるステファを見ながら「NPCながら本当に可愛いよなあー、本物なら口説いてるぜ」なんて言い、ショウがウットリした目線を送っている。

 果たしてこれは演技なのか、本当なのか…真相は闇の中だがアタシにとっちゃクソほどどうでも良い。


「ほら、奢りだ!飲め!」


 そして得意げにそう言い放ったショウは、エールが入ったジョッキをゴブリンの目の前にドン!と置いた。


 何か考えながら少し戸惑ってはいるようだが、おそらく「エールってビールだよな」的な感じだろう。

 この見た目で、それ以外の飲み物を想像するやつはおそらくほとんどいない。


「ほら、遠慮せずに飲んでみろって!疲れた1日の終わりに飲むエールは最高だぜ?」


 まだ迷っているゴブリンにショウが言葉巧みにそそのかす。

 ファスプレ内は太陽が上がっていても、夏だろうと冬だろうと気温は正直関係ないが、ゴブリンの額にはジワリと汗が滲んでいる。こいつ蒸し暑い部屋でゲームやってんのか?

 なんて考えていると喉をゴクリと鳴らしたゴブリンがついにジョッキに手をかけた。


「ほらほら〜グイッといっちゃいなあー!」


 それを煽るようにアタシも声をかける。


 ギュッと目を瞑ってみたり、ジョッキを握る手に力を込めてみたり、頭をブンブン振ってみたりとなんだか忙しそうなヤツだが、やっと思考がまとまったらしい。


 ギャンと目を見開いたと思ったら一気にジョッキを口元に運んだ。

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