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宿屋の食堂

「てか、何で宿屋な訳?酒が飲める場所なら酒場や食事処でも一緒じゃん?つか、初心者の多さで言ったら圧倒的に酒場と食事処の方が多いんじゃね?」


 宿屋は1階が食堂、2階が宿泊部屋となっている。

 もちろん、宿泊をせず食堂のみの利用も可能だ。

 その宿屋へと入ったアタシとショウは、1階の食堂で店員のNPCであるステファに案内され、エール片手にテーブル席へと座っていた。


 宿屋の食堂は食事処や酒場に比べて物が良い為、値段が高い。

 まあその分、バフ効果も味も最高に良い食事なんだけど。


 因みに、エールはどこで飲んでも値段は変わらず銅貨5枚という高級品。しかもなんのバフ効力もない完全なるただの嗜好品だ。

 がしかし、ゲーム内通貨で購入可能、しかも酔える!という最大の効果を発揮する為、ファスプレ内きっての人気ドリンクでもある。

 装備品なんかよりもエールの為に高額依頼クエストをやる人すらいるくらいだ。


「全然違うよ。確かに酒場は初心者も多い。けど、酒場に来る初心者はもう装備品を揃えてあるからね」


 なるほど…酒場の人達はもう支度金を使い終わってるって事ね。

 酒場には掲示板がある。そこには様々な依頼クエストが張り出されており、初心者はEランククエストを求めて集まってくる。


「んじゃ食事処は?」


 食事処なら料理の数も豊富で、高いものから安い物まで揃ってるし、初心者もよく利用する場所だ。


「食事処もダメ。あそこはコスパが良い店だからね、ある程度知識のある初心者が多い。冒険に出る準備が終わっている、若しくは準備中の人ばっかり。でも宿屋(ここ)は違う。」


 周りを見渡すように目線を這わせるショウ。

 まだ目星は着いていないらしい。


「宿屋は完全に上級者向けの店だ。宿泊バフや高い料理バフを求めてくる人が大多数。だけど稀にいるんだよね、その中に紛れ込む、何をしたら良いか分からないからとりあえず宿屋に来るって初心者が。ファスプレってさ、最初のチュートリアルで殆ど戦い方しか教えてくれないんだよね。だから自分で人に聞いたり、調べたりしないと食事の意味や宿泊する事の意味すら分からない…ルミ、君もそうやってレベルを上げてきただろう?」


「う、うん、まあ…確かに」


「だからその情報収集する時や、それに疲れて一休みしたいなーって気持ちの初心者は宿屋(ここ)へ来がちなんだよ」


 そう言いながらまたニッコリと笑った。

 最初は優しそうな笑顔だなんて思っていたが、だんだん胡散臭い笑顔にすら見えてくるな、コイツ。


「気疲れして休みたい時に【宿屋】って看板見るだけで入りたくなるんだよね、人って」


 中の人の職業はメンタリストか何かなのか。それとも経験談だったり?いや、あんまり深く考えるのは止めておこう。

 そう、アタシは何も知らない。ただ友達が欲しいコイツと酒を飲む約束をしただけなんだから。そうそう、そうなんだ。


「まああとは宿屋を選ぶ理由としては…初心者を見分けるのが簡単って所かな。ほら初心者は挙動からして「いやもういい!いい!わかった!」


 半ば強引に話を折り、これ以上自分の罪悪感を高めたくないと言わんばかりにエールを一気に喉の奥へと流し込んだ。


「ああ、ごめんごめん。ちょっと喋り過ぎちゃったね。君は()()()だからね」


 テーブルに肘を付き、手に顎を乗せながらニコニコとアタシを見るショウは皮肉っぽくそう言い、話を中断した。


 ちょっとムカッとしてしまったのはきっとエールを一気に飲んだせいだ。そういう事にしておこう。


「それにしても…エール、結構くるな…」


「ん、まさかエール飲んだの初めて?」


 エールを飲みながらショウが驚いた様子でジョッキから口を離した。


「いや、前に1回だけ…、いや、正確に言うとひとくちだけ…」


「あらら〜、そうだったんだ。エールは現実世界の酒よりかなり酔うから気をつけて。って、もう遅いけど…」


 ショウの言葉を適当に聞き流し、少しふらつきながらも残りのエールをグビ、グビっと飲み干し、ドン!とジョッキをテーブルに叩きつけた。


 まあ、なに。アレだ。酒癖はそんなに良い方ではないかもしれない。


「ウェーイ!ショウ、アンタももっと飲みなよ!ほらほら、奢ってくれんでしょ?ステファ!エールもう一杯持ってきてー!」


「あちゃー……んー、まあいっか。こっちの方が都合良く進みそうだし……っと、はは!ルミ、最高に良いのが来たぞ…!」


「はあ〜?良いのって?初心者〜?」


 酔っ払いながらもきちんと脳は働いてくれてたのがまだ救いだ。

 とにかくアタシはショウと仲良く酒のんで、この席に誘い入れた初心者をアタシ諸共泥酔させればミッションコンプリート!…で良いはずだ…よね?


「よし、ルミ…アイツを俺たちの隣の席に座らせる。いいな、 こっちからは声をかけるなよ?あくまでも向こうから声をかけさせるんだ」


 小声でそう言い、アタシの顔を見るショウは今日みたコイツの表情の中で一番悪い顔をしている気がする。


 横の席にショウが置いていた装備品を手早く片付け、ステファの方を見てここ空いてるよと言わんばかりに笑顔で手を振り目配せをしている。

 いや、つーか装備品で席取りとか出来るの初めて知ったわ。


「ん?あ〜、あいつ噂のゴブリンじゃん!いいのが来たってあれの事?」


「そうそう、ああいう奴ほど引っ掛けやすい奴はいないね」


 コイツはもはや引っ掛けるとか言っちゃってるしね。

 段々と本性が見え隠れし始めたショウだが、乗りかかった船だ、もう酔っ払った勢いで付き合うしか無さそうだ。

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