おはようございます
チュン、チュンチュン…
「…ん、……んん」
窓から差し込む日差しと小鳥のさえずり。
なんとも気持ちの良い起床の仕方だ。
こんな起き方が出来たのであれば、今日1日はとても良い日になるに違い無い。
眠っていた間に凝り固まった背中を解すように伸びをした。
まだ脳が起きていないのか、少し頭がボーっとしている。
ベッドで身体を起こしたまま部屋を見渡した。
少し手狭だが、寝泊りするには申し分ない広さがある部屋。
木の独特な匂いがなんだか落ち着く。
部屋にはベッドの他に、ベッドサイドチェスト、ランプ、それに簡易的な机と椅子がある。
昨日も思ったが、ファンタジー好きの心をくすぐる良い部屋だ。
そう、昨日も寝る前に同じ事を思った。
「…昨日、……」
なんだか少し頭が痛いのは二日酔いだろうか。
「…?、…」
徐々に覚醒する脳が、自分の今いる場所をはっきりと把握しだす。
「…は?……」
昨日いったい俺は何時に寝て、今何時に起きたのだろう。
「きょ、強制ログアウトは…!?」
ガバっと勢い良くベッドから降り、部屋の扉を開けた。
廊下に出ると、下の食堂からとても良い匂いが上がってきている。
もしかしたら昨日寝たのがかなり遅かったのかもしれない。
そうだ、俺は時間を誰にも聞いていなかったし、確認もしていなかった。
朝日が眩しくて目が覚めたけど、実際にはそんなに長い事寝ていなかったのだ。
そうに違いない。
急いで階段を駆け下りると、忙しそうに働くステファがとてもおいしそうな朝食を配膳している最中だ。
「あら、冒険者様!お早いお目覚めですね!昨晩はぐっすり眠れましたか?」
ほら見ろ!そうだった!お早いお目覚めって事は5時間も眠れてなかったんだ。
なんだよ、びっくりさせるなよ…
って事はまた寝なきゃいけないのか!?
「い、いや…でも、一気に5時間以上眠らなきゃ強制ログアウトにはならない…今から追加で寝ても何の意味もない…というか、今から5時間以上も眠れる自信がないな…」
「どうかなさいましたか?」
「い、いや!何でもない!…そ、そういえば昨日俺と一緒にいたショウって冒険者はどうしてるかな?」
くそ!とりあえずこうなってしまったからには、もう一日過ごすしかないか…
昨日は酒に酔ってテーブルで少し寝てしまったからな。だから早く目が覚めてしまったんだ。
そうと分かれば、今日はショウの冒険に付き合えば良い。そうすれば、疲れが出て長時間眠れるに違いない!
「ああ、そのの冒険者様ならあちらで朝食をお召し上がりですよ」
ステファが指をさす先には、昨日の装備を付けたままのショウの背中があった。
「ありがとう」
そう言いながら、ショウの肩に手を置いて話しかける。
「おはよう。いや~、昨日まさかの5時間以上眠れなかったよ…はは、」
「…え?」
「…え?」
いやいやいや、誰だお前は。
「あ、あの~…人違いじゃ、?」
「あ、ああ!すみません!友人と全く同じ装備をしていたもので!」
慌てて肩から手を離すと、そいつの装備を確認する。
やはり、昨日の夜見たショウと全く同じ装備にしか見えない。
「あ、あぁ…この装備ですか?これ、初心者用の中でも一番コスパの良い装備なんで、ほとんどの人が持ってると思いますよ…ほら、」
「え、?」
指をさされ辺りを見渡すと、全身とは言わずとも確かに同じ様な装備を身に着けている人が何人もいる。
「そ、そうなんだね…急にすまなかった、ありがとう」
一言謝ると、近くの空いていたテーブル席へと座る。
そして近くを通りかかったステファに声をかけた。
「ステファちゃん、あそこに座っているのショウじゃ無かったんだけど、アイツどこに行ったか知らないかな?」
「あら?違いましたか?んー、昨日冒険者様と一緒にいたのは確かにあの方だと思ったんですが…… あの方じゃない、という事でしたらちょっと分からないですねえ…」
少し困った様子で先程のヤツを見ているステファは、ショウがアイツだと思っているらしい。どういう事だ?
昨日の今日ではあるが、客はたくさん来るからなのか。
「あ!でもアイツ、宿をとっていたよね?部屋はどこだったかわかる?」
「ええ、貴方のみっつ隣のお部屋、ですからあの冒険者様のお部屋ですよ」
「……え?い、いやそんなはずは…!」
一体どういう事だ?くそ、こんな事ならばさっさとショウとフレンドになっておくんだった。
別にショウでなければいけない訳じゃないが…この見た目で、ましてや迷惑ゴブリンだなんて噂までたってしまっている。
出来るならば昨日そこそこに仲良くなれたアイツが一番都合が良い。
後悔先に立たず。
と思った時、見覚えのある金髪が俺の目の前を通り過ぎた。
「っ!お、おい!ルミ!ルミじゃないか…!」
そう、昨日ショウと一緒にいた女だ。
助かった、こいつがいればショウと会えるはずだ!
「ん〜?あっ、ああ!おっつぅー!昨日の迷惑ゴブリンじゃん、ウケるぅ!まだいたんだー!」
「あ、ああ、おはよう」
くそ、それにしてもムカつく喋り方だ。
こいつとは仲良くなれそうにないな。元の姿に戻れても絶対にフレンドにはならないと決めた。今決めたぞ。
「あのさ、昨日一緒にいたショウいただろ?」
「ショウ?…あー、あいつね!」
「そうそう!ショウがどこに行ったか知らないかい?君は昨日途中でログアウトしてしまったけど、その後夜中に宿屋でショウと別れてから会えてないんだよね」
頼みの綱であるルミにそう言うと少しバツの悪そうな顔をして「あーごめんなんだけどさ」と苦笑いで頬をポリポリと掻いている。
「アタシあいつとフレンドじゃないんだよね」




