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ニュース速報

「…………は…?…誰が死んだって…?」


「なんだよ、お前もしかしてheaven's kiss知らないの?」


「…いや、heaven's kissは知ってるよ。超有名バンドじゃないか」


 そう、俺のバンドだ。知らないはずがないだろう。


「わかってんならボーカルの名前くらい知ってるだろ?咲夜だよ、咲夜。heaven's kissのボーカル咲夜が死んだって速報が出たんだよ」


「はぁ!?!?」


 いやいやなんの冗談だよ。

 俺が死んだって?

 バカバカしいにも程がある。


「んなっ…!急にでかい声だすなよ!びっくりするじゃねえか!」


 それはこちらのセリフだ。何を言い出すんだコイツは。


「…いくら俺が迷惑ゴブリンとか言われてるからって、言っていい冗談と悪い冗談があるだろう」


「はあ?嘘でも冗談でもないから。お前と一緒にしないでくれよ」


 そう言いながら、「ヴォン」という音と共にスマホのような端末状の物を手のひらに出したコイツは、画面を俺に向けて見せてくる。


「…これは?」


「ファスプレにいても現実世界のニュースとか速報とかの情報がわかるアイテムだよ。ゲーム内に長くいる奴は結構持ってる奴多いぞ。こっちにいると向こうの状況が分からないからな。てかお前そんなのも知らないのか?」


 そう言いながら速報のマークをタップして見せる。


【heaven's kiss咲夜、何者かに刺され死亡】


 すぐにその一行がトップに流れているのが目に入った。

 は…はあ!?なんだよこの速報は!?


「いやいやいやいや!咲夜が死んだ訳ないだろう!だって現に俺はここにちゃんと…!」


「………。は?何言ってんのお前」


「いや、だから俺がその咲夜なんだよ!!ちょっと訳あってこんな姿でゲーム内にいるけど!!俺がheaven's kissの咲夜なんだよ!だから死んだなんて有り得ない!なんの誤報だよ!」


 必死にそう主張するが、やはり簡単には信じて貰えないらしい。

 目の前のコイツの目を見てそう言ったが、眉と口元をプルプルと震わせて俺を見返している。


「ぶっ…!ぶあはははははは!!」


 ついに堪えきれなくなったのか、唾を大量に巻き散らかしながら大声を出して大爆笑ときた。


「お前が…!あははは!咲夜だって!?ヒーー!笑わせんなよ!あははは!お前咲夜の顔見た事ある!?」


「ぐっ…ほ、本当なんだ!」


「んな訳ないだろ!あはは!お前知ってるか?ファスプレは見た目のスキャンしたらスキャンされた自分の姿から、あまりにかけ離れた容姿にはキャラメイク出来ない仕様になってるの。わかるか?つまり、咲夜がファスプレをやったとして、スキャンされたらどう足掻いてもその見た目には出来ない訳。逆にお前がどう足掻いても咲夜の見た目にはなれないのと一緒」


 なんともまあ、ご丁寧に説明してくれやがって。


「そ、そんな事はわかっているよ…!だから言っただろう、訳あってこの姿だって!」


「はいはい、訳ね。訳!じゃぁアレか?化粧アイテム使ってて1時間で咲夜の顔に戻るってか?それならここで待っててもいいけど?」


「ぐっ…そ、それは」


「ほらみろ。ほんっと、迷惑ゴブリンって言われる理由がわかるよ。はは!」


 く、くそ!どうしたら信じてもらえるんだ…

 それに現実世界のこのニュース…一体どういう事なんだよ。


「あ、あ!ほら!俺の名前!」


「なに?名前?」


「そう!俺のプレイヤープロフィールみてくれ!」


 そう言うと、ハァーと少し面倒くさそうに溜息をつきながら俺のプロフィールを見る無神経男。

 だが、プロフィールをら見てもらう作戦も意味を成さなそうだ。


「ぶは!おまっ…!どんだけ咲夜に憧れてんだよ!あははは!それとももしかして、自分が咲夜だと思い込んでるヤバい奴か?あはは!名前を咲夜にするとか!笑かすなよ!あはは!」


 だ、ダメだ…もはやコイツでは話にならない…

 が、しかし周りの奴らも恐らくもうダメだろう。

 この無神経男が大声で話すものだから、周りからもクスクスと笑い声が聞こえている。

 それに加えて「こんな速報が出てるのにそんな冗談不謹慎にも程がある」なんて声まで聞こえ始め、馬鹿にする目線も然ることながら、冷たい目線が全身に刺さるようだ。


 今俺は、自分をheaven's kissの咲夜だと思い込んだ不細工な迷惑ゴブリンになってしまっているらしい。


「く…くそ!もういい!」


「あっ!おい、待てよ…!」


 まだバカにしたりないのか、俺がその場を去ろうと足を進めると呼び止める声が聞こえたが、無視だ無視。

 あんなクズ相手にしている場合じゃない。


 そうだ、そういえば純樹と奏は何をしているんだ…!

 いや、まてよ…

 俺がなかなかゲーム内から戻らないのを心配して俺のいる来客控え室に入ってくるはずだ!そうすれば、まだゲームをしていると思ってこっちに呼び戻しに来るに違いない!


「そうだよ!なぜ気が付かなかったんだ俺は!そうだよ、純樹と奏がいるじゃないか!」


 よし、そうだとしたらアイツらが分かりやすい場所にいた方が良いな。えーっと…ああ!あそこにしよう!


 そう思いついて、あいつらが最初にいたと聞いた武器屋の前で2人を待つ事にした。

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