ログアウト
「そういえばサクさんは、この後どうするの?まだファスプレ内にいる?」
「え?あ、ああ…そろそろログアウトしようかなって思っていた所だよ」
そう、俺は早くログアウトしてあいつらに会わなきゃならないんだ。
こんな所で雑魚のフレンドを作っている場合じゃないんだよ。
「そうなんだねえー、じゃあまたログインした時にでも一緒にダンジョン行こうね!」
「え、あぁ…ありがとう」
「よし、んじゃ俺らもそろそろ行くか!新しい武器も揃ったし、レベル上げ行こうぜ!」
「そうそう、お金貯めてやっと瞬足の弓矢買えたし!早く試したいな!」
「オッケー!じゃ、サクさんまたね!」
「ああ、また…」
手を振り合い、雑魚3人組パーティは店を出ていった。
本当に迷惑なお節介集団だったな。
一体俺が誰だと思って気安くフレンドなんかに!
「ふん、まあいいや。さぁ俺も店を出てさっさとログアウトするか」
やれやれと店を後にし、腕にあるファスプレマークに触れる。
そして右端に出てくるログアウトマークを…
「……?」
ログアウトマークを…
「…ん?」
左端だったか…?
「………?」
いや、右上だったか…?
いやいや、左上か?
……………。
「…な、ない!?!?は!?…え、ちょっ……ログアウトマークがな無くなっている…!?」
いや、ちょっと待て…よく思い出せ…
最後にログアウトマークを見たのはいつだ?
◇
「ログアウトするにはプレイヤーモードにしていただき、右端の地球マークに触れて下さい。そうすれば最初の宇宙空間に飛びます。そしてゆっくり目を閉じれば無事現実世界へとお戻りになれます」
「ふぅん、なるほど…あぁ、これか」
◇
そうだあの時だ、チュートリアル中にペレに言われた時。あの時は確実に右端に表示があった。
だが、今はその表示がどこにも見当たらない。
一体どういう事だ…
さっきの雑魚3人組とフレンドになった時にはどうだった…
あー、ダメだ!右端なんて見ていなかったから分からない!!
いや、そんな事よりも俺はどうやってゲームから出ればいいんだ!?
「お、…おいおいおい…!ど、どうすれば…!」
いや、落ち着け…!
もしかしたら一斉に起きているバグの可能性もあるだろう。
そうだ、その可能性が高い!こんなログアウトマークが消えるなんておかしいからな。
「…あ、あの!」
「はい?」
1番近くを歩いていた適当な奴に話しかけると、足を止めて俺の姿をマジマジと見てくる。
「な、なんですか?」
「あの、今ログアウトしようとしたらログアウトマークが出て来なくて…もしかしたら一斉に起きているバグか何かなのかなー…と、」
そう俺が言うと「え、ま…まじ!?この後予定あるんだけど!」と焦りながら、そいつも腕のファスプレマークに触れて確認をしだす。
「…て、なんだよ…脅かすなよな〜…普通にあんじゃん。なんですか?まさかタチの悪いイタズラ?」
「っえ、そ、…そんなハズは…!」
言いながら自分のログアウトマークを確認するが、やはりどこにも出ていない。
「…あの、変な事聞きますけど…ログアウトマークって右端のこの辺に出ますよね…?」
「この辺って言われても…視界に出てくるから俺から見たらそこなのかは分からないけど…一応視界の1番右端にありますよ」
やはり右端…
だが、俺の視界の右端にはマークが存在しない。
一体何が起きたと言うんだ。
「…あの、もう良いですか?俺この後予定あるんで」
「あ、ああ…はい」
そう返事をするや否や、そいつはその場でログアウトしたのか、消えていなくなった。
「そ、そんな…」
いや、待てよ…今の奴にはバグが起きていなかった可能性もある。
一斉バグでは無く、ランダムでプレイヤーに起きている可能性だってあるんだ。
1人に聞いたぐらいじゃ分からない。
そう思い、少し場所を移動しながら歩いている人にまた声をかけた。
「あの、ちょっといいですか?」
「はい?…ひッ…!?」
後ろから声をかけたからか、俺のこの姿を見てビクリと肩を揺らした女が喉の奥で小さな悲鳴を発した。
くそ…、こんな姿でさえ無ければ俺が声をかけるまでもないのに…
俺に声をかけてもらえるだけ有難いと思えよ、この女!
「驚かせてすまない…少し聞きたいんだけど良いかな?」
「…は、はい、何でしょう…」
明らかに不審そうな目線を送ってくるこの女は、俺が咲夜だとわかった暁には、途端に擦り寄ってくるに違いない。
「今ログアウトマークが出てこないバグが発生してるみたいなんだけど…君のは表示されているかい?」
「え!う、うそ…!」
俺の言葉に焦ったようにプレイヤーモードに変える女。
が、こいつの表示にもログアウトマークはあった様で。
「…あ、あるじゃないですか…!ビックリした…なんなんですか…?なんの為にそんな嘘を…」
「…う、嘘なんかじゃないんだよ!本当に俺の視界には出てこなくて…!」
「…ちょっ、!やめてください…!ま、まさか今流行ってる辻斬りとか強盗の人じゃ…!?」
焦りのあまり、女の腕を軽く掴むと物凄い勢いで振りほどかれた。
こ、この俺を拒否するなんて…!なんでやつなんだ…!!
「そ、そんなんじゃないよ…!」
「…とにかく、私急ぐので…じゃあこれで」
「あっ、ちょっとまっ…!」
俺の静止の言葉も聞き終える前にスタスタと足早に去っていく。
そんな女の背中をぽつんと立ち尽くして見ている俺は、本当に一体何が起きているのかが理解できない。
「…いや、…他にも聞いてみなければ…!」




