フレンド第一号
「で、サクさんもheaven's kissに会いたかったんだよね?さっきも言ったけど、ログアウトしちゃったよ〜本当に残念」
そうか…ログアウトしたか。
て事は俺も一旦ログアウトした方が良さそうだな。
文句は現実世界で言ってやろう。で、ペレの奴に見た目をどうしても変えられないと言われるのであれば、アイツらの金でフル課金させてでも俺の見た目を元に戻させてやる…!!
「はは、そうだね…残念だ。じゃぁ俺ももう行くよ、教えてくれてありがとう」
そう言いその場を去ろうとした時、ガシッと腕を掴まれた。
「えっ…な、なんだい?」
「せっかくだからフレンドになろうよ!ね!」
「ああ、そうだな!ゴブリンの友達なんて面白いし!」
振り返ると3人が笑顔で俺を見てくる。
くそ、こいつら面白半分に決まっている。それに、本来の姿に戻ったらフレンドは整理しなくてはならないしな。俺のフレンドに雑魚がいては困る。
「い、いやぁ、俺なんかがフレンドになれないよ。でも提案してくれてありがとう、じゃあ行くよ」
そう言い、今度こそ店を出ようとした。
が、女がなかなか腕を離そうとしない。
なんなんだこいつは、鬱陶しいな…まさか!俺の正体が咲夜だと分かってどうにかフレンドになろうとしてるんじゃ…!
「そんな、俺なんかなんて言わないでよ!私達結構長くファスプレやってるし、役に立てると思うよ!サクさん、見た所初心者だよね?ほら、最初って1人じゃ大変なダンジョンも多いし!」
「そうそう、遠慮するなって!」
こいつら余計な世話を…!
しかもなんだコイツ、馴れ馴れしく肩なんて組んできやがって!
「あ、はは…ありがとう、じゃあせっかくだから…」
気は進まないが、まあ仕方がない。フレンドなんて後で切ってしまえばいいしな。
そう言いながら、腕に浮かぶファスプレのマークに触れると視界がプレイヤーモードになった。
目の前がゲーム画面のようになり、無論タッチすると操作可能だ。
その中からフレンド申請を選んでいると、ある事に気がついた。
そ…そうだ、フレンドになるという事はプレイヤー名を知られてしまう!
サクと名乗ってしまったから、今更名前が咲夜だとバレると更に馬鹿にしてくるに決まっている…!!
く、くそ!どうすれば…!
「あっ、あの…やっぱり俺は役に立たないと思うし、ファスプレも続けるかどうか分からないから…フレンドは、止めておこうかな〜なんて…」
「いやいや、役に立つとか立たないとか関係ないって、な!ほら、遠慮なんてすんなよ」
ぐ…!こいつ…遠回しに嫌だと言っている事になぜ気が付かないんだ!
「ほらフレンドコード…て、お前…名前サクじゃなくて咲夜じゃねえか!あっはっは!」
くそ…!プレイヤープロフィールを見られてしまったか…!
しかもよりにもよって1番ウザそうな奴に!
「え?ほんと?あー、本当だ!なんで嘘ついたの?」
「おいおい、そんなの聞いてやんなよ。決まってんだろ?heaven's kissのファンで名前を咲夜にするって事はさ、ほれ」
「あ、ああー、なるほどね!咲夜に憧れてるんだね!」
「ぷ、あはは!お前、そんなナリで咲夜だなんて名乗ったらheaven's kissのファンに刺されるんじゃねえの?あはは!」
こいつら…本当に言いたい放題だな…!馬鹿みたいにゲラゲラと笑いやがって。
そもそも俺がその本人だよ!!このアホ面が!!
「ちょっとお…そんなに笑ったら失礼だよ!」
「そうだよ、…で、でもキミも何でよりにもよって咲夜なんて名前付けたんだ?」
くそ、言ってやりたい…こいつらに俺が本人だって!!
だが、それを言った所で信じはしないだろう…そもそもスキャンした時点で俺がこの見た目になる事はありえないからな…
「は、ははは…ちがうよ、…実はコレ本名でさ、あはは」
黙らせるためにもワザと気まずい雰囲気を作ってやる。
そしてあわよくばフレンドも回避だ。こんな雑魚共とは金輪際関わりたく無いからな。
「あ、ああー、それは悪かった!本名だったのか…そりゃ偽名も言いたくなるかー…名前負けとか言われそうだしな…!」
「ちょ、ちょっと!だから失礼だってば!」
「あ、ごめんごめん!でもさ、そう思うならゲーム内では別の名前つけりゃ良かったじゃんか。わざわざ漢字まで同じに設定しなくても」
「い、いやぁ、あまり深く考えてなくてさ…はは」
「よし!じゃあお前が後ろ指刺されないよう、俺が守ってやるよ!」
「あ、ありがとう…」
結構だ…!全力で拒否したい。
「俺は太郎だ!よろしくな!…よし、フレンド追加完了!」
おいおいおい、お前俺の名前の事とやかく言える名前じゃないじゃないか。太郎だと?それは本名なのか?本名じゃないとしたら何を考えて太郎にし、そしてどんな心境で俺を嘲笑ったのか聞きたいね。
「OK!追加完了!私はピーチだよ、よろしくね!」
恐らく本名は桃とか桃子なんだろうな。
ありがちなゲーム名の付け方だ。
「僕はハードメタルナイト・タイガーだよ。あ、僕も追加完了したからよろしくね」
え、なんて??ハ、ハードメタル…?こいつ、太郎よりは結構まともな奴かと思っていたが、だいぶ拗らせてるな…
「あ、えーっと…よろしく。こっちも追加完了したよ」
「やったー、よろしくね!咲夜さ…あ、やっぱりサクさんって呼んでもいいかな?そっちの方が呼びやすいし!」
「そうだね、最初にサクって聞いたからか、そっちの方がしっくりくるよ」
「あ、ああ構わないよ」
「よし!じゃぁ決まりだな!よろしくな、サク!」
こうして俺の全く望んでいないフレンド第一号達が出来たのだった。




