宇宙空間
「さてさて、小難しい会議はここまでにして、そろそろゲームを始めましょうか!何はともあれ、ファスプレにあなた方が存在しないと何も始まりませんからね!」
言いながらまた、パン!と両手を合わせて叩くと、ペレがマネージャーを見た。
「事前に送っておいたゲームハードは用意してありますか?」
「はい、勿論です!言われた通り、部屋も3部屋用意してあります」
「3部屋?1人ずつ別室でやるのか?」
俺がそう言うと、ペレが頷いた。
「はい、そうです。より没入感を感じてもらう為に、ファスプレはゲーム時には1人を推奨しておりますので」
まあ確かに、ゲーム中に隣で人の気配がしてても気持ち悪いしな。
「向こうの隣り合わせ3部屋でやるんだっけ?」
俺より先に来ていた2人はマネージャーから聞いていたのか、別室でやるのは知っている様子だ。
「ええ、そうです。では移動しましょうか」
マネージャーが出口へとペレを誘導すると、その後ろを俺たち3人が着いて行く。
「来客控え室、仮眠室、資料室でお願いします。暫くの時間貸切れそうな部屋がここしか無く…申し訳ないですが」
「いやいや、気にしないで。みんなどこの部屋でやる?俺はどこでもいいよ」
奏がそう言いながら俺と純樹を見るが、純樹も特にこだわりが無さそうに頭を搔いている。
「んー、俺もどこでもいいや、咲夜は?って、まぁどうせ来客控え室だろ?いちばん広いし、ソファもでかいし、仮眠室の固いベッドよりフカフカだしな…ほら」
言いながら純樹が1番手前の来客控え室のドアを開けた。
なんだ、珍しく気が利くじゃないか。
確かにその3部屋ならば、来客控え室が1番居心地が良い。
「ああ、悪いね。じゃあ遠慮なく俺がこの部屋を使わせてもらうよ」
「はいはい、じゃあ俺は隣の資料室使うわ。奏は?仮眠室で大丈夫?」
「ああ、勿論。大丈夫だよ」
「では、皆様。お部屋が決まった所で、私は別室から3名にナビゲーション出来るよう接続致しますので、ハードを装着したら速やかに横になって下さいね。1分程で自動電源が着きます。そうしますと意識がゆっくりとゲーム内に移りますので、私の声が届くまでスタートの宇宙空間でお待ちください」
ペレの言葉を聞き軽く返事をすると、各々部屋へと入っていく。
「ん、これか」
センターテーブルの上にヘルメット状のゲームハードが置いてある。
かなりずっしりして見える見た目だが、手に取ってみると意外と軽いのが驚きだ。
ソファに腰掛け、ハードを頭に被りセットする。
「よし、…」
そしてそのままソファにゆっくりと寝そべった。
電源ボタンとかは特に無く、真っ暗なヘルメットの中で目を閉じるとキューーーーンと古い機械が起動を始めた様な音が耳に入ってきた。
数秒程で徐々に意識がふわふわとした感じがしてきた。
かと思うと、一気に目が覚める。
「…!」
ここは、スタートの宇宙空間か…?
煌びやかに光る星々が、どこまでも続く深い暗闇を照らしている。
風ひとつないその空間に、俺は真っ直ぐと立ったまま浮いているようだ。
「さて皆様、お集まりでしょうか?」
キョロキョロと辺りを見渡していると、ペレの声が宇宙空間に響く。
「…ここには俺以外誰もいないようだけど、」
「ああ、咲夜様。大丈夫です、各々別の宇宙空間にいるので、後ほど合流できますよ。まずは最初に、皆様の見た目をスキャンします。ハードの内側についているセンサーがスキャンしてくれるので、ファスプレ内の姿も現実世界のまま反映させる事ができます」
なるほど、アバターを作る前に自身の見た目をスキャンするのか。
「本来であれば、この後に少し見た目の修正を行えるのですが、先程の会議でも言いました通り、ファスプレはリアリティを重視しております。その為、スキャンした見た目からかけ離れた容姿には変更できない仕様となっております。というか、誰でも好きな容姿に出来てしまうと、どうしても同じ様な顔が増えてしまいますしね…それと、一度決定した容姿は基本的に変更不可能で、性別も本来の性別、もしくは申請済みの方のみ汎用性、のどちらかしか選べないようになっております。」
まあ、確かに現実からかけ離れた見た目に出来てしまうと、色々なデメリットがあるからな。それは正解だと思う。誰でもイケメンになれてしまうと俺のような本物のイケメンが目立たなくなってしまうと困る。
「まあ主には犯罪防止等、理由は様々ありますが…それはいいとして、皆様にはファスプレ内で活躍して頂くためにも、スキャンしたままの姿でプレイしていただきます。あ、もしプライベートなお忍びでゲームをしたい場合は、1時間だけ見た目を変えられる課金アイテムもございますので、是非ご購入下さいね!」
……なんのセールスだ。
「ではでは、最後に種族を選んでもらいます。種族は身長や体型、耳の形や角の有無、肌の色等、多少の事ではありますが見た目にも反映されます。先程も言った通り元の見た目からかけ離れる事はありませんが、1度選んだ種族も変更不可能なので、お好みがあるようなら慎重に選んでくださいね。選ぶ時は目の前に現れた、お好きな種族の手を握ってください」
「……?、何も現れていないようだけど…?」
「…?それはおかしいですね、少々お待ちください、確認致しま……」
「…?お、おい…どうした?…な、っなんだ!?」
突然ペレの声が途切れ、宇宙空間から身体が落ちていく。
地面に叩きつけられる!そう思った瞬間、フワッと身体が浮き、ゆっくりと着地が出来た。
「なんだ…?どうなってる?」
「咲夜様、貴方はもう既に種族が選択済みになっておりまして、純樹様と奏様が準備完了になった瞬間にゲームがスタートしたようです。…無事、ステージに降りられたようですね」
なんだ、種族なんて選択した覚えはないが…まぁいい。エルフだろうが、ヒューマンだろうが、俺のこの美貌だ。どんな種族でも関係なくスーパーイケメンなのだから、関係ないか。




